H.Moser & Cie.2028年に迎える創業200周年をひかえたH.モーザーの未来戦略 01
時計界のトレンドを見据えつつ
常に独自性を打ち出すH.モーザー

Nicholas Hofmann
ニコラス・ホフマン
H.モーザー社インターナショナル・セールス・ディレクター兼マネージング・ボード・メンバー。1977年、イギリス・アシュフォードに生まれる。1995年、プラハのエコール・フランセーズを卒業。1997年~2001年までパリの専門学校ISEG(Institut Supérieur Européen de Gestion)で経営とマーケティングを学ぶ。2002年、ショパールに入社。2010年にH.モーザーに入社し、アジア地域担当セールスマネージャーを経て現職。
2024年秋に来日したH.モーザーのニコラス・ホフマンさん。絶好の機会なので2024年の新作をご説明いただき、さらに2025年以降の新作作りの方向性を伺うことにした。
まず、今回の来日の目的を教えてください。
「主な目的は、我々の時計を販売していただいているリテイラー向けのセミナーを開催するためです。このセミナーの中で私は2025年以降のプランを説明します。また、週末には東京と大阪でH.モーザー愛用者を集めたイベントを開催しますので、そこにも出席します。
大体、私は毎年11月には来日するようにしているのですが、その年を振り返ると同時に、春にジュネーブで開催される『ウォッチズ&ワンダーズ』を待たずに新しい情報を提供することにしているのです。」
では今回、どんな新しい情報を持ってきたのですか?
「まずは2024年に発表された新作を持ってきました。10月に発表したばかりの『パイオニア・レトログラード セコンド ミッドナイトブルー』や、『エンデバー』の新しいモデルも持ってきました。
もちろん、2025年の新作は現時点で公開できるものは少ないのですが、その傾向を伝えられるとすればカラフルな一年になるといえますね。それは我々にとっても楽しみです。ただ世界の時計市場はスローダウンしていますが、我々はその中でも着実に成長していこうとしているのです。日本でもそうですが、我々のシェア(市場占有率)と存在感が着実に積み上げつつある状況ですので、飛躍的な成長を見込んでいます」
そんな魅力的な製品を見せていただくことにワクワクしますが、時計市場のトレンドは、小径化やシンプル化があると思います。これにH.モーザーはどう対処してくのでしょうか?
「もちろん、我々もケース径40mmやさらなる小径化をすすめています。『エンデバー』や『パイオニア』にも40mmのモデルを出しましたし、ケース径のスイートスポットは直径40mmと考えているので、それがメインにはなると思いますが、それより少し大きいモデルや、さらに少し小さなモデルの両方そろえることが必要ですね。
その一方で、スケルトン仕様のコンプリケーション・モデルやアルピーヌとのコラボレーション・モデルなどの高価格帯のモデルも継続していきます。複雑機構にもいろいろありますが、そこに至るまでのコンプリケーションの入門的なモデルで、比較的、手の届きやすいモデルも予定しています」
偉大なヘリテージにスポットを当てた
マッセナLABとのコラボレーション

ウィリアム・マッセナ氏が設立した「マッセナLAB」とのコラボレーションから誕生した新作クロノグラフ。そのモチーフとなったのはH.モーザーが1940年代に製作したツー・インダイアルのクロノグラフである。ダイアルはサンバースト仕上げのファンキーブルー フュメ。45分の積算計とダイアルの外周にタキメーターがプリントされている。
では早速、新作を見せていただきたいのですが、これはどういったモデルでしょうか?
「このクロノグラフは、ウィリアム・マッセナ氏が設立した『マッセナLAB』とのコラボレーション・モデルです。マッセナ氏は以前、ジュネーブのオークション・ハウス『アンティコルム』で働いていた人物で、ヴィンテージ・ウォッチのコレクターでありスペシャリストなのです。彼とのコラボが4~5年前から続いていたのですが、そこから得たノウハウを、どう商品に落とし込んでいくかの正解が見つかっていないので、なかなか製品化はされていなかったのですが、H.モーザーが3年後に創業200年を迎えるにあたり、その歴史の中で生み出してきたヘリテージ(遺産)を形にしようと作られたモデルです。
モチーフとなったのは1940年代のクロノグラフであり、スモールセコンドと45分の積算計を水平に並べたツー・インダイアルのクラシカルなモデルです。
ただ、このようなヴィンテージなモデルを製作しつつ、次の方向性を模索しているところです。その中にはアバンギャルド(前衛的)なものもあれば、このようなクラシカルなものもある。それによって我々の歴史を表現できないかと考えているところなんです」
しかし、このようなクラシカルなクロノグラフが現代のH.モーザーからリリースされるのは非常に新鮮ですね。レトロなんですが、新しい魅力も兼備しているように思います。
「今のH.モーザーというと『ストリームライナー』が有名ですが、ハインリッヒ・モーザーは起業家であり優れた時計師であったので、彼を原点として今でも続いているヘリテージも、決して忘れてはいけないと思います。ですから創業200周年に向けて、そのヘリテージに対応したモデルを出していければと考えています。ただし、H.モーザーは単一のコレクションを展開するブランドであってはいけないと考えているので、常に新しく魅力的なコレクションを展開していきたいと思います」
取材・文:名畑政治 / Text:Masaharu Nabata
協力:エグゼス / Thanks to EXEX
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