RESERVOIR“MAKE IT BOLD”=“大胆に行こうぜ!”ひとりの計器蒐集家の夢想から生まれた時計趣味人の魂に点火する「レゼルボワール」 02
仏国家憲兵隊 治安介入部隊「GIGN(ジェイジェン)」時計登場!

「reservoir × gign」…1974年3月1日に創立した仏国家憲兵隊 治安介入部隊GIGNの創立50周年記念モデル「レゼルボワール × ジェイジェン」。192本限定。2024年発表。フランスでは子供でさえ知っているという有名な部隊の創立記念モデルだけあって、その発表は新聞に取り上げられるほど高く注目された。この限定モデルの追加生産は一切無いが一般向けモデルを希望する声も多く、2025年はフランス向けに一般モデルが発売されると思われるが、その際のモデル名等は不明。
モロー氏との次のインタビューは、前回の翌年となる2024年11月26日に行われた。2023年のインタビュー記事を保留にしていたのは、前ページで書いたとおりフランス海軍アドミラルの許可を待っていたからだ。
ここで閑話休題……、前回の訪日は日本市場の拡大を目的としたもので、時計店やメディアとのミーティングを主としたが、モロー氏はかなりの日本通である。
「日本が大好きでね」
と彼はおっしゃる。
「実は15年ぐらい前の3年間(2006~2009年)、日本に住んでいたことがあるのです。以前は金融機関のHSBC(※註)に25年間勤めていました。日本に来た目的は、HSBCのある事業の立ち上げという大きな仕事のためです。銀行の仕事は楽しかったのですが、どうしてもやりたいことがあったので辞職しました」
(※註:HSBCホールディングス。本社は英国・ロンドン。1865年に香港で創設された香港上海銀行を母体として1991年に設立された、世界最大クラスのメガバンク。日本との関係では、香港上海銀行時代の1866年<慶応2年>に横浜支店を開設している)
日本を何度か訪れたどころか、しばらく日本に住んでいたと言う。「どうしてもやりたいこと」とは自身が考えていた時計事業、つまりレゼルボワールの立ち上げのことだ。
さて、この時のインタビューの始まりは、当然ながら前回に伺ったフランス海軍迎撃型原子力潜水艦部隊の時計である。その後、フランス海軍のアドミラルから、時計に関する情報解禁の許可は下りましたか? と尋ねると、
「それが未だ許可は下りていないのです。同意を得られませんでした。ただ、この件については(メディア等に)話すことは良いという許可は得ています。しかし潜水艦の名前や時計のビジュアルは一切公開できません」
結局ダメだったか……。ちなみに50本製作したそうである。ならば話題を変えて、前回のインタビューの最後にモロー氏がちらりと言われた、フランス国家憲兵隊 治安介入部隊「GIGN(ジェイジェン)」のために製作した時計のエピソードを尋ねた。GIGNって何?
「この部隊はRAIDと似たような活動をしますが、対テロ対策、拉致誘拐、救出、ネット上でのセキュリティも担当します。ロシアのウクライナ戦争の初期、GIGNはキーウに派遣され駐フランス大使の救出作戦を担当しました。RAIDは(仏国家警察の部隊なので)国内活動を優先しますが、GIGNは海外活動も行います。GIGNは国家憲兵の特殊エリート部隊です」
再びWikipediaの力を借りて専門用語を簡単に説明する。まず「RAID(レイド)」とはフランス国家警察所属の対テロ特別介入部隊で、「捜査・支援・介入・抑止」(Recherche, Assistance, Intervention, Dissuasion)の頭文字を取って「RAID」。方や「GIGN(ジェイジェン)」はフランス国家憲兵隊の治安介入部隊(Groupe d’Intervention de la Gendarmerie Nationale)の頭文字を取って「GIGN」。国内活動が専門の国家警察所属RAIDとは異なり、軍組織のGIGNは国内外の活動を行うので、モロー氏が言及したようにキーウでの任務も遂行したのだろう。テロ・犯罪捜査とアクションが主体のフランス映画やドラマに、RAID等とともに頻繁に登場する組織である。
GIGINの創立は1974年3月1日。1970年代といえば1972年のドイツ・ミュンヘンオリンピックでの人質事件等、過激なテロが相次いだ時代で、これを受けてフランスでも特殊部隊の創設が決定された。H&K MP5といった有名な短機関銃やアークティックウォーフェア等の狙撃銃など、フル装備の部隊である。一体どのようなきっかけで部隊時計の話が始まったのだろう?
