機関車から建築物にまで影響を与えたストリームライン

リゾートでの着用にピッタリの「ヴァンガード ヨッティング」は、2014年に発表された「ヴァンガード」をベースに、船舶に搭載され、方位を示す羅針盤のパターンを採用したブルーのダイアルと、視認性に優れた立体的な新デザインのインデックスを用いたモデル。ラバーにファブリックを縫い合わせることで耐水性と耐久性を高めた特製ストラップが付属する。
ヴァンガード ヨッティング / Ref:V45SCDTYACHTING 5NBL、ケースサイズ:縦53.7mm×横44.0mm、ケース素材:18KPG、防水性:日常生活防水、ストラップ:クロコダイル×ファブリック、ムーブメント:自動巻き、価格:2,350,000円(税抜)

  フランク ミュラーにおける新たなスタンダードとなった「ヴァンガード」のケース側面にはスリットが刻まれ、着色されたパーツを嵌め込むことでストラップと一体になった流れるようなフォルムが際だっている。

  このモデルから想起されるのが、アール・デコから派生し、アメリカを中心に大流行した「ストリームライン」と呼ばれるスタイルである。

  ストリームラインを日本語でいえば「流線型」。本来は鉄道機関車などの空気抵抗を減らすため、先端を丸くし後端に向かって直線を延ばした形状のこと。このフォルムが鉄道車両だけでなく、自動車や空気抵抗とは無縁の建築や照明、日常生活品にまで応用され、「アメリカン・アール・デコ」と呼ばれる独特のスタイルを形成した。

  そのシンボルがニューヨークのクライスラー・ビルディング(1930年)やエンパイアステート・ビルディング(1931年)などの“摩天楼(skyscraper)”だが、アール・デコのスタイルにストリームラインの要素を取り入れた個性豊かな建築物が、フロリダやカリフォルニアなどの全米各地に多数、出現した。

  特徴は長く伸びた水平のラインとこれと対比する垂直の柱や塔。大きく湾曲した側面と船を思わせる丸い窓。これに影響を受けたモダンな建築物は、戦前の日本にも見られたが、現在ではその大半が失われてしまったのが残念だ。

  このようなアメリカン・アール・デコの影響で作られた建築物における、もうひとつの特徴的なスタイルが「ジグラット(ziggurat)・パターン」である。

  これは階段状の装飾のことで、古代バビロニアやアッシリアにおける神殿にヒントを得たという。それだけにシンプルで力強く、富や力の象徴としてニューヨークの摩天楼に用いられて新しい時代の到来を告げた。

「ヴァンガード」のフォルムとディテールにも、曲線と直線の見事な調和を見ることができる。特に注目はインデックス。これまでフランク ミュラーを代表する「トノウ カーベックス」には、フランク自ら生み出した「ビザン数字」が用いられることが多かったが、「ヴァンガード」では、直線を基調として新たに創出された字体が採用されている。

  これは動力装置や歯車など機械的モチーフにインスパイアされて誕生したというアール・デコと重なるのだ。

アール・デコから影響を受けた
1930年代のメンズ・ファッション

ケースの構造やフォルムだけでなく、ダイアルや針の造形、そしてストラップの装着法に至るまで、これまでにない新機軸を打ち出すことで次世代のスタンダード・モデルとして誕生したのが「ヴァンガード」である。彫りの深い立体的なアラビア数字インデックスで視認性の高さを確保し、独特の装着法でケースと一体になったストラップがこの上ないフィット感をもたらす。
ヴァンガード / Ref:V45SCDTSTGJ AC5N、ケースサイズ:縦53.7mm×横44.0mm、ケース素材:SS×18KPG、防水性:日常生活防水、ストラップ:クロコダイル×ラバー、ムーブメント:自動巻き、価格:1,200,000円(税抜)

  このようなアール・デコ・スタイルの流行と進化は、特にアメリカで顕著であったが、それは建築物や日常生活品だけに止まらず、メンズ・ファッションにも多大な影響を与えた。それが現在、“1930年代スタイル”と呼ばれるものだ。

  そして、この時代における最先端のメンズ・ファッションを紹介し、アメリカを一躍“メンズ・ファッション大国”と世界に認知させたのが、1933年にシカゴで創刊された世界初の男性誌「エスクァイア(Esquire)」であった。

  この創刊から30~40年代のメンズ・ファッションを知りたければ、まずは「エスクァイア」を紐解くべきだろう。

  そこで紹介された、さまざまなシーンにおけるメンズ・ファッションはエレガントさを極め、ネクタイの柄やカフリンクスなど随所にアール・デコの影響を受けたパターンを取り入れた装飾品が用いられていた。

  また、男性のスーツでは、ジャケットは上半身にフィットしつつ、ボトム(パンツ)を幅広くすることで、上から下に流れる美しいラインを形成。これによって華麗でセクシーな印象を醸し出している。

  それはストリームラインに共通するものであり、ビジネスでのスーツ・スタイルはマンハッタンの摩天楼と絶妙にマッチし、カジュアル・スタイルはフロリダやカリフォルニアなどのリゾート地で、これ以上ないコンビネーションを実現した。

  フランク ミュラーの「ヴァンガード ヨッティング」は、まさにそんなリゾート地に最適。羅針盤をイメージしたブルーのダイアルと耐水性に優れるファブリックとラバーを組み合わせたストラップで、ビーチ・リゾートでも気兼ねなく使うことができる。


未来を指向する「ヴァンガード」のフォルム 

取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
写真:江藤義典 / Photo:Yoshinori Eto


INFORMATION

フランク ミュラー(FRANCK MULLER)についてのお問合せは・・・

フランク ミュラー ウォッチランド東京
東京都中央区銀座5-11-14
TEL: 03-3549-1949