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A. LANGE & SÖHNE古代ギリシアの英雄名を顕彰するA.ランゲ&ゾーネ6番目の新ファミリー「オデュッセウス」完全解剖! 04

次々と訪れる魔物や苦難を乗り越え
10年の歳月をかけて、故国イタケー島へ

A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」のために新設計されたCal.L155.1 DATOMATIC

「オデュッセウス」のために新設計されたCal.L155.1 DATOMATIC。グラスヒュッテストライプ仕上げの4分の3プレートや、その上に1箇所見られる青焼きビス留めのゴールドシャトン等、ランゲの伝統様式にまとめられた自動巻きムーブメントだ。新設計のテンプ受けには初となる両持ち式を採用し、毎時28,800振動数もランゲ初である。組み立てはランゲの鉄則である二度組み上げ方式が採用される。石数31、部品総数312、自社製ヒゲゼンマイ搭載。

傍若無人な求婚者達に制裁を与え
爽快なエンディングで幕を閉じる

 10年の後、戦争に勝利したギリシア軍団は個々帰郷の旅路となる。このトロイア戦争後から、ようやくホメーロスの『オデュッセイア物語』は始まる。プロローグとしては長すぎる話だったが、これを頭に入れておかないと本編が理解できないのでご容赦頂きたい。

『ホメーロスのオデュッセイア物語 上・下』は三部構成で、第一部と第二部が故国イタケー島で帰還するまでの冒険譚、並びにオデュッセウスの息子テーレマコスなどの計13エピソード、第三部の8エピソードでは帰還したオデュッセウスと息子テーレマコス等による、傍若無人な振る舞いを繰り返すよこしまな求婚者たちへの復讐譚がメインになる。

 当記事の冒頭部で「子供時代に両親の読み聞かせや、少年少女世界文学全集等で触れられた」と記したエピソードは、主に第一部に登場する。

 まずはトロイアを離れて間もない頃に遭遇したキュクロープス人の国が有名。英語表記ではサイクロプスと呼ぶが、彼らはひとつ目の巨人でその中のひとりポリュペーモスは、捕らえたオデュッセウスの将兵を殺戮し胃袋に収める。機智に富むオデュセウスはポリュペーモスの唯一の目を潰しこの国を離れる。しかしポリュペーモスは父ポセイドーンに仇討ちを依頼、これが原因で海と川の神ポセイドーンは様々な妨害を洋上で仕掛け、オデュッセウス帰還を妨げることになる。物語が始まって間もない頃に立て続けに彼らを襲った苦難により、トロイア出帆時には50の櫓を有する12隻の軍船に720名いた将兵は早くも1隻を残すのみとなる。物語開陳早々、徹底的なダメージを受けた上にポセイドーンの恨みを買うという惨憺たる船出である。

 このほかの有名エピソードは、この世のものとは思えない誘惑的な歌声で船員たちを惑わし船を座礁させる魔物セイレーン。オデュッセウスは配下の者達に、各人蝋で耳をふさぎ一心不乱に櫓を漕ぐように指示。しかし、好奇心旺盛な自分だけはセイレーンの歌声を聴くべく、部下に我が身をマストに縛り付け、無事に通過するまでは自分の言葉は無視せよと命令する。このほか12の脚に6つの首を持つ残酷なスキュラや、オデュッセウスを実に7年間足止めしたオーギュギア島のニンフ(妖精)、カリュプソーなど次々と新キャラクターが登場し、あの手この手でオデュッセウス一行の行く手を阻む。

 しかし辛苦な話ばかりでなく、オデュッセウスを陰ながら支援する女神アテーナーの存在や、パイアーケス人の国王アルキノオスの若き王女ナウシカアとの交情は心温まるエピソードだ。ちなみに宮崎 駿の映画『風の谷のナウシカ』(1984年 日本)のナウシカは、このナウシカアより採られている。読んでいると何となくナウシカとイメージが重なってくる。

