メインコンテンツに移動

IWC historyIWCパイロット・ウォッチのすべて 06

「ビッグ・パイロット・ウォッチ 43」(Ref.IW329301)

「ビッグ・パイロット・ウォッチ 43」(Ref.IW329301)。2021年発表。43.0mmのケース径は2002年の「ビッグ・パイロット・ウォッチ」(Ref.IW5002)の46.2mmより3.2mmのサイズダウン。しかし、当モデルは2002年モデルに装備されていたデイト表示窓(6時)とパワーリザーブ表示計(3時)を省略したシンプルな中3針時計で登場。これにより1940年誕生の「ビッグ・パイロット・ウォッチ・キャリバー52 T.S.C.」(Ref.IW431)の直系モデルと言うべき、伝統的な飛行監視要員用時計の風格を漂わせる仕上がりとなった。


Part.6 2018年 創業150周年の年
トップガンとのコラボレーション開始!

 2018年、IWCは創業150周年を迎えた。


 この年、IWCは創業150周年を祝福すべく「IWC トリビュート・トゥ・パールウェーバー“150イヤーズ”」他、共通デザインコードで製作されたポルトギーゼ、ポートフィノ、ダ・ヴィンチを発表。パイロット・ウォッチからはビッグ・パイロット・ウォッチの12時位置に初めて大型日付表示を設置した「ビッグ・パイロット・ウォッチ・ビッグデイト“150イヤーズ”」(Ref.IW5105。自社製キャリバー59235)や、年次カレンダーの「ビッグ・パイロット・ウォッチ・アニュアルカレンダー“150イヤーズ”」(Ref.IW502708。自社製キャリバー52850)、「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ“150イヤーズ”」(Ref.IW377725)等が登場した。


 またこの年はアメリカ海軍戦闘機兵器学校、通称“TOPGUN(トップガン)”との正式なコラボレーションが開始。IWCは米海軍のトップパイロット向けにパイロット・ウォッチの開発ライセンスを供与されている、スイスで唯一の時計メーカー。それまでに米海軍第102戦闘攻撃飛行隊「ダイヤモンドバックス」、および第211戦闘機攻撃飛行隊「フライングチェックメイト」のための時計を設計してきた。2007年の「パイロット・ウォッチ・ダブルクロノグラフ・トップガン」(Ref.IW379901)に始まったIWCとトップガンとの関係は、いよいよ堅固なものになっていく。


 そして、この勢いは翌2019年も続く。


2019年 「パイロット・ウォッチ・ダブルクロノグラフ・
トップガン・セラタニウム®」発表

 2019年のSIHHでは“トップガン”シリーズから4モデル発表。特筆すべきはIWCの独自開発素材“セラタニウム®”製ケースを採用した初のパイロット・ウォッチ「パイロット・ウォッチ・ダブルクロノグラフ・トップガン・セラタニウム®」(Ref.IW371815)だ。“セラタニウム®”とはチタニウムと同等の軽量さと堅牢性、かつセラミックと同等の硬度を持ち、耐傷性機能に優れ肌への刺激も低減する特殊合金である。


 またトップガン関係では、ブラックセラミックケースの「パイロット・ウォッチ・オートマティック・トップガン」(Ref.IW326901)や、アメリカ海軍最大の陸上施設、チャイナレイク武器センターのあるモハーベ砂漠からインスピレーションを得た「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ・トップガン“モハーベ・デザート”」(Ref.IW389103)が挙げられる。当モデルは酸化ジルコニウムと他の金属酸化物の合成ケースで、自社ムーブメントのCal.69380を搭載。


2021年 初のパイロット・ウォッチ誕生から85年
新たなステージへと進化


 2020年よりSIHHは名称も新たに「Watches and Wonders Geneva」として再始動する。ただしこの年は世界中に蔓延した新型コロナウィルス禍のため、発表はオンラインでの開催となった。


 その翌年となる2021年も豊富なパイロット・ウォッチの新作が登場。特にこの年はIWC初のパイロット・ウォッチ「スペシャル・パイロット・ウォッチ」(Ref.IW436)誕生の1936年から数えて、ちょうど85年目を迎える節目の年となった。当年を機にIWCはパイロット・ウォッチの新たな方向性を宣言。それが「ツールウォッチからスポーツウォッチへの進化」である。パイロットやナビゲーター用の専門性の高いプロフェッショナルツールではなく、実用的かつ高品位のスポーツウォッチへの進化だ。


 しかしデザインや機能面で急激な変貌はあまり見られず、たとえば「ビッグ・パイロット・ウォッチ 43」(Ref.IW329301。ステンレススティールケース、ケース径43.0mm。自動巻き、自社製Cal.82100)のような出自を大切にした新作も揃えられた。



