パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)

2008 BASEL & SIHH パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)

 パテック フィリップという時計メーカーは、しばしば「世界最高峰」と称号されるが、その所以はおいそれとは語りつくせないほど、同ブランドが時計史に刻んできた偉業は数え切れない。しかしながら、それを単なるクロニクルにとどめず、絶えず自己変革を遂げながら先端の技術開発にも果敢に挑戦していく同社の姿勢は、スイス時計業界自体を牽引する影響力を持っているといっても過言ではない。一方、その長い歴史の中で生み出してきた自社の歴史的名機をトレースし、現代に蘇らせるのにも卓抜なセンスを発揮しており、今作もいくつかのモデルに垣間見れた。



 古きよきアールデコの様式美を漂わせる、エレガントな角型ウォッチを展開する<ゴンドーロ>コレクションに、最新モデルが加わった。1993年に発表された<ゴンドーロ Ref.5204>の後継機種であり、穏やかな弧を描くトノー型のケースデザインを踏襲している。ホワイトゴールドのケースにセッティングされた文字盤は、ヴィンテージ ローズという、アンティークを思わせる風合いのピンク色。既存モデルでは<10日巻トゥールビヨン Ref. 5101P>などに採用される人気色であり、今作は愛好家にとっては待ちて久しい、シンプルなスペックの3針モデルとして登場した。立体的に磨き上げられた植字インデックスと針には、酸化処理により艶のあるブラックに仕上げた18金が使用されている。

モデル名:ゴンドーロ / Ref:5124 / ケース径:33.4×43mm / ケース素材:18KWG / 防水性:3気圧 / ストラップ:アリゲーター / ムーブメント:手巻 Cal25-21 REC PS、毎時28,800振動 / 仕様:スモールセコンド、シースルーバック、ジュネーブ・シール刻印 / 予価:2,184,000円(税込) / 発売予定:2008年 秋

 上記モデル<ゴンドーロ Ref.5124>の素材違いのバージョン。イエローゴールド製のトノー型ケースに内蔵されるムーブメントは、昨年発表されて一躍センセーションを呼んだ<クロノメトロ・ゴンドーロ Ref.5098>用に新開発された、角型キャリバー 25-21REC PS。手首にフィットするように曲面にカットされたサファイヤクリスタルのケースバックから、この美しい機械を鑑賞することができる。12時位置のアラビア数字とクサビ型のアップライドインデックスで構成されるシルバーのダイヤルと、丁寧に面取りされた肉厚のドルフィンハンドとのバランスは、アールデコ全盛期につくられた往時のマスターピースと比較しても、何ら遜色のない見事なものといえるだろう。

モデル名:ゴンドーロ / Ref:5124 / ケース径:33.4×43mm / ケース素材:18KYG / 防水性:3気圧 / ストラップ:アリゲーター / ムーブメント:手巻 Cal25-21 REC PS 毎時28,800振動 / 仕様:スモールセコンド、シースルーバック、シルバー・オパーリン文字盤、ジュネーブ・シール刻印 / 予価:2,037,000円(税込) / 発売予定:2008年 秋

 「ジェンマ」とは、イタリア語で宝石を意味する言葉である。その名が表すとおり、<ゴンドーロ・ジェンマ>は腕にきらめきを添える可憐なレディースウォッチ。1933年発売のドライビングウォッチに範を取った特徴的な意匠で、ベゼルにダイヤモンドをあしらったモデルが女性用として2006年に発表されたが、今年はダイヤなしのバリエーションが新登場。潔くシンプルになったことで、風防のサファイヤクリスタルに施されたファセット・カットがかえって強調され、ダイヤルのマザーオブパールが放つ7色の輝きや、その上に施されたギョウシェ彫りがいっそう際立っている。ロケーションを選ばずに着用でき、アクティブな女性からも厚い支持を受けそうだ。

モデル名:ゴンドーロ・ジェンマ / Ref:4980 / ケース径:37.2×22.4mm / ケース素材:18KRG / 防水性:3気圧 / ストラップ:アリゲーター / ムーブメント:クォーツ Cal. E 15. / 仕様:マザーオブパール 文字盤 / 予価:1,764,000円(税込) / 発売予定:2008年 秋