 さて、第二部の最後に身をやつした老人の仮の姿でイタケー島へ帰還したオデュッセウスが、傍若無人の限りを尽くし彼を亡き者にしようと企む者たち100余名を、息子テーレマコスとわずかな忠義者たちとで、一気に成敗する大団円のエンディングは実に爽快。それまでに不埒な存在として婚約者候補たちを散々描いてきたので、彼らが全滅しても何の哀れみも感じない。むしろ耐えに耐えた20年間の感情が一気に爆発し、まさに正義は我にありという晴れ晴れとした気持ちになる。

 かくして20年ぶりにイタケー島には平和が訪れ、希望に満ちた繁栄が訪れる―。以上が『オデュッセイア』のあらすじである。


A. ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」のCal.L155.1 DATOMATICムーブメント

Cal.L155.1 DATOMATICムーブメントは、一見して巻き上げ効率を高めるためのプラチナ製分銅と、機械を堪能できるようにスケルトナイズされたブラックロジウム仕上げのローターが特徴。また調速機2点留めの両持ち式テンプ受けはランゲ初。ダイアル側では2枚のディスクによるアウトサイズデイトと、それとのバランスを配慮した大型曜日ディスク(英語の最初のふた文字で表記)の存在が大きい。

新設計のテンプや初の毎時28,800振動数など
話題満載の自動巻きムーブメントCal.L155.1 DATOMATIC

 ランゲは今回の「オデュッセウス」用に新たにムーブメントCal.L155.1 DATOMATICを開発した。「L155.1」の「L」はLANGE、「155.1」の最初の「15」は開発開始年の2015年、3桁目の「5」は5番目、「.1」はおそらく第1作目のことで、即ち「2015年に開発に着手した5番目のムーブメントの第1作目」を意味する。「DATOMATIC」とは「日付機構(DATE)」装備の「自動巻き(AUTOMATIC)」時計というランゲの造語だ。



 直径32.9mmのCal.L155.1 DATOMATICの振動数は、ランゲ初となる毎時28,800振動(4ヘルツ)。これは毎時18,000振動数(Cal.L951.6。ダトグラフ・アップ/ダウンなど)以外では、そのほとんどが毎時21,600振動数というランゲの基準数値を考えると、高速振動数への挑戦と解釈できる。新設計のテンプにはテンワの外側と同じ高さに4個の埋め込み式調整用ビスが設置される構造により、高振動数でも乱流の発生が減少し空気抵抗は最低限に抑えられるので、安定性を維持することに成功。これにフリースプラング式ヒゲゼンマイが統合されることで、歩度が安定しムーブメントの動力効率も向上した。

 片方向巻き上げ式センターローターはブラックロジウム仕上げで、その外周面には回転効率を向上させるプラチナ製分銅を採用し、ムーブメントを鑑賞できるようスケルトナイズ加工が施されている。また調速機は、これもランゲ初と思われる2点固定の両持ち式テンプ受け板で支持され、受け部品はすべて洋銀製。石数は31、ムーブメントの部品数312、ランゲの伝統に則って仕上げ装飾はすべて手作業にて行い、二度組み上げ方式の後にこのCal.L155.1 DATOMATICは完成する。



新たなるランゲの船出の旗艦となる「オデュッセウス」

 ギリシア神話におけるオデュッセウスは、トロイア戦争に10年を費やし、さらに10年間の年月をかけて治世するイタケー島に帰還した。A.ランゲ&ゾーネも10年以上をかけて当新ファミリーを完成。その道のりは神話の英雄と同じく、困難で苦難に満ちたものであったと思われる。その思いを込めた新ファミリー・コレクション「オデュッセウス」は、今後のランゲを希望に満ちた新世界へと導く輝ける大船になることを期待したい。


取材・文:田中克幸 /Report&Text:Katsuyuki Tanaka


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