丸型ケースをまとった「トルピード プルソメトロ8 クロノグラフ」は、ボリューミィなケースと、大胆にカーブしたフレア状のラグが流麗なラインを描き、温かみのあるレトロな雰囲気に仕上がっている。そして、そのエレガントなケース形状と呼応するような、アールデコ期を彷彿とさせる古典的な趣に満ちたダイヤルのデザインが、この腕時計の魅力を決定づける最大の要素だといえるだろう。ローマ数字とアラビア数字を取り混ぜたオールド調のインデックスや、6時位置に配された大胆な形状にデフォルメされたクロノグラフの12時間積算表示計のインダイヤルはもちろん、経年によって色あせたようなクリームカラーと文字盤外周のブラックカラーとのコントラストが、シガーをくゆらせ、優雅にたゆたうカリビアンタイムを演出しているのだ。
　肝心のクロノグラフ機構は多彩な計時が可能になっており、心拍数を計測できるパルスメーター、時速を読み取ることのできるタキメーターという計算尺が備わっている。そして赤色で記されたパルスメーターのマーカーが、クロノ針の先に塗布された赤いカラーとが相まって、複雑に構成された文字盤にほのかに彩りを添える役割を果たしているのである。従来のモデルにはカレンダーがついていなかったが、2008年にリニューアルされ、12時位置にデイト表示窓を追加して改良を加えている。独創性の高い大胆なデザインでありながら、クエルボ・イ・ソブリノスの定番モデルとして位置づけられた「トルピード プルソメトロ8 クロノグラフ」は、古典にインスパイアされながらも進化の歩みを止めることのない、ブランドの哲学を象徴するタイムピースなのである。