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GRAND PRIX D'HORLOGERIE DE GENÈVE 2021「ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ 2021」21年目のターニング・ポイントを迎えて顕在化したその功績と課題 01

日本、ドイツ等スイス以外の国へも
門戸を広げ、国際化した功績は評価すべき

2021年11月4日、前年の無観客開催とは打って変わり有観客で開催された第21回GPHG。場所は恒例となったジュネーブ市のテアトル デュ レマン(Theatre du Leman)劇場。

2021年11月4日、前年の無観客開催とは打って変わり有観客で開催された第21回GPHG。場所は恒例となったジュネーブ市のテアトル デュ レマン劇場。

 2001年を初回とする「ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GRAND PRIX D'HORLOGERIE DE GENÈVE=以下GPHG)」。第21回を迎えた2021年は11月4日、恒例となったジュネーブ市のテアトル デュ レマン(Theatre du Leman)劇場にて開催された。

 すでにその結果は数多くの日本と海外のウェブメディアで報告されているので本特集では触れない。ご興味のある方はGPHG公式ホームページ、www.gphg.org/horlogerie/en/gphg-2021をご覧頂きたい。当ホームページには主宰者の©FONDATION DU GRAND PRIX D'HORLOGERIE DE GENÈVE(GPHG財団)が、2001年の第1回からこの年までの受賞記録のほか、運営内容や規約等を明らかにしている。すでに毎年ご覧になられている方も多いと思うが、英語とフランス語のみの表記であるものの自動翻訳を使用すれば大体の内容は把握できる(文章量は結構ありますが)。



 この特集では今回を含めた21年間の記録を元に顕在化したGPHGの功績と課題をテーマに取り上げたい。当テーマに関しては、あるスイスの事情通に質問事項をメイルで送り、その回答と内容を様々な形で文中に反映させた。この人物はスイス時計界に数十年もの間、当事者として実績を積み上げてきた業界の最重鎮である。また特集後半では2021年の受賞作品や組織を列記したが、単なる作品紹介だけでなく過去の受賞歴にも少し触れている。これもご参考になれば幸いです。

  • ジュネーブ出身のグラフィックデザイナー、ロジャー・プンド(Roger Pfund)氏による贈呈トロフィー
  • スイスのパスポートや紙幣のデザインで知られる、ジュネーブ出身のグラフィックデザイナー、ロジャー・プンド(Roger Pfund)氏による贈呈トロフィー。2021年の“金の針”大賞(Aiguille d'Or” Grand Prix)はブルガリが獲得。他18の部門賞と併せて今回は計19賞と増加傾向にある。


 まず前提としてGPHGは最高賞である“金の針”大賞(“Aiguille d'Or”Grand Prix)と、その他の部門賞で構成されている。最高賞を含めた賞の総数は2001年(第1回)の7賞に始まり翌2002年には10賞と増えたが、しばらくは8賞から11賞の間を行きつつしている。一気に増えたのは2013年(第13回)の15賞で、翌2014年(第14回)では17賞、その後16賞まで減った年が2年あるが2019年から2021年の今回までは19賞と明らかに増加傾向が見られる。

 2013年からの賞数の増加は詰まるところ参加ブランドの増加を意味し、この事はGPHGの認知度の向上と権威付けが成功した証左であろう。なお現在は自薦のエントリー制を敷いているが、参加費用は1作品あたり700スイスフラン(CHF)だ(約86,800円。1CHF=124円で換算)。

 何よりも重要なGPHGの功績は、参加ブランドを世界に向けて広く門戸を開けた点にある。スイスやヨーロッパ限定ではない点を、前述のスイスの事情通は評価している。


「昔の話ですが、(この手の時計賞で)あるドイツの会社名を口にすると嫌がる審査員もいました。(GPHGは)スイス以外の国のブランド、例えば日本や中国のブランドが参加するようになった点は良いことだと思います」(スイス事情通。以下同)


 例えば我が国のセイコーは、2006年(第6回)に「The 'Electronic Ink ' Watch」がエレクトロニックウォッチ賞で初受賞して以来、2014年(第14回)はグランドセイコーで「メカニカル ハイビート 36000 GMT」が“小さな針”賞を受賞、そして今回の2021年(第21回)は「メカニカルハイビート36000 80 hours キャリバー9SA5」がメンズウォッチ賞を受賞、計6回の受賞成績は過去21年間の受賞全75ブランド(組織・人物除く)中、第6番目(同率が他に5ブランド存在)の多さである。

 門戸を広げた分エントリー数も増え、その結果は部門賞の新設と増加につながっているのも特徴だ。

 前述したように15賞に増加した2013年(第13回)にはメンズウォッチコンプリケーション賞等が新設され、さらに17賞に増えた翌2014年(第14回)にはクロノグラフウォッチ賞、トゥールビヨン賞等が増設。エントリーブランドが増えたのだから当然だが、一方でこの参加ブランド数の増加が新たな課題を生み出したのである。