
ドイツ時計産業の中心地は、かつてのザクセン王国の首都ドレスデンとその近郊の村グラスヒュッテ。グラスヒュッテの地に時計産業を持ち込んだアドルフ・ランゲは、時計産業の本場であるスイスから遠く離れた僻地という立地を逆に利用し、村をあげて時計パーツから製造し、共有することで統一のスタイルを構築した。
ところで、統一した規格の高品質パーツを作るためには、正確な計測機器が必要になる。それを一手に引き受けていたのが、実は時計メーカー「ミューレ グラスヒュッテ( MÜHLE GLASHÜTTE)」の前身となるミューレ社だった。
1869年に創業しドイツ時計産業の骨格を支えてきたミューレ社は、第二次世界大戦後に国有化される。しかし冷戦終結後の1994年に復興し、翌1995年からは腕時計製造にも進出。精密な計測機器を作ってきたという誇り高きルーツを大切にしながら、同時にグラスヒュッテ・スタイルも受け継いでいる。 計測機器のように実用本位で、それでいてドイツらしい武骨さと手作業の温かみを感じることができる貴重な時計メーカーだ。