
「レトログラードの魔術師」として知られるピエール・クンツ(PIERRE KUNZ)。ここ数年は、これまで培ってきたさまざまな特殊技術をベースに、既存モデルの再構築に力を入れている、との感がある。
2012年もこの傾向は続いており、完全な新作発表はなく、2011年に発表したモデルをブラッシュアップし、市販化に向けて体勢を整えつつある、というのが現状だ。
確かに、ピエール・クンツならではの大胆な発想や奇想天外な機構がちょっとお休みなのは残念ではあるが、毎年毎年、膨大な数の新作を発表しなければならないというのは、時計師にとって非常なプレッシャーに違いない。そこからしばし離れて、思考の時を持つことは、きっと将来、大きな財産となるはず。そんなクンツの未来に期待を抱き、静かにその時を待ちたいと思う。