Certified Watch Coordinator時計についての広範かつ基礎的な知識を認定し販売の現場で活用されるCWC資格検定制度とは? 01
異業種から時計業界への転身
知識不足を救ったCWCテキスト

「もしも CWC のテキストがなかったら、指針がないまま海を突き進むような感じだったのではないかと思います。実はシェルマン入社前、時計の本や雑誌を読んだのですが、まるで頭に入ってこなかったのです。なにしろ専門用語が多いですからね、これから時計業界に入ろうと思っている方にとって、スタートから順序良くステップアップしつつ時計の勉強が出来るのは CWC のテキストが一番だと感じております」と語るのはシェルマンに勤務する上野恭照さん。
時計についての正確な専門知識を共有し、顧客満足度の向上を主目的として日本時計輸入協会が 2011年にスタートさせた「ウオッチコーディネーター資格検定制度」(略称CWC)とは、時計の輸入や販売を手掛ける人だけでなく、広く一般の時計愛好家にも門戸を開いた、時計のスペシャリストを認定する資格検定制度である。
現在、全国で約3,000名のウオッチコーディネーターが誕生し、時計販売の現場において、時計の歴史や構造など正確な情報や知識を顧客に伝えて時計選びの楽しさをアピールし、長く愛用できる一品を選ぶお手伝いを通して活躍している。
このCWCの資格認定制度を活用し、顧客満足度の向上だけでなく時計文化の継承と発展を目指しているのが東京・銀座に本社を構え、都内各地の百貨店に出店するシェルマンである。
シェルマンの創業は1971年。アンティークウォッチの扱いからスタートし、やがて優れた製品を作るスイスの小規模ブランドや独立時計師の作品を多く取り扱うようになり、さらに複雑機構を搭載するクォーツ・ムーブメントのオリジナルウォッチ開発や販売にも事業を拡充。現在ではアンティークの枠を越え、幅広いジャンルの製品を取り扱うまでに成長している。
このシェルマンが出店する百貨店のひとつが新宿伊勢丹5階のウォッチフロア。そこに勤務する上野恭照(うえの・やすてる)さんに、CWC取得の経緯とメリットを聞いた。

