RESERVOIR“MAKE IT BOLD”=“大胆に行こうぜ!”ひとりの計器蒐集家の夢想から生まれた時計趣味人の魂に点火する「レゼルボワール」 03
カー・エンスージアスト必見『390ファストバック』

レゼルボワールが用意した「390ファストバック」モデルのイメージカット。ハイランドグリーンのフォード・マスタングGT390(おそらく)、ブラウンのジャケット、ネイビーブルーのセーター(多分)…、正確に言えばクロージングはまったく異なっているものの、すぐさまイメージするのはやはりあの名作だろう。
基本中の基本の質問だが、あらためてレゼルボワールの販売や評価の高い国を尋ねてみた。
「時計文化が成熟している国とそうでない国、どちらでも良く売れています。前者では日本、ドバイ、香港、メキシコ。これから、という国ではインドですが、この国は成長が期待できます。もちろん米国とフランス、またサウジアラビアも良い市場です。
コレクションは全般的に売れていますが、特に『gt tour』と『カニスター』ですね。
この1~2年間(2023年~2024年)の主力製品は、飛行機のコックピットを模したモデル(P-51 ムスタングのコックピットをイメージしたデザインの『airfight クロノグラフ』)や、『390ファストバック』です」
ここで私は「390ファストバック」のダイアル・デザインに注目した。この時計を見ていると映画『ブリット』でスティーブ・マックイーン演じるサンフランシスコ市警刑事、フランク・ブリットの愛車としても有名な、フォード・マスタングGT390ならびにそのインスツルパネルのイメージが、強烈に頭の中に思い浮かび上がってくる。GT390のボディカラーはハイランドグリーンだったし、時計のダイアルとストラップもグリーンである。ただし、この件についてはモロー氏からはひと言も聞いていないし、レゼルボワールの公式資料にも一切書かれていない。しかし、EU圏大手の時計専門メディア『Monochrome Watches』は明確に書いている。だから私も書く。
映画ファンの間でスティーブ・マックイーン主演の名作『ブリット』(1968年。ピーター・イェーツ監督)と言えば、至極当然に劇中の彼が使用したハイランドグリーンの1968年型フォード・マスタングGT390が連想される。オープニングから当時としてはかなりスタイリッシュな広角、ほぼモノクロの映像に加え、ラロ・シフリン(『ダーティ・ハリー』や『燃えよドラゴン』等の名映画音楽家)が作曲した、緊張感を内包しつつも軽快な4ビートのテーマ曲が映画のムードを盛り上げている。ふたりの暗殺者たちが乗る1968年型ダッジ・チャージャーと、マックイーンが駆るGT390が激走するサンフランシスコ市名物の急斜面でのカーチェイスは、20世紀の映画史に残る名シーンだ(暗殺者たちが最期までひと言も口をきかないのが良い)。極めてクールな作品で、演出過剰な現在のハリウッド映画は見倣え。マックイーンの現代劇にはシネアストとカー・エンスージアスト、またトラッドスタイル愛好家の血が騒ぐ作品が多い。ファストバックからついつい映画の妄想をしていると、モロー氏はもうひとつのモデルも見せてくれた。
「ここにお見せする時計は(と携帯の写真を示しつつ)、フランスの『HEROES』とのコラボレーション・モデル『390ファストバック × heroes』です。スペックとしてはPVD加工のケース、時表示の6時位置には白を背景にカラスのマーク、その下には『HEROES』の文字が記されています。フランスや米国での評判が良く、日本でも注目している人たちはいます。まだ新しいモデルなので、それほど知られてはいません」
補足説明をする。“HEROES”とはフランスの『HEROES』社のことで、当出版社はオートバイ、自動車、ボート、人物等8つの独立したジャンルのコンテンツ(雑誌)を、印刷物とデジタルの両輪体制で発信している。例えばオートバイ・ジャンルの誌名は『MOTO HEROES』。この雑誌は即物的なバイク専門誌ではなく、モーターサイクルは人生を創造するアーティスティックな存在と捉えているカルチャー誌だ(私は未読)。バックナンバーの表紙にはスティーブ・マックイーン(1963年の映画『大脱走』でトライアンフのTR6 Trophyに乗車。その写真を表紙に使用。独軍から奪ったバイクという設定だが、性能面で英国のトライアンフを採用)や、ピーター・フォンダ(1969年の映画『イージー・ライダー』でハーレーダビッドソンの特注チョッパーに乗車)の写真を掲載している点からも、かなり趣味性の高い誌面構成であることが窺い知れる。つまり「390ファストバック × heroes」は、モロー氏の嗜好にかなり合致したコラボレーション・モデルと言えよう。