 一方、1994年発表の「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ・セラミック」(Ref.IW3705)で初めて酸化ジルコニア・セラミックを採用し、また2019年には独自開発素材“セラタニウム®”製ケースを開発したように、IWCの新素材に対する探究心は決して止むことはない。その新種の気象は2021年、44mmのセラタニウム®ケース採用の新作「ビッグ・パイロット・ウォッチ・ショックアブゾーバーXPL」(Ref.IW357201。自動巻き、自社製Cal.32111)で十分、発揮された。パイロット・ウォッチへの衝撃や加速重力を軽減するための新ショックアブソーバー・システム「SPRIN-g PROTECT」を独自に開発。当システムによりムーブメントをケース内で“浮遊状態”にすることで外圧から保護する。なお当システムの開発は新設計部門「IWCエクスペリメンタル」によるものだ。


ジョージ・カーン氏がCEOに就任した翌年の2002年から新作発表の舞台はSIHHに。それ以降はアクアタイマーやポルトギーゼといったコレクションに特化したテーマを毎年設定し、これらをイメージさせる明確な会場演出を行なっている ジョージ・カーン氏がCEOに就任した翌年の2002年から新作発表の舞台はSIHHに。それ以降はアクアタイマーやポルトギーゼといったコレクションに特化したテーマを毎年設定し、これらをイメージさせる明確な会場演出を行なっている

「ビッグ・パイロット・ウォッチ・ショックアブゾーバーXPL」(Ref.IW357201)。2021年発表。IWC新開発のショックアブソーバー・システム搭載モデル。ムーブメントをケースから独立した“浮遊状態”にすることで、外部からの衝撃に対し機械を保護するという独自開発・特許取得の「SPRIN-g PROTECT SYSTEM」装備。モデル名の「XPL」とは“experimental(実験)”を意味し、IWCの設計部門「IWCエクスペリメンタル」による初の製品となった。ケース径44.00×厚さ12.09mm。10気圧(100m)防水。軽量構造が特徴の自社設計・製造ムーブメント、自動巻きCal.32111搭載。28,800振動/時、21石、約120時間パワーリザーブ。


 以上、長い文章で書き記してきたが、1868年の創業以来150年以上続くIWCの歴史においてその半分近くの年月を占め、現在のIWCコレクションの中でも最長の歴史を誇るのがパイロット・ウォッチである。20世紀の航空史の中で、時には激動とも言える時代の目撃者であり証言者でもあるIWCパイロット・ウォッチ。この歴史的名品は過去と現在、そして未来の時計史にも名を残す、まさに“時計遺産”と言っても過言ではない圧倒的な存在感を今も我々に示している(了)。


※参考資料『IWC PILOT’S WATCHES -FLYING LEGENDS SINCE 1936-』(Ebner Verlag 2006年)、『TIME SCENE Vol.6、Vol.8』(徳間書店 2006年、2007年)、『Goods Press』(徳間書店 1994年12月号)、IWC公式ホームページ、各時計会社の公式ホームページ、英国王立空軍公式ホームページ、webChronos、Wikipedia等。



協力:IWC / Special thanks to:IWC



  • 構成・文 / Composition & Text

    田中 克幸 / Katsuyuki Tanaka
    Gressive編集顧問。1960年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後、徳間書店に就職。文芸部を経て1988年「グッズプレス」創刊に携わり、後に編集長に就任。この間、1993年に同社で「世界の本格腕時計大全(後の『TIME SCENE』)を創刊し、2009年まで編集長を務める。同年より「Gressive」に参加。1994年よりスイスを中心としたヨーロッパ各国を取材、現在も継続中。

  • 写真 / Photos

    堀内 僚太郎 / Ryotaro Horiuchi
    フォトグラファー。1969年、東京都生まれ。1997年に独立。広告、ファッション、CDジャケットやポートレイト等で活動。2006年からスイス時計フェアの撮影を続け、2009年からGressiveに参加。2018年にH2Fotoを立ち上げ写真講師としても活動。

  • 写真 / Photos

    江藤 義典 / Yoshinori Eto
    フォトグラファー。1981年、宮崎県生まれ。2001年に上京。2006年、知人の紹介でカメラマンの個人スタジオのアシスタントに。スタジオ勤務を通し写真撮影とデジタル・フォト加工技術を習得。2013年に独立し、自らのスタジオを開設。Gressiveをはじめ、メンズ誌、モノ情報誌、広告等で活動。スイス時計フェアは2015年から撮影を継続。

INFORMATION

アイ・ダブリュー・シー(IWC)についてのお問合せは・・・

アイ・ダブリュー・シー
〒102-0083 東京都千代田区麹町1-4
TEL: 0120-05-1868


アイ・ダブリュー・シー ブランドページを見る

NEW RELEASE

新着情報をもっと見る