東京の銀座に本店を構えるシェルマンは、都内各所の有名百貨店にも出店。そのひとつが伊勢丹新宿店本館5階のウォッチフロアにあるシェルマンのコーナー。ヨーロッパの知られざる小規模メーカーや独立時計師のレアな作品を主に扱っている。
「2018年に時計業界に入ったのですが、前職はインテリア雑貨を扱う会社に在籍していました。ただ、時計業界に入ったものの、まったく何も知識がないままでしたので、最初は本当に苦労しました。
この業界に入った動機は、機械式時計が末永く持ち主の相棒として寄り添う、数少ないアイテムであるということ。 その相棒を、接客を通じてお客様と結びつける架け橋になれることが素敵だなと思い、入社しました。
しかし実際に販売の現場に立つと機械式時計の構造やメーカーの歴史や特徴を身につけるのに四苦八苦。入社から3~4か月しても、そんな感じでした。しかも時計雑誌を読むと、生産国やメーカーごとに物語がたくさん紹介されていますし、専門用語が次から次へと出てくるので、わからない言葉をその都度、調べないと消化できません。そこで『これは時計の基礎的な知識を身につけていないといけない』と考え、入社時に渡されたCWCのテキストを改めて読み直したのです。すると時計の歴史や基礎知識がパートごとにわかりやすく紹介されていることがわかり、とにかく、これらの知識をまず押さえれば大丈夫だと確信しました。
それで本腰を入れて取り組んだ結果、その証明を残したいとの思いで、入社1年目で受験を決意したのです」
テキストで得た知識を販売の現場で活用し
より理解度を深めることができました
こうして上野さんは見事、試験に合格。正式にウオッチコーディネーターの資格を取得することができたという。
「なによりも自分の知識と接客に自信を持てたことが大きかったですね。実際に接客してわかったのですが、ご来店いただくお客様には時計に詳しい方が多く、お話を伺っても、なかなか理解できなかったのです。ところがテキストを読み込み資格を取得したことで、ひとつ階段を上ったというか自信が得られました。これが何よりの収穫でした」
もちろんテキストを読み込むだけでなく、その上を行く勉強も欠かさなかったと上野さんは言う。
「休日はできる限り図書館にこもって時計の歴史や機構の本を借り、静かな環境で勉強を重ねました。そうして時計の歴史を勉強すると、たとえば1970年代のクォーツ・ショックに対抗してスイス時計を再興するために新しい時計会社が設立されたといった事柄が、具体的にイメージできるようになりました。その勉強の成果と接客の実務を結びつけることで、より深く時計の知識が身体に染み込ませるよう意識しました。
もちろん売り場で時計に触れることができましたから、テキストや本から得た知識をベースに時計を操作して初めてわかったことも多かったですね。それによって接客にも具体的なイメージをもって取り組むことができました。
特に接客で役立ったのは、お客様とのコミュニケーションが格段にとりやすくなったこと。お客様の中には『時計博士』のように詳しい方もいれば、クォーツと機械式の違いにまだ馴染みのない方までいらっしゃいます。私の中ではCWCのテキストがひとつのボーダーラインになり、それ以上に深い時計の知識を持っている方には素直に『もっと詳しく教えてください』とお願いしたこともありました。逆に初心者のお客様には、テキストにのっとった内容をお話して、知識を反復しつつ理解度を深めていきました。この知識のボーダーラインは時計雑誌や時計の歴史書を読んだだけでは、きっと作れなかったと思いますね」
時計好きをひとりでも増やしたい
その思いを支えるのがCWC資格です
「お客様からの修理のご依頼の際に役立ったのが、ウォッチコーディネーターの資格取得に関連してヒコ・みづのジュエリーカレッジで時計分解の実習を行ったことがあったことです。この実技を通して時計の分解や修理が、とんでもなく大変だと実感しました。それまで修理を出しにいらしたお客様から『なんでそんなに時間がかかるんだ?』と言われても、表面的なご説明しかできず、説得力に欠けていましたが、実習を受けてからは『分解作業は私も経験がございますが、本当に大変なものです。』と実感をもってお伝えすることができるようになり、お客さまにも、その温度感を理解いただくことができました。これはCWC資格を取ったからこそですね」
このように販売の現場で多角的に活用できるCWCの資格だが、シェルマンとしては、どのように取り組んでいるのだろうか?

シェルマンのコーナーに設置された接客スペースには、多数の独立時計師たちの肖像画が飾られている。「当社では独立時計師やスモールメゾンなど、こだわりを持ったメーカーの作品を多く取り扱っています。CWCの資格を取得したとお客様にお話すると、テキストの内容で盛り上がり、そこからお客様の好みやデザイン、機能についてヒアリングできます。その結果、こだわりの相棒をピンポイントでご紹介でき、販売につながることも多々あります」と上野さん。
「現在、当社には 40 数名のスタッフが働いていますが、1/3 以上は CWC の資格を取得しています。すでにお話しましたが、当社では独立時計師やスモールメゾンなど、こだわりを持ったメーカーの作品が多いので、何よりもまず時計の基本を知っていないとなりません。そのため会社としてもスタッフには資格を取るように勧めています。
しかもCWCテキストには、お客様への手紙の書き方なども紹介され、これが役立つことも多いですね。私の場合、前職がまるで違う分野でしたから特に感じるのかもしれませんが、時計の場合、新作が入りましたという単純な案内だけでなく、定期的な分解掃除の案内のように、販売してからが本当のお客様とのお付き合いのスタートという部分が強いのです。しかも世代を超えて受け継ぐべきものですから、お客様との継続したコミュニケーション・ツールとして活用できる場面が多いと思います。
しかもお客様によっては時計を複数お持ちの方も多いですし、逆に結納返しの1本を大切にしたいいう方もいますから、それぞれの思いや個性に応じて末永くしっかりおつきあいできればと考えています」
その意味では上野さんにとってCWCの資格取得は大きなジャンプアップの重要ポイントになったわけですね。
「はい。そもそも、来店されるお客様もスタッフも根本的に時計好きです。ですから気に入られた時計を相棒としてお買い上げいただくための情報を精一杯お伝えすることはもちろん、ひとりでも時計のファンを増やしたいというスタンスで、日々ご案内させていただいております」

