VACHERON CONSTANTIN丁寧な時計作りに現れるジュネーブ時計文化の庇護者としての矜持 03
#3 古の時計に学び、技と美を極める

時計の修復を担当するヘリテージ部門では、パーツから製造することもある。その場合は時計が作られた時代に合わせて古い工作機械を使用する。美しく完璧に修理するだけでなく、その時代の空気感も一緒に修理していくのだ。
1755年に創業したヴァシュロン・コンスタンタンは、その歴史を継承にも力を入れる。その一つが時計の修復で、新品の時計を作る部門やメンテナンスの部門とは別に、社内にはヘリテージ部門と呼ばれる修復のための部門がある。
主に1900年代初期の時計を担当するチームは、コレクターが所有する時計の修理だけでなく、ヴィンテージ市場かバイバックした希少な時計も修理する。専門家によって歴史的な検証が行われ、できる限り時計をオリジナルの状態に保つことを意識しながら修復する。故障部分は保存されている膨大な補修部品を使う場合もあるが、状況によっては古い工作機械を用いて同じ形の部品を作り直すこともあるそう。こういった時計の一部は、その後「レ・コレクショナー」として、世界中の限られた旗艦店のみで販売される。
そして150~200年前に作られたミュージアム級の時計を修復する部門では、内部構造を読み解き、古い工作機械を使ってパーツの製造を行い、丁寧に時間と手間をかけて修復していく。ヴァシュロン・コンスタンタンで修復した最も古い時計は1824年に製造されたクォーター・リピーター ポケットウォッチで、恐らくフランソワ・コンスタンタンによって販売されたもの。テンプ受けには「Vacheron & C」と刻印されていたという。工房内には1827年製のポケットウォッチもあり、針から作り直して修復を行ったという。膨大な時間と手間をかけて過去に作られた時計を修復するということは、メゾンが歩んできた歴史を知るということでもあるのだ。
メゾンの歴史を語る上で、もう一つ欠くことができないのが、「メディエ・ダール」である。これは芸術的な工芸技法を意味する言葉であり、エングレービングやエナメル装飾、ギヨシェ彫りなどをさす。ヴァシュロン・コンスタンタンでは現在、6名のアーティストが所属している。
作業を見せてもらったのはエナメル装飾。これはガラス質の塗料を使って絵を描く技法で、一層ごとに描いては焼き上げ、また一層描いては焼き上げるという工程を繰り返し、一枚のダイヤルを作るのに約10日間もかかる。窯で焼く際に、エナメルの色が薄まるので、そういった焼き上がりも状況を考えながら作業していく。「塗料の多くは1950年代に作られたもので、ダイヤルの素材によっても発色はかなり異なります。また現在は製造できない色もあります。ですから、優秀なエナメル師になるためには、たくさんの色のエナメル塗料を持っている必要があるのです。」(ユベール氏)
最後はギヨシェ彫りの工程を見学。1900年代初期の工作機械を使用しているが、動力のみモーターに改良しており、美しい彫り模様を真鍮などの板に彫り込んでいく。そもそもギヨシェ彫りの技法は、光の反射を抑えて針の視認性を高めるために生まれた技法だが、その彫り模様の芸術的な美しさが評価され、今では時計を美しく表現する技法として人気を集めている。
こういった芸術的な工芸技法を取り入れることで、時計は時を刻む道具から、美しいアートピースへと昇華するのだ。
ヴァシュロン・コンスタンタンは、現存するジュネーブ最古の時計ブランドである。そしてジュネーブの時計文化を丁寧に継承している。美しい高級時計とは、歴史を尊び、学び、そして自分自身を磨くことで生まれる。そういった高潔な精神をヴァシュロン・コンスタンタンは大切にしているのだ。
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ヴァシュロン・コンスタンタン
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(月曜日から金曜日 午前11時~午後7時)
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