2019 GRAND PRIX D'HORLOGERIE DE GENÉVE19回目を迎えた「ジュネーブ・ウォッチグランプリ」2019年の優秀時計を徹底検証する! 02
今やGPHGに不可欠の独立時計師、そして
セイコーの2年連続受賞は快挙!

2007年の初受賞後2013年、2014年、2015年と連続受賞し、今回の2019年には2部門で賞を獲得したフィンランド生まれの独立時計師カリ・ブティライネン氏。彼のようにスイス以外の国を出生地とする独立時計師は結構多い。大手のメゾンに所属することを避け、文字どおり独立心と挑戦魂で我が道を行く時計師が認められるのは喜ばしいことだ。
異彩を放つ個性派ぞろいの
独立系時計創造集団もGPHGの常連
また、独立時計師系時計ブランドの躍進だが、これもすでに2002年にF.P.ジュルヌが「オクタ・カレンダー」で“審査員特別賞(SPECIAL JURY PROZE)”を、ヴティライネンは2007年に“メンズウォッチ賞(MEN'S WATCH PRIZE)”で「オブセルヴァトワール(Montre bracelet‘OBSERVATOIRE'Voutilainen)」が受賞している。ちなみに2007年のグランプリはリシャール・ミルの「RM 012」。
2019年の受賞は、奇才マキシミリアン・ブッサー氏率いるMB&Fの「レガシー マシーン フライング T(Legacy Machine Flying T)が“レディス コンプリケーションウォッチ賞(LADIES' COMPLICATION WATCH PRIZE)”を受賞。2005年創立のMB&Fの初受賞は2010年、「オロロジカル マシーン No.4 サンダーボルト」での“デザインウォッチ賞(DESIGN WATCH PRIZE)”だ。MB&FのコンセプトはSF少年が夢見るレトロフューチャー的な“センス・オブ・ワンダー”に溢れた時計で、実際にブッサー氏とは昔の『スタートレック』などの話題では大いに盛り上がる。ハリー・ウィンストンのオーパス・プロジェクトを手掛けた人物だけに、その創造性の飛躍には驚くべきものがある。その後MB&Fは2012年で2部門、2016年1部門の受賞実績がある。
また2007年初受賞のヴティライネンは、その後2013年、2014年、2015年と連続受賞し、今回は“メンズウォッチ賞”で「28ti」、“アーティスティック・クラフトウォッチ賞(ARTISTIC CRAFTS WATCH PRIZE)”では「Starry Night Vine」と2部門で獲得。このほか新興ブランドであるクドケ(KUDOKE)は「KUDOKE 2」で“小さな針賞(PETITE AIGUILLE PRIZE/プチエギーユ賞)”の栄誉に浴した。ドイツ出身の独立時計師として初受賞となるステファン・クドケ氏は「大企業を向こうにして、私たちのような小規模の家族経営による時計が認められるのは大変な名誉なことです」と述べる。
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www.madgallery.net
MB&F代表のマキシミリアン・ブッサー氏。MB&Fとは彼の名前を採り入れた“Maximilian Busser and friends”の略。ハリー・ウィンストン時代などで培ったと思われる豊富なネットワークで、自分が夢見るファンタジーピースを世に送り出している。ちなみに彼が主催する“M.A.D.GALLERY(www.madgallery.net)”はアーティストの奇想天外なイマジネーションに触れるだけでも一見の価値あり。
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2006年、2010年そして昨年の2018年に続き今年も受賞した大快挙のセイコー。昨年の初頭時点で、我々日本人はすでにセイコーのダイバーズへの並々ならぬ執念を十分過ぎるほど感じていたので、「セイコー プロスペックス 1968 ダイバーズ」に続き、本年の「セイコー プロスペックス LX ライン ダイバーズ」は当然といえば当然の結果。セイコーウオッチ株式会社 取締役・専務執行役員 内藤 昭男氏が同社を代表してトロフィーを手にした。
さて“ダイバーズウォッチ賞(DIVER'S WATCH PRIZE)”に輝いたセイコーの「セイコー プロスペックス LX ライン ダイバーズ」も見逃せない。セイコーは前年の“スポーツウォッチ賞(SPORTS WATCH PRIZE)”での「セイコー プロスペックス 1968 ダイバーズ」に続く2年連続の快挙。同社は2006年の「エレクトロニック・インク」(エレクトロニック・ウォッチ賞)の初受賞に続き、2010年は“スポーツウォッチ賞”で「セイコー スプリングドライブ スペースウォーク」の受賞実績があり、GPHGの19年の歴史で計4つの受賞を達成している。日本人として大いに胸を張りたい気持ちだ。
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「クドケ2(KUDOKE 2)」で今回の“小さな針賞(PETITE AIGUILLE PRIZE)”を受賞した、ドイツ・フランクフルト生まれのステファン・クドケ氏が主催する時計工房クドケ(KUDOKE)。前作「クドケ1」は自社ムーブメントを搭載し2018年8月にデビュー。2019年の今年は初のバーゼル出展、しかもGPHGで初受賞というクドケ氏には輝ける年となった。時計師と彫金師の技能を兼ね備えるクドケ氏の時計は、手作業によるムーブメントやダイアルのエングレーブに最大の個性が集約されている。
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“審査員特別賞”を受賞した「オンリーウォッチ」創設者のリュック・ペタヴィーノ氏。彼はモナコ・ヨットショウの創設者でもあり、この慈善オークション・イベントはデュシェンヌ型筋ジストロフィーに苦しむ息子を見ての行動だった。「オンリーウォッチ」はモナコ公国のアルベール2世公の後援下、モナコ筋ジストロフィー協会により組織、収益金はデュシェンヌ型筋ジストロフィー国際医学研究プロジェクト協会に寄付される。
最後にGPHGで唯一、人物あるいは組織に与えられるのが“審査員特別賞(SPECIAL JURY PRIZE)”。この賞が新設されたのは2012年の第12回目で、初回の受賞はスイスクロノメーター協会(SSC/Société Suisse de Chronométrie)。翌2013年は独立時計師フィリップ・デュフォー氏、2014年は故ウォルター・ランゲ氏、2016年故ジョージ・ダニエルズ博士、昨年の2018年にはジャン-クロード・ビバー氏など錚々たる人物が名を連ねる。
そして2019年の受賞者はリュック・ペタヴィーノ(Luc Pettavino)氏。彼は2005年、各時計会社が唯一無二のユニークピースを出展するオークション・イベント「オンリーウォッチ(Only Watch)」の創設者である。このオークションは、目的がデュシェンヌ型筋ジストロフィー症(幼児期から始まる筋力低下等の遺伝病)の研究支援のための慈善イベントである点において、数あるオークションでの特別意義のある存在だ。2年に1度の開催には数多くの時計会社が参加し、2019年は52もの出展社を記録した(オークションはGPHGの2日後の11月9日にジュネーブのオテル・デ・ベルグで開催)。
以上が2019年GPHGの総括だが、次ページからは全19部門の受賞時計と人物のリストを掲載する。
取材・文:田中克幸 /Report&Text:Katsuyuki Tanaka
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