2000年に発表されたコレクション「ロングアイランド」。20世紀初頭に登場したレクタンギュラー・スタイルを基本としつつ、モダンでグラマラスな要素を巧みに融合させることで、現在ではフランク ミュラーを代表するコレクションのひとつに成長した。
フランク ミュラーを代表するコレクションのひとつである「ロングアイランド」が2020年、誕生から20周年を迎えた。
この「ロングアイランド」が誕生した2000年ごろ、時計界は大手資本によるブランド買収の嵐が吹き荒れ、これに翻弄されて多くの歴史ある有名ブランドがグループ化されたり、あるいは姿を消していった時代であった。
そんな中、フランク ミュラーは“時計製造の理想郷”を目指して計画されたウォッチランド建設の真っ只中。そんな状況の中、「ロングアイランド」は実に静かなデビューを飾ったのである。
そのスタイルを簡単にいえばレクタンギュラー(長方形)。このフォルムは懐中時計から腕時計へと移行していく1900~20年代に現れたものだ。
19世紀末、小型の懐中時計ムーブメントを腕時計のケースに収めることで誕生した腕時計だったが、ポケットから腕へと進出することで実用性が向上。同時にモダンな装飾品として注目され、さまざまなフォルムのモデルが作られた。その多彩なフォルムのひとつがレクタンギュラーだ。
また、このレクタンギュラー腕時計は1920~30年代に世界を席巻したアール・デコ(Art Deco)の影響も強く受けることになった。
アール・デコとは幾何学フォルムによる記号的表現や、原色を用いた鮮やかな色遣いなどが特徴で、アール・デコのブームはアクセサリーの最新アイテムであるレクタンギュラー腕時計と親和性が高かった。
ただし、フランク ミュラーが2000年に発表した「ロングアイランド」は、単に1920~30年代へのノスタルジアを喚起させるだけの存在ではなかった。
古い時計の資料で見つけた1917年に発売されたレクタンギュラー・モデル。かつて古典時計の修復を手掛けていた時計師フランク ミュラーは、熱心な時計愛好家から持ち込まれる、このようなアンティーク・モデルを多数目にしていたことから、自分のコレクションにレクタンギュラー・モデルを導入し進化させようと考えたに違いない。
取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
写真:江藤義典 / Photo:Yoshinori Eto
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