上野さんが個人的にも気に入っているのが、シェルマンで扱う「Habring2(ハブリング・ツー)」だ。独立時計師リチャード・ハブリングと妻のマリア・クリスティナが 2004 年にオーストリアで創業した本格機械式時計のブランド。上野さんは個性的なメカニズムとデザインの中にヴィンテージな意匠が込められているのが魅力だと語る。

東京都新宿区新宿3-14-1
伊勢丹新宿店本館5階ウォッチ シェルマン
TEL 03-5369-2323
CWC(ウオッチコーディネーター)とは?

時計の販売には、豊富な専門的知識を備え、適切な接客対応ができる時計販売のプロフェッショナルが必要とされています。日本時計輸入協会では、業界横断的に顧客満足度を上げる取り組みとして、2011年から「ウオッチコーディネーター資格検定制度」をスタートさせました。現在、約3,000名のウオッチコーディネーターが全国で、時計選びの楽しさと長くご愛用頂く喜びのお手伝いをするために活躍しております。
受験資格:学歴、年齢、性別、国籍に制限はありません。ただし、日本国内に連絡可能な住所があること。
※上級CWCは、ウオッチコーディネーター資格の既取得者(実技実習修了者)であること。
資格取得対象者:
・時計の販売に現在従事している方(販売スタッフ、店舗マネージャーなど)。
・時計営業に携わっている方(経営者、幹部、営業、営業アドミ、マーケティング担当者など)。
・時計業界を目指す方(学生、就職希望者など)。
・時計に興味を持っている方(ユーザー、プレスなど)。
第15期CWC及び第10期上級CWC試験詳細

2026年1月21日(水)に第15期CWC及び第10期上級CWC試験が開催されます。申込期間は2025年11月1日(土)~11月30日(日)です。
【第15期ウオッチコーディネーター試験】
試験会場:東京 / TKP 市ヶ谷カンファレンスセンター
大阪 / TKP ガーデンシティ大阪梅田
福岡 / TKP カンファレンスシティ博多
試験日 :2026年1月21日(水)
試験時間:13時~15時(2時間)
申込期間:2025年11月1日(土)~11月30日(日)
受験料 :8,800円
出題範囲:筆記試験はマークシート方式による選択問題で、CWCテキストより幅広く出題します。
【第10期上級ウオッチコーディネーター筆記試験】
受験資格:ウオッチコーディネーター資格の既取得者(実技実習修了者)
試験会場:東京 / TKP 市ヶ谷カンファレンスセンター
大阪 / TKP ガーデンシティ大阪梅田
試験日 :2025年1月21日(水)
試験時間:13時~15時 / 15時15分~17時15分(計4時間)
申込期間:2025年11月1日(土)~11月30日(日)
受験料 :11,000円
出題範囲:マークシート方式による選択問題で、上級CWCテキストとCWCテキストの両方から、主に製品や製造に関わる【A編】と、歴史や販売に関わる【B編】に分類し出題されます。筆記試験合格には、AとB両編ともに合格と判定されることが必要です。
*なお、上級CWCテキストの<アンティーク時計>、<世界の時計ミュージアム>、<コーヒーブレーク>、およびCWCテキストの<コーヒーブレーク>は出題範囲から除きます。
【合否通知と発表】
・受験者全員に対して合否通知を郵送します。
・併せて協会ホームページに合格者受験番号を掲載発表(2026年2月中旬予定)
INFORMATION

ウオッチコーディネーター資格検定(CWC)についてのお問合せは・・・
一般社団法人 日本時計輸入協会 JWIA-CWC事務局
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町4-3-11 DK共同ビル7階
Tel:03-3548-9042
Fax:03-3548-9043
NEW RELEASE
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