 <永久カレンダー Ref.5139>は、前作の<永久カレンダー Ref.5039(※生産終了)>のケース径をわずかに大きくしてリニューアルした、2008年の最新作。グランド・コンプリケーションと呼ばれる、超複雑な永久カレンダー機構を備えながらも、スリムに仕上げた薄型ムーブメントを搭載。文字盤の外周とインダイヤルとの間隔に若干のゆとりが生まれ、クルー・ド・パリと名付けられたピラミッド型のパターンが取り巻くベゼルとともに、古典的な意匠の中にコンテンポラリーな装いを与えている。

モデル名:永久カレンダー / Ref:5139 / ケース径:38mm / ケース素材:18KWG / 防水性:3気圧 / ストラップ:アリゲーター / ムーブメント:自動巻 Cal. 240 Q. / 仕様:永久カレンダー(曜日、日付、月、閏(うるう)年を指針表示)、ムーンフェイズ、24時間表示サブダイヤル、ロジウム・プレート・オパーリン文字盤、ジュネーブ・シール刻印 / 予価:7,161,000円(税込) / 発売予定:2008年 秋

 2006年に発表された、一年に一度(3月1日)だけしかカレンダーを調整する必要がない、年次カレンダー機構を搭載した<年次カレンダー Ref.5396>。今年は既存のローズゴールドに加え、ホワイトゴールド製のケースがラインナップに加わった。1930年代の<カラトラバ>からインスパイアされた、ダイヤルに描かれたトリプルサークルと呼称されるブルーのラインが、モダンな雰囲気を演出する。ダブル・ギッシェと呼ばれる12時位置のデイト表示窓は、従来はグランド・コンプリケーションモデルのみ採用されていたが、本作からセミ・コンプリケーションクラスのモデルでも楽しめるようになった。

モデル名:年次カレンダー / Ref:5396 / ケース径:38mm / ケース厚み:約11o / ケース素材:18KWG / 防水性:3気圧 / ストラップ:アリゲーター / ムーブメント:自動巻 Cal.324 S QA LU 24H、毎時28,800振動 / 仕様:年次カレンダー、ムーンフェイズ、24時間表示サブダイヤル、曜日・日付・月表示、ジュネーブ・シール刻印 / 予価:4,074,000円(税込) / 発売予定:2008年 秋

 パテック フィリップのスポーツモデルの中で、<ノーチラス>と人気を二分する<アクアノート>シリーズ。昨年、同モデルの誕生10周年を記念してリリースされたエクストラ・ラージサイズの<アクアノート Ref.5167>に、2008年は金属ブレスレット仕様が加わった。アクアノートといえば、従来のラバーストラップ(通称トロピカルバンド)仕様や、既に生産終了した<アクアノート Ref.5065/1A>に採用されていた、エッジの効いた金属ブレスレットを想像する向きも多いだろうが、今作のブレスはまったく新しくデザインされたもの。ポリッシュとサテンのツートーン仕上げになっており、ケースの形に呼応する、丸みを帯びたボリューミィな雰囲気が男らしさを強調している。

モデル名:アクアノート / Ref:5167/1A / ケース径:40mm(10-4時方向) / ケース素材:SS / 防水性:12気圧 / ストラップ:SS / ムーブメント:自動巻 Cal.324 SC / 仕様:日付表示 シースルーバック / 予価:1,974,000円(税込) / 発売予定:2008年 秋

 メンズ版<アクアノート>の系譜を継ぐ、レディースモデルの<アクアノート・ルーチェ>は、女性にアクティブかつ大胆な印象を与えるスポーツウォッチ。今年度はニューカラー、ハニー・ベージュが新登場した。肌に溶け込むような淡いカラーゆえ、ベゼルを取り巻く46個のダイヤモンドが腕の中でいっそう際立ち、独特の存在感を放つ。このモデルのほか、ケース全面に473個のパヴェダイヤモンドをセットした、豪奢なバージョンも展開する。

モデル名:アクアノート・ルーチェ / Ref:5067 / ケース径:35.2mm / ケース素材:SS / 防水性:12気圧 / ストラップ:ラバー / ムーブメント:Cal.E23SC / 仕様:ベゼルダイヤ巻(46個 約1カラット) / 予価:1,470,000円(税込) / 発売予定:2008年 秋



取材・文:越知絵里香  写真:板津亮

※表記は2008年6月現在のものになります。

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