1830年に創業したボーム&メルシエ(BAUME & MERCIER)は、スイス屈指の長い歴史を誇る老舗ブランド。それでいて、中心価格帯を30万円台に抑えているため、非常にコストパフォーマンスに優れている。
  100万円を超える高額モデルが多数登場するSIHH会場では、一般的な勤め人でも購入できるミドルレンジの価格帯は、それだけでも注目が集まる。しかも、ケースの作りや針の質感などは、他社と比べても十分なクオリティがあるので安心して勧められるモデルが多いというのも特徴だ。
  ここ数年は、“シーサイドリビング”というテーマを軸に、リラックス感のあるクラシックウォッチを展開してきたが、今年はデザインの変更こそないものの、素材や機構で高級感を高める動きが目立っていた。
 
  その意識はブースのデザインにも現れる。邸宅風のしつらえは変わらないが、心地良かった海辺風のテラス席が無くなり、ダークトーンのしっとりとした雰囲気に変更。さらに内部には、過去の歴史を語るアーカイブピースを展示し、老舗ブランドとしての重厚さをアピールしている。
  個人的には、ボーム&メルシエの歴史はもっと注目されても良いと思っているので、この変化は歓迎したい。
  さて、2014年の新作だが、昨年好評を得た「クリフトン」コレクションのバリエーション追加がメインだったので、少々大人しい印象。しかしゴールドケースを使いつつ500万円台に収めたハイコンプリケーション『クリフトン 1892 フライング トゥールビヨン』が発表され、コレクション自体に高級感と厚みが増している。