RESERVOIR“MAKE IT BOLD”=“大胆に行こうぜ!”ひとりの計器蒐集家の夢想から生まれた時計趣味人の魂に点火する「レゼルボワール」 01
まず初めに……これまでのいきさつを少し

「gt tour racing(gtツアー レーシング)」
2016年創業のレゼルボワールが初出展した、2017年バーゼルワールドでのデビューモデルが「gt tour」。EU圏をベースとするメディア『Monochrome Watches』(2006年創刊)の当年の記事で「It’s pretty cool!」と高評価された当モデルに、新型ムーブメントのCal.RSV-240を搭載した進化系が、この写真の「gt tour racing」である。2023年発表。当キャリバーの製造はレゼルボワール創業当初から提携するラ・ショー・ド・フォンのムーブメント開発専門会社、テロス社(Telos Watch)。ラ・ジュウ・ペレのCal.LJP-G100をベースに、特別開発・特許取得済みのP168モジュールを組み合わせた設計だ。特徴はレトログラードミニッツ(分表示、8-4時の扇型、赤針)、ジャンピングアワー(時表示、6時位置、アラビア数字)、パワーリザーブ(6時位置、指針式)で、これらはすべてヴィンテージ・レースカーのダッシュボードから着想を得ている。特にパワーリザーブ計を燃料計に模している点は、モローCEOの洒落心だろう。ダイアルはカーボンファイバー製。Ref:RSV01.GT/130.CA、316Lステンレススティール・ケース、ケース径43mm、5気圧(50m)防水、自動巻き、Cal.RSV-240、シースルーバック、価格:840,400円(税込)
レゼルボワールならびに愛好家魂に溢れる創業者兼CEOのフランソワ・モロー氏を、旧バーゼルワールドで“発見”したのはグレッシブ編集長の名畑政治氏である。いきなり冒頭から申し訳ありませんが、そのあたりの事情は名畑編集長のグレッシブの記事をご覧ください(以下、記事のURL。https://www.gressive.jp/special/interview/202502-reservoir)。
では、本稿では我々とモロー氏ならびにレゼルボワールの出会いの話を、私の視点から始める。
時は2017年3月、場所はバーゼルワールド(今は昔の懐かしい時計展示会)。名畑編集長の「おもしろい時計がある。計器類を時計化したフランスの会社で、先ほど社長と話をしたけど、もう1回行く?」ということで2回目の取材というより訪問を行ったのが、私とモロー氏との最初の出会い。場所はホール1.0の2階の1.1、トラム駅側で新規のブランドのブースが集まるエリア、“ル・アトリエ”の一角(L28)(‘Les Ateliers' - Hall 1.1, L28, )。レゼルボワールの創立は2016年なので、これが最初のバーゼルワールドへの出展だった。
翌年の2018年3月もバーゼルで取材。ブース内での展示品等の撮影等は行なったが、この時はまだ日本の正規代理店は決定していなかった。さらに2カ月後の5月17日、日本の代理店を探す目的で来日したモロー氏と、黒澤 明監督ゆかりの永田町の料理店『黒澤』で会談。その後、正規代理店は一新時計に決定した。
しかし、次の取材の展開を考えている内に、運悪く2020年に新型コロナ禍のパンデミックが発生、しばらくは動きが取れない日々が過ぎた。2022年に私はモロー氏に連絡を取ろうとしたが、一向に連絡が取れない。どこかに出掛けていてパリの本社もよく分からないらしい。そこで2023年3月10日、ようやく来日が叶ったモロー氏に不在の件を尋ねたところ、
「潜水艦に乗っていました」
と彼は言う。どういうこと? と重ねて尋ねると、これがちょっと面白いエピソードだったので少し書く。
フランス海軍原子力潜水艦部隊のお話
そこで最初の質問は、会っていなかった数年の間に「レゼルボワール」が発表したトピックとなるプロダクツについてとなった。
「長い話になりますが短くしますと、2022年のことです。ある日ある場所でたまたまお会いした人が、フランス海軍原子力潜水艦部隊の士官(officer)でした。海軍でもエリートですね。その人は『私はレゼルボワールの時計のファンです』とおっしゃるのです。いろいろ話しているうちに『私の潜水艦隊員のために時計を作ってはもらえませんか?』と。彼の部隊はいわば隠密行動部隊で、その現在の活動海域を知るのは、フランス政府でもわずか4人です。彼らの部隊は攻撃型ではない潜水艦部隊です」(フランソワ・モロー氏。以下、同)
驚いた。その時計についての詳細を記すことは、フランス海軍アドミラル(大将、提督)の許可が下りていないので割愛するが、経緯について書くことには許可が下りているので簡単に記す。その時計は2022年には完成し、その御礼に潜水艦に招待されていたということだ。もちろん“乗った”といっても、基地に停泊中の潜水艦に乗り込んだだけだ。
ここでモロー氏の話に加えWikipediaの力も借りて、蛇足だが日本人にはあまり馴染みのないフランス海軍潜水艦部隊のことを説明する。
モロー氏が時計の製作を依頼された部隊は、彼の「攻撃型ではない潜水艦部隊です」という言葉から、フランス西部はブルターニュ半島西端に位置する同国最大の軍港都市、ブレスト(Brest)を母港とする弾道ミサイル搭載の迎撃型原子力潜水艦(SNLE / sous-marin nucléaires lanceurs d'engins)部隊のことと思われる。フランスはSNLEを4隻保有する(2025年時点)。一方の攻撃型潜水艦(ESNA / escadrille des sous-marins nucléaires d'attaque)部隊の母港は、地中海のトゥーロン(Toulon)である。
「フランスで原子力潜水艦部隊が創設されたのは、シャルル・ド・ゴール大統領時代です。彼らが操舵する原子力潜水艦は16本の核ミサイルを搭載し、水中からのミサイル発射が可能です。先手必勝の攻撃型部隊ではなく、母国等が攻撃を受けたときの反撃を目的としています。潜水艦搭乗のその日は、早朝からブレストの港を訪れました。完成した時計をお見せしたら、彼らはとても喜んでくれましたよ」
「潜水艦部隊のために時計を作りました」と言うので、てっきりモロー氏からの提案か誰か仲介人物がいるのかと思ったが、このような偶然の出会いから生まれる時計も結構あるのだ。話を聞きつけて、他の部隊からも依頼があるかもしれない。2022年3月のインタビュー時の話はここまでだったが、最後にモロー氏はこうも言った。
「フランスにも米軍のネイビーシールズに匹敵する特殊部隊『GIGN(ジェイジェン)』がありましてね。その部隊からも時計製作の話がありまして、現在進行中です」
この時のインタビューのほとんどは、フランス原潜部隊時計のエピソードに集中してしまったので時間切れになってしまった。というわけで他の話題は次回に持ち越しとなったが、それは翌年の2024年11月26日に訪れた。
>>仏国家憲兵隊 治安介入部隊「GIGN(ジェイジェン)」時計登場!
取材・文:田中克幸 / Report&Text:Katsuyuki Tanaka
撮影:高橋敬大 / Photo:Keita Takahashi
協力:一新時計 / Thanks to:ISSHIN WATCH CORP.
INFORMATION

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