
今や腕時計は、現在時刻を知るためだけに存在している訳ではない。そもそも、何かを身に着けるという行為は、とてもパーソナルなことであり、自己主張に結びつきやすい。そこが、現代人が時計に凝る理由でもある。
シチズンが“美と技術の融合”に力を入れているのは、時計の付加価値を理解しているから。彼らは持ち前の技術力を生かしつつ、デザインにもこだわることで、“身につける喜び”を提案しようとしている。
その信念は、バーゼルワールドの展示ブースにも、明確に現れていた。大好評を得た昨年同様、ブースの設計を担当したのは、若手建築家ユニット「DGT」。シチズンの「光を時間に変える」という理念を表現するために、ムーブメントの地板を8万個使ったインスタレーションを展開した。そのスケール感、美しさ、独創性は、バーゼルワールドに参加した多くの時計ブランドを凌駕していた。