仏国家憲兵隊GIGNモデルは発売当初から話題沸騰
「GIGNのとある関係者が私にコンタクトを取ってきて、創立50周年記念の特別時計を製作してくれないか、と言われました。彼らは1974年3月1日に創立され、今回の時計にもその旨が記されています。GIGNは私以外にもコンタクトを取っていたようです。そこでデザイン等を提出した結果、我々の時計が選ばれました。特にゼネラル(将軍)はお気に入りだったようで、時間の表示方法やデザイン、何よりもフランスのブランドということも選定理由になったようです。この話は記事にされて構いませんよ。192本製作し、それぞれの時計にはシリアルナンバーが刻印されています。すべてのモデルを今年(2024年)の6月から7月にかけて納品しました」
こうして完成したモデルが「reservoir × gign」(「レゼルボワール × ジェイジェン」)。時間軸を整理すると、フランス海軍迎撃型潜水艦部隊時計の引き渡しは2022年には完了しているので、GIGNのプロジェクトはおそらくその頃にもたらされ、創立50周年に当たる2024年6月~7月に部隊へ引き渡されたことになる。
「時計のベースムーブメントはラ・ジュウ・ペレ、これにテロス社(TELOS)製作のモジュールを追加しました。パワーリザーブ、ハンマーキット、スネイル・カムも装備しています」
当モデルのデザインに関しては具体的なベースモデルは存在せず、オリジナルだ。ミドルケースのみ「ブラック スパロウ」を採用しているが、ベゼルやダイアル等のデザインはまったく異なり、8時位置にはGIGNの創立年などが刻印されている。なお、テロス社(Telos Watch)とは2009年にラ・ショー・ド・フォンに設立されたムーブメント開発専門会社のこと。創設者はフランク・オルニーとジョニー・ジラルダン。ムーブメント以外にも、GIGNモデルのようにモジュールの開発・試作・製造・組み立て・検査等を行う。過去にはハリー・ウィンストンの「オーパス14」(2016年)や、モンブランの「メタモルフォシス」(2010年)等の製作実績がある。
「フランスではすでにこの時計の記事が発表されています(と携帯の画像を見せてくれた)。記事を見て『私もこの時計が欲しい!」という希望は頂いていますが、GIGNモデルは今回限りで192本以上は製造しません」
しかし、GIGNは米軍のネイビーシールズのような部隊だから、一般向けモデルの発売を希望するフランスのお客さんは多いだろう、と私が述べると、
「ゼネラル(将軍)からは一般用モデルの製造許可を頂いていますので、これからデザインを起こそうと思います。なにしろフランスでは子供でも知っているくらいの、いちばん有名な特殊部隊ですからね。来年(2025年)のモデルはフランスでの販売がメインとなるでしょうが、もちろん日本でもご要望があればお届けします」
希望者はメイル等あらゆる手段で一新時計へ連絡されたし。
仏海軍やGIGN以外に、レゼルボワールはコラボレーション・モデルも発表している。例えば前述のテロス社と共同開発した、2023年「オンリーウォッチ」出品作のトゥールビヨン「レゼルボワール × テロス ウォッチ エディション オンリーウォッチ 2023 ティーフェンメッサー トゥールビヨン」だ。落札価格は5万5000ユーロ(2024年5月10日に結果発表)。1年前と為替レートの違いはあるが、2025年3月時点では約892万3200円になる(1ユーロ=162.24円で換算)。また珍しいことに、当モデルは一般に向けても限定発売されたが現在は完売状態になっている。
話の順序が逆になってしまった感があるが、レゼルボワールの新作群の中でも発売好調なモデルを含めたコレクションについての話を、次ページでお届けする。特にカー・エンスージアスト泣かせのモデルは必見。
取材・文:田中克幸 / Report&Text:Katsuyuki Tanaka
撮影:高橋敬大 / Photo:Keita Takahashi
協力:一新時計 / Thanks to:ISSHIN WATCH CORP.
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