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Watch Journey Vol.01 in Kobe  時計の世界を広げた伝説のモデル 「シンプリシティ」製作秘話

時計の世界を広げた伝説のモデル 「シンプリシティ」製作秘話

  日本の時計愛好家に絶大な支持を得るスイスの独立時計師フィリップ・デュフォーさん。彼が久々に来日し、神戸で講演会を開くという。そのニュースを聞きつけ、私(名畑)も神戸を訪問。講演会の主催者である上根亨さんとデュフォーさんのご対面に同席し、おふたりの話を、じっくり伺う機会を得た。


上根:そもそもデュフォーさんが「シンプリシティ」を作ろうと思ったきっかけは?


デュフォー:それはある日、友人の独立時計師アントワーヌ・プレジウソから「デュフォーさんも日本向けに何か作ったら?」と言われたことです。

  アントワーヌは「日本にはデュフォーさんのファンクラブがある」と言う。でも私は「そんなことはあり得ない。だって私の時計は、日本ではひとつも売れてないよ」と言ったのですが、彼は「確かに時計は売れてないかもしれないが、時計の美しさに対して敏感な人が日本にいるから、美しくてシンプルな時計を、そういった人に向けて作ったらどうか」と主張するのです。

  そこで私も考えました。私はいつも時代の流れと反対に向かっていると感じることが多いので、世の中の時計がどんどん大きくなるのとは逆に向かおうと思ったのです。

  ただ、「シンプリシティ」には、いろいろな作り方をがありました。最初に考えたのは、電話だけで時計を作ること。つまり、レマニアやフレデリック・ピゲに電話をして、「私の名前を彫ったムーブメントを作ってくれ」と頼むわけです。そして文字盤やケースも発注し、出来上がった時計を洒落た化粧箱に入れて発売するのです。これだと私の仕事は請求書を書くだけ。そんなやり方もあったでしょうね。


上根:でも、それでは満足できませんよね?


デュフォー:ええ。私のやり方ではありません。そこで、自分で設計しようと考えたのですが、デザインを始めてすぐ、美しくて調和が取れ、しかもシンプルな時計というのは、決して簡単ではないと気づきました。

  そこで、身勝手ですが、何より自分が気に入る時計にしようと考えました。“私は何も発明していない”といつも言っていますが、この言葉通り、1950~60年代に作られた美しい時計から雰囲気が気に入ったものを選び、そこからインスピレーションを得て、自分の時計を設計したんです。

  今思うと、つくづく電話だけで作らなくて良かったと思います。それは時計師としての自殺行為ですからね。

  こうして「シンプリシティ」は誕生しました。同時に私はこの時計を発表することでモチベーション(製作意欲)を与えられたのです。


上根:それは2002年のことですね。


デュフォー:そうです。私は2002年のバーゼルで「シンプリシティ」を発表しましたが、日本の時計店からすぐ反響がありました。時計を展示するアカデミー(独立時計師創作家協会)のブースに多くの方々が来て、「是非、売ってくれ」とか「私たちのために作ってくれ」と言われました。

  ただ、日本で販売するなら、どこかひとつの会社に扱いを絞りたい、と考えていたので、その要望にすぐ応えられませんでした。そしてバーゼル最終日、シェルマン(東京銀座に店を構える高級時計店)の磯貝氏がやってきて、彼と話をした結果、私は「あなたにすべて任せます」と言ったのです。


上根:そのバーゼルの少し後、シェルマンの磯貝さんが私の店にやって来たんですよ。磯貝さんは、やって来るなり「上根さん、あの時計は素晴らしいですよ!」と言うんです。さらにNHKで放送された「独立時計師の小宇宙」という番組の放送直後から、凄い反響があって、注文もたくさん入った。これを受けて、私も「シンプリシティ」に興味を持ち、2003年、初めてデュフォーさんが当店を訪問されて、お付き合いが始まったんですね。




取材・文:名畑政治 / Report & Text:Masaharu Nabata
写真:嶋田敦之、堀内僚太郎 / Photos:Shimada Atsuyuki、Ryotaro Horiuchi

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