メインコンテンツに移動
  1. HOME
  2. 時を巡る旅
  3. 2022年 新作情報
  4. 早くも感染症の影響から脱却し、過去最高の売上を記録したスイス時計産業
MENU
  • Instagram
  • Twitter
  • Facebook
  • Mail
  • YouTube
  • LINE

早くも感染症の影響から脱却し、過去最高の売上を記録したスイス時計産業

Watches and Wonders Geneva 2022

2022年3月30日から4月5日までのスイス・ジュネーブで開催が予定されている 「Watches & Wonders Geneva 2022(ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ 2022)」のイメージ・カット。公式サイトにアクセスすると、見本市の状況を紹介する動画が流れます。https://www.watchesandwonders.com/



 2022年もまた、新作時計発表の季節が巡ってきました、と書き出しましたが、時計界を取り巻く状況は、依然として複雑です。それはもちろん、2019年に始まった新型コロナ感染症(COVID-19)の影響によるものです。

 当初、新型コロナの影響は世界的な時計の販売低下を招きましたが、今ではその影響が減り、逆に予想以上の復活を見せていることが、FH(スイス時計協会)が発表する統計資料からわかってきました。

 それによれば、2020年のスイスの時計輸出総額は、2019年の217億スイスフランに比べ、21.8%減の170億スイスフランにとどまったものの、2021年の輸出総額は223億スイスフランとなり、2019年と比べプラス2.7%、2020年と比べるとプラス31.2%という大幅な伸びを見せたのです。

 その結果、これまで最も輸出総額が高かった2014年の記録を0.2%上回り、過去最高の年間成長率を記録しました。

 その大きな要因は、中国市場の堅調さとアメリカ市場の大きな伸びにあるとのことですが、一方で眼を見張るべき結果が出ていました。

 それは輸出額が増えたにも関わらず輸出本数が減少したこと。簡単に言えば、時計の単価が上昇したわけです。それは輸出価格500スイスフラン未満の時計が大幅に減り、輸出額では25.1%後退したのに対し、3,000スイスフラン以上のカテゴリーは9.7%の伸びを見せたことからも明らかです。

 さらに統計を細かく見ると、非常に興味深い事実がわかりました。輸出本数の中で、特に落ち込みの激しかったのがスチールウォッチ(マイナス21.4%)と、その他の素材カテゴリー(マイナス37.4%減)でしたが、輸出額では貴金属腕時計がプラス7.8%、スチールウォッチはプラス2.9%の伸びを記録しました。簡単に言えば、低価格のスチールウォッチが伸び悩み、高額なスチールウォッチ、つまりトレンドである「ラグジュアリースポーツ(ラグスポ)」系モデルが著しい伸びを見せたということ。やはりラグスポのブームは統計からも明らかです。

 このような状況であれば、時計の新作発表の場も以前と同じく、ジュネーブやバーゼルの大きな見本市会場を舞台に華々しく開催されることが理想でしょうが、感染症の流行は収まる気配がなく、海外から大々的に人々を招いての開催には躊躇せざるを得ないでしょう。

 そんな中、いち早く開催を決定したのが、スイス・ジュネーブで2022年3月30日から4月5日までの開催予定の 「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ 2022(Watches & Wonders Geneva 2022)」です。

 その事務局が2022年1月31日に配信したリリースにはこうあります。「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブはリアルとデジタルのハイブリッド形式により開催を決めました。そのハイブリッド・コンセプトは、健康対策を重視して開催されるリアルなサロンと、市場の期待に応えるデジタルソリューションを組み合わせることで、変化する状況に適応するようにデザインされています。それはすべて3月30日に始まります!」(筆者抄訳)

 この見本市に参加を表明しているブランドは38。そこにはカルティエやA.ランゲ&ゾーネなど、以前の「SIHH」時代から参加しているブランドに加え、ウブロやタグ・ホイヤーなどLVMHグループに所属するブランド、そしてパテック フィリップやロレックス、セイコーなどバーゼルワールドに参加していたブランドも含まれます。

 ただ、取材する我々としては、海外渡航についての制限や、その前後の待機期間等が流動的であることから、未だ(2022年2月半ばの時点)取材を決断できない状態です。

 その上、この原稿を書き上げ、公開直前の段階(2022年2月24日)にはロシアによるウクライナ侵攻が始まり、「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ 2022」の現地取材を検討していた我々(Gressive)はもちろん、世界中の時計関係者およびジャーナリストが3月末にジュネーブに集まることが難しい状況となってしまいました。



文:名畑政治 / Text:Masaharu Nabata