2019 GRAND PRIX D'HORLOGERIE DE GENÉVE19回目を迎えた「ジュネーブ・ウォッチグランプリ」2019年の優秀時計を徹底検証する! 01
オーデマ ピゲがトリプル受賞で老舗の底力を証明
マニュファクチュールによる独創的時計が高評価

2019年のジュネーブ・ウォッチグランプリ(GPHG)の発表と授賞式は11月7日、恒例となったスイス・ジュネーブ市テアトル・デュ・レマン(ジュネーブ劇場)で開催。84の候補から選ばれた18の時計が受賞の栄冠に輝いた(全19部門中1部門は人物)。壇上に立つのはダイバーズウォッチ賞に輝いたセイコーウオッチ株式会社 取締役・専務執行役員 内藤 昭男氏。
ブルガリ、エルメス、シャネルなど宝飾服飾界から
本格的に参入したブランドの圧倒的存在感
2019年11月7日に発表された「ジュネーブ・ウォッチグランプリ(GPHG/GRAND PRIX D'HORLOGERIE DE GENÉVE)」(以下GPHG)。全19部門の受賞リストは後述するが、まず当年のポイントを記したい。
(1)オーデマ ピゲがグランプリの“金の針賞(AIGUILLE D'OR/エギーユドール)”を含めて計3部門で受賞。
(2)ブルガリが“クロノグラフウォッチ賞(CHRONOGRAPH WATCH PRIZE)”など計2部門、エルメスが1部門など、元々は時計専業会社ではないものの長年、本格時計製造に傾注してきたブランドの圧倒的な実力が証明。
(3)MB&F、ヴティライネン(Voutilainen)、クドケ(KUDOKE)など独立工房系は今回も好調。
(4)セイコーが2018年に続き2年連続受賞。
まず、オーデマ ピゲは「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー ウルトラ シン 」がグランプリ“金の針賞”を受賞のほか、“メンズ・コンプリケーションウォッチ賞(MEN'S COMPLICATION WATCH PRIZE)”で2019年初登場の新コレクション「CODE 11.59」より「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ ミニッツリピーター スーパーソヌリ」、“アイコニックウォッチ賞(ICONIC WATCH PRIZE)”では「ロイヤル オーク“ジャンボ”エクストラシン」の計3部門を占めるという大成果を成し遂げた。
3部門受賞は2001年からスタートしたGPHGでも初の快挙。オーデマ ピゲはこれまでも第1回(2001年)での受賞(複雑時計賞で「Répétition Minute par Carillon Edward Piguet」)に始まり2002年、2003年と連続した後、2007年と2008年にはそれぞれ2部門での受賞実績がある。いわばGPHGの受賞ブランドの常連だが、それでもグランプリを含めた3部門での受賞は初。その中でもグランプリとアイコニック時計部門でのモデルが、ウルトラシンとエクストラシンという極薄型である点も注目だ。
次に、シャネルが“レディスウォッチ賞(LADIES'WATCH PRIZE)”でCal.12.1搭載の「J12」、エルメスが“カレンダーおよび天文時計賞(CALENDAR AND ASTRONOMY WATCH PRIZE)”で「アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌ」、ブルガリは“クロノグラフウォッチ賞(CHRONOGRAPH WATCH PRIZE)”で「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT オートマティック」、さらに“ジュエリーウォッチ賞(JEWELLERY WATCH PRIZE)”で「セルペンティ ミステリオーシ ロマーニ」と2部門での受賞。ブルガリの2部門受賞は2017年(メンズウォッチ賞「オクト フィニッシモ オートマティック」、トゥールビヨン賞「オクト フィニッシモ トゥールビヨン スケルトン」)に続く快挙である。
このようにシャネルやブルガリ、エルメス、ヴァン クリーフ&アーペル、ハリー・ウィンストンなどは、元々は時計専業ではなくても長年の研鑽が身を結び、現在では本格時計ブランドとしてGPHGでの受賞メンバーの常連になっている。この萌芽は2003年のハリー・ウィンストン、2005年のヴァン クリーフ&アーペルの受賞にあると思われる。
取材・文:田中克幸 /Report&Text:Katsuyuki Tanaka