もはや“計器エンスージアスト”とも言うべき計器への愛情
2025年3月時点で、レゼルボワールのコレクションは、まず「車」「航空」「マリン」「音楽」「コミック」「パートナーシップ」の6つの大きなカテゴリーに分類され、全モデルはこれら6つのカテゴリーに各々格納されている。例えば「車」カテゴリーには、「gt tour」「390ファストバック」「monza design 325y」等のモデルを配置する。日本入荷のみに絞るとラインナップは全43モデルに及ぶ(ブレスレットやストラップのバリエーション数は除く)。それらの代表モデルについてモロー氏の個人的な想いを述べてもらった。
●「sonomaster chronograph black thunder(ソノマスター クロノグラフ ブラックサンダー)」
「私は元々計器が好きで、若い頃はピンク・フロイドやローリング・ストーンズを父のオーディオで聴いていました。特にアンプが好きでした、針の動きがね。この時計のレトログラード機能は、そのアンプの針の運動を取り入れたものです」
●「カニスター 316」
「ポルシェ356のダッシュボードが好きです。2022年に大ヒットしたブラックダイアルの「カニスター」は、まずダイアルを実車の356のダッシュボードのメーターに近づけようとしたのですが、スーパールミノヴァでは色が近づきません、そこで夜光塗料を使用しました(註:モデル名に付く“316”はケース素材の316Lステンレススティールのこと)」
●「ブラック スパロウ」
「この時計は、第一次世界大戦中にフランス航空隊に入隊した初のアフリカ系黒人パイロット、ユージン・ブラード(Eugene Bullard)に敬意を表したモデルです。飛行機のダッシュボード・クロックからアール・デコの要素を引き出しました。ブラックとクリームのふたつのダイアル・バージョンがあり、ストラップはカーフとNATOタイプの2種類です。ヴィンテージ・パイロットウォッチを自分なりに解釈しました。パワーリザーブは搭載していません。当時の戦闘機のコックピットはシンプルでしたので、それに倣いました」
モロー氏のヴィンテージカー・エンスージアストっぷりは徹底しており、「gt tour racing」のストラップにもそれは表れている。ストラップの穴の大きさが剣先・尾錠へ向かうにつれて小さくなっているが、これはジャガーEタイプのステアリングに似せてあるという。好きな自動車のメーターやアンプリファイアを聞くと、「話すと1時間は必要ですよ」と言いつつも、
「好きな自動車のメーターですが、まずポルシェ911……オレンジの針が素晴らしい。ジャガー420……現在所有している車で、スピードメーターはアルピーヌ社製です。ジャガー420のエンジンはタイプEと同じですね、私はこの車を使って結婚する娘を教会に送りましたが(ほらほらっ、という感じで携帯画面を見せてくれた)、『結婚する娘を教会に送る』ことに際して、これほどふさわしい車はないですね(すごく嬉しそうだ。顔は花嫁の父になっている)。
アンプリファイアもいろいろあります。米国のマッキントッシュ(McIntosh)、英国のヴォックス(VOX)、ちょっとマニアックですがスイスのレヴォックス(REVOX)とナグラ(NAGRA)、日本ではテクニクス(Technics、現在はPanasonicの商標)やアキュフェーズ(Accuphase)です」
やはり計器マニアだった。話は止むことなく、私には意外だったが(失礼)コミックファンであることも吐露する。
取材・文:田中克幸 / Report&Text:Katsuyuki Tanaka
撮影:高橋敬大 / Photo:Keita Takahashi
協力:一新時計 / Thanks to:ISSHIN WATCH CORP.
INFORMATION

レゼルボワール(RESERVOIR)についてのお問合せは・・・
一新時計株式会社
〒160-6136 東京都新宿区西新宿8-17-1住友不動産新宿グランドタワー 36階
TEL: 03-6631-0087
レゼルボワール ブランドページを見る