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A. LANGE & SÖHNE古代ギリシアの英雄名を顕彰するA.ランゲ&ゾーネ6番目の新ファミリー「オデュッセウス」完全解剖! 01

“初物尽くし”の新ファミリーに見る4つの注目点とは?

かねてより時計愛好家から予想されていたA. ランゲ&ゾーネ初のステンレスティール(SS)製時計「オデュッセウス」

かねてより時計愛好家から予想されていたランゲ初のステンレスティール(SS)製時計。昨今の急増化するSS製ラグジュアリーウォッチへの計画は2015年に始動、アイデアの発想自体は2009年以前という。


 2019年10月に発表されたA.ランゲ&ゾーネ(A. LANGE & SÖHNE/以下、ランゲ)の、実に10年ぶりとなる新ファミリー・コレクション「オデュッセウス(ODYSSEUS)」。これには大きく4つの注目すべきポイントがある。


(1)ランゲ初のステンレススティール製高級スポーツウォッチ(ランゲではこれを“ラグジュアリー・スポーティウォッチ”と表現する)。
(2)2009年の「ツァイトヴェルク」以来10年ぶり、6番目の新ファミリー。
(3)ランゲ・ファミリーではツァイトヴェルクを除き、初めて自社の歴史とは関係の無い事象を発想源としたファミリーネーム。
(4)ムーブメントや防水性能など“初物尽くし”の機能を満載した完全新型モデル。


 近年、ジュネーブやバーゼルで発表されている新作の中で、特に目立っているジャンルが、ステンレススティール(以下、SS)製高級スポーツウォッチである。元々スポーツウォッチは時計界でも激戦区の分野だが、ポイントは“自社開発・製造ムーブメント”を搭載した“SS製ケース”の“高級時計”である点だ。

 事の起こりは2008年のリーマンショック以降、高品位(多くは自社ムーブメントの搭載が必須条件)に加え、普通の時計愛好家が購入できる納得プライスを設定できる時計開発にあった。そのひとつの回答がSS製ケースの採用である。しかし、ランゲが高級スポーツウォッチ分野に進出することは、一部の時計愛好家やジャーナリストが予測していたものの、実際の完成図は蓋が開くまでは全く分からなかった。

 そこに今回登場した「オデュッセウス」はSSケース、新作動方式採用の調整可能ブレスレット、新型ムーブメントなど完全なる新作時計。当プロジェクトの始動は2015年だが、アイデア自体は10年以上前、つまりツァイトヴェルク発表の2009年かそれ以前に生まれたものだという。なお「オデュッセウス」はレギュラーコレクションだが量産化する予定は無い、というのがランゲの方針。販売も2020年3月までは全世界のA.ランゲ&ゾーネ ブティックのみで展開される予定だ。


新ファミリーに命名された、ランゲ初となる
古代ギリシアの英雄名“オデュッセウス”

 具体的なスペックの解説に入る前に、時計愛好家に最も注目して頂きたいのが、前述の(3)のファミリーネームの由来「オデュッセウス」である。時計ブランドが世界に打って出る新ファミリーの命名には相当な熱意と挑戦心が込められている。ランゲでは「ツァイトヴェルク(ZEITWERK/ZEIT=時、WERK=工場、仕事)」以外の、「ランゲ1(LANGE 1)」、「サクソニア(SAXONIA)」、「1815(1815)」、「リヒャルト・ランゲ(RICHARD LANGE)」は、すべてランゲの歴史と密接に関係する事象から発案されたファミリーネーム。「ツァイトヴェルク」はランゲ初の時刻デジタル表示機能ゆえに、あくまでも彼らが誇る機能・精度を強調する意味を込めて誕生。しかし今回の「オデュッセウス」は発想の源が全く異なる。これは1994年の復興以来、25年目にして初めての試みである。ランゲ愛好家はまずこの点を念頭に置かれるべきだと思う。では、以降はファミリーネームの発想の源となった『オデュッセイア』の物語を紹介しつつ、新作「オデュッセウス」の機能面やデザイン面での解説を交互に進めて行きたい。



取材・文:田中克幸 /Report&Text:Katsuyuki Tanaka


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