世界的な不況もあって、多くの時計メーカーが価格を意識した戦略を取らざるを得ない。しかしプライスダウンによって魅力まで低減してしまっては意味がない。既に販売されている既存モデルとのバランスも含め、価格を見直すという作業は、非常にナーバスな問題を含んでいるのだ。
1874年に創業し、1997年に時計メーカーへと特化。クレール(CLERC)らしい華のあるオーラを利用した"テクノリュクス(テクノロジー×ラグジュアリー)"な時計で人気だが、やはり時勢を考慮した価格戦略を練り直す必要があった。
その最大のポイントはケース素材の追加。従来のチタンケースは軽量で頑強な素材だがその分、加工が難しいため複雑構造のケースを持つクレールの場合、どうしてもコストが高くなってしまうのだ。
そこで現当主であるジェラルド・クレール(Gérald Clerc)は「ハイドロスカフ(Hydroscaph)」に、初のステンレススチール・ケースを追加することにした。
もちろんここにはコスト以上に明確な理由もある。ユーザーからは「ややグレーがかったチタンケースよりも明るい色が欲しい」「高級時計ならではの重みも楽しみたい」という声が上がり、それに対応するためにステンレススチールのケースを採用したのである。ユーザーの側に立てば、ケース素材が追加される=選択肢が増えるということになるのだから、これはありがたいことだ。
時計のスタイルは時代に応じて変化する。コストもその要因にはなるだろう。 価格を下げるための闇雲なスタイル変更はブランド価値を下げるだけだが、クレールのように価値を生み出す戦略であれば、誠実なブランドという評価が加わる。逆境だからこその"したたかさ"も、このブランドの実力なのだ。
取材・文:篠田哲生 Report&Text:Tetsuo Shinoda
写真:堀内僚太郎(Storm) Photos:Ryotaro Horiuchi(Storm)
※表記は2010年6月現在のものになります。
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