メインコンテンツに移動

Swiss Watch Confidential Vol.23  ジュネーブの続きは香港で

ジュネーブの続きは香港で

「WATCHES & WONDERS(ウォッチズ&ワンダーズ。以下W&W)」の狙いは、スイス高級時計のアジア市場へのさらなる普及にある。今やアジアはスイス時計産業にとって最大の輸出先。香港や中国はもちろん、アジア諸国の需要喚起に熱心なのは当然だ。急成長に続く低迷が懸念されるとはいえ、スイス時計産業にとってアジア市場の成長はぜひとも必要なのだ。


  さて、2013年に始まったこのWATCHES & WONDERSは、今年で3回目。9月30日から10月3日の4日間、ビクトリア湾を一望する香港コンベンション&エキシビション・センターで開催された。アジア最大の高級時計展と銘打つにふさわしく、出展ブランドはそうそうたる顔ぶれだ。リシュモン グループに属すカルティエ、ヴァシュロン・コンスタンタン、A.ランゲ&ゾーネ、ジャガー・ルクルト、ピアジェ、IWC、ロジェ・デュブイ、パネライ、モンブラン、ボーム&メルシエ、ヴァンクリーフ&アーペルの11ブランド、それに独立系のリシャール・ミルを加えた総勢12ブランドが一堂に会した。


カルティエ 会場内 A.ランゲ&ゾーネ デモンストレーション

W&WはまさしくSIHHのコンパクト版という印象。ブースの規模はSIHHより小さいものの、各ブランドがそれぞれ趣向を凝らすエントランスの設えはSIHHとほぼ同じだ。エンドユーザー向けのガイドツアーや時計師のデモンストレーションなども行われていた。

  ここに集まったのは、1月にジュネーブで開催されたSIHH(国際高級時計展)に出展する著名な高級時計ブランドばかり。主催者もSIHHと同じく、スイスに拠点を置くFHH(高級時計財団)だ。会場には各ブランドの今年のテーマを象徴するオブジェなどが移設され、回廊型に配置されたブースや、通路に設けられた飲食や休憩スペースなどもSIHHを彷彿させる。さらに、各ブランドのCEOやスタッフも勢ぞろい。欧米の著名な時計ジャーナリストたちも多数取材に訪れていて、ジュネーブのような活気に包まれていたのが印象的だった。


  だが、SIHHと酷似しているように思えても、実は大きな違いがある。SIHHが招待者のみのクローズドな商談の場で、ビジネス色が強いのに対し、W&Wは基本的に一般のエンドユーザーを対象にしたオープンな展示会なのだ。彼らにまず高級時計の文化的な価値を知ってもらい、興味を喚起して、購買欲を刺激するのが目的だ。そのため、時計の展示のみならず、ブランド毎にガイドツアーが組まれ、ブースでは職人による組み立てや装飾技法のデモンストレーションが行われ、専門的なレクチャーや体験プログラムが催されるなど、ユーザー向けの多彩なイベントが用意されている。“WATCHES & WONDERS”を訪れた来場者たちは、まさに「時計ってすごい、これは驚きだ!」と、高級時計の世界に魅了されたに違いない。



構成・文:菅原 茂 / Composition&Text:Shigeru Sugawara


Swiss Watch Confidential backnumber | スイス時計事情バックナンバー


NEW RELEASE

新着情報をもっと見る