ピエール-ジャケ・ドローがラ・ショー・ド・フォンに工房を構えた1738年からちょうど275年目を迎えた今年、バーゼルでの新作はメンズ・レディス共に洗練さを極めたコレクションが揃った。
その中でも完全新作に注目すると、メンズではまず「コンプリケーション・ラ・ショー・ド・フォン(COMPLICATION LA CHAUX-DE-FONDS)」コレクションの「パーペチュアル カレンダー エクリプス(PERPETUAL CALENDAR ECLIPSE)」が挙げられる。これまでのモデルはエクリプス(ムーンフェイズ)のみだったが、パーペチュアル カレンダーとの複合化は完全に初の試み。特にジャケ・ドロー(JAQUET DROZ)のムーンフェイズは、表示方法と月の造形に際立った個性があり、すでにブランドの顔となった印象が強い。また「マジェスティック・ベイジン(MAJESTIC BEIJING)」コレクションでは、1本の針で時刻を表示する「グラン・ウール」にGMT針が追加された「グラン・ウール GMT(GRANDE HEURE GMT)」が登場。一見するとシンプルな2針時計に見えるところに美意識を感じさせる。
ジャケ・ドローの通常コレクションは、前述のように必ず地名で表現されている。ラ・ショー・ド・フォンやジュネーブ、パリ、北京は工房やブティック等、初代ピエール-ジャケ・ドローとその息子アンリ・ルイに縁のあった土地だ。本年初登場の女性モデル「レディ 8(LADY 8)」は「エレガンス・パリ(ELEGANCE PARIS)」コレクションに属し、大きな「8の字」を形作るケースがユニークである。
このほかパイオン、エナメルといったジャケ・ドローの歴史を彩る重要な伝統技法を継承する「伝統技術を受け継ぐアトリエ(LES ATELIERS D’ART)」コレクションでは、ミニアチュール・ペインティング(細密画法)でつがいの鶴を美しく描く「プティ・ウール ミニット ホワイト・クレイン(PETITE HEURE MINUTE WHITE CRANE)」や、18Kイエローゴールド・パイオンを散りばめた4種類のダイアルを用意する「プティ・ウール ミニット パイオン(PETITE HEURE MINUTE PAILLONNÉE)」など、芸術技法を極めたアートピースも10モデル以上揃え、「芸術時計」=ジャケ・ドローの存在感を一段と高めていた。