今年はブースの配列が変更され、改めて時計メーカー間のパワーバランスが浮き彫りになった。躍進するメーカーもあればその逆もある。国内事情とは異なるメーカーのポジションを知ることは、非常に興味深い。
意外というと失礼だが、日本ではまだ知る人ぞ知るというメーカーが、大きなスペースを与えられているのを見ると、一気に時計に対する評価も変わる。その典型が、カール F. ブヘラ(Carl F. Bucherer) だ。
カール F. ブヘラはメインホールにとても巨大なブースを構えており、その威風堂々たる構えは、他の有名メーカーさえも驚かせる。ところが、日本に本格上陸したのは2007年であり、まだ抜群の知名度があるわけではない。しかしスイスでは確固たる地位を築いている。それがブースを見ればよくわかる。
カール F. ブヘラのルーツは1888年にスイスのルツェルンにて創業した名門時計店「ブヘラ」。そして1919年にオリジナルウォッチの製造に乗り出してからは、時計販売と時計製造を両輪に、存在感を高めていった。
ヨーロッパ最大級の時計小売店チェーンとなり大成功を収める一方で、オリジナルウォッチでも大成功。クロノメーターの認定数で常に上位に入っていたというから、優れた時計をたくさん作っていたことが分かるだろう。
現在は時計販売と時計製造は別会社となったが、関係性が薄れた訳ではない。
カール F. ブヘラの時計はあくまでもユーザー目線で生まれる。機構や装着感、そしてサイズ。全ては時計販売の現場から生まれた揺るぎない思想だ。
ここ数年は自社ムーブメントCal.CFB A 1000系を搭載するモデルを多数リリースし、個性磨きにも余念はない。「知らない」ではもったいないほどの存在なのが、カール F. ブヘラという時計メーカーなのだ。