既成のあり方にとらわれず、新素材や斬新なデザインを用いた個性的なウォッチメイキングを得意とするラドー（RADO）。2009年もコレクションの新旧を問わず数多くニューモデルを投入してきたが、中でも一押ししたいのが「r5.5」という新しいコレクションの面々だ。以前からラドーと親交の深かった世界的に高名なプロダクトデザイナー、ジャスパー・モリソン(Jasper Morrison)氏がデザインしたコレクションで、これまでに手がけたラドーの時計ボックスや「セラミカ クロノグラフ」の限定版に次ぐ、同社とのコラボレーション第三弾となる。スクエアケースの角に55度の曲線(アール)をつけた通称“ジャスパー・モリソンシェイプ”は、無意識のうちに人間に心地よさをもたらす秀逸な形態。ブレス部分も手首に沿う優しいラインが熟慮されており、細部にわたって全く妥協が感じられない、まさに普通を超えた　“スーパーノーマル”ウォッチに仕上がっている。
　また毎年本数限定で展開されるバーゼル・スペシャルとしては、今年は「ラドー トゥルー」から新モデルが登場。マットな質感のプラチナカラーセラミックスはラドーだけのオリジナルで、デザインとマテリアルの巧みな扱い方には、やはり群を抜く感がある。
　機械式ムーブメントだけに固執するのではなく、時にはクォーツムーブメントを用いて自在にデザインコンシャスな高級時計をつくり出すラドー。徹頭徹尾、耐傷性や軽やかな装着感こそが＜新のラグジュアリーウォッチ＞だと位置づける同社は、あまたあるウォッチメーカーの中でも、極めて創造性に富んだブランドであると断言できるだろう。

　1989年に世界で初めてのフルセラミックスモデル「セラミカ」を発売したラドー。同コレクションは、セラミックス素材独特の艶のある高貴な質感と、エッジの切り立った硬骨なデザインで、長期にわたって好評を博してきたラドーのアイコンモデルだ。2007年からは、長方形のケースの中に不定期な大きさのインナーサークルを設えた個性派クロノグラフモデルをラインナップに加えており、ケース全体をサファイアクリスタルで覆い、ケース内枠の4辺にメタルを配する“メタリゼーション”カラーを施した特殊モデルなど、多彩なモデルを展開してきた。シリーズ誕生から20年の節目を迎える2009年は、クロノグラフのインダイヤル部分に緑のツァボライト、ブルーサファイヤ、アメシストなどの輝石を、合計106個配した「セラミカ クロノグラフ ジュビリー」が登場。漆黒のダイヤルに浮かびあがるカラフルな石が、幻想的なイメージを与えるラグジュアリーピースだ。

文：越知絵里香　写真：板津亮

※表記は2009年6月現在のものになります。