A.ランゲ&ゾーネにとって、2010年は創業165年にあたる記念の年であり、例年になく多くの新作が発表された。
ではジュネーブに参加して今年で10回目となる2011年の新作はおとなしいのか? といえば、数こそ多くないもの、その内容は極めて濃いと思う。
その筆頭が「リヒャルト・ランゲ・トゥールビヨン“プール・ル・メリット”(RICHARD LANGE TOURBILLON “Pour le Mérite”)」。
これは探検家アレクサンダー・フォン・フンボルトが名時計師ザイフェルトに注文したという高精度モデルがベースの意欲作だが、A.ランゲ&ゾーネはこの巨大な模型をブース入り口に掲げ、その機能と完成度の高さをアピールした。
そして、もうひとつの注目作「ツァイトヴェルク・ストライキングタイム(ZEITWERK STRIKING TIME)」は、時刻をデジタル表示する「ランゲ・ツァイトヴェルク」に、定時になると音で時刻を知らせる機能を追加搭載したモデル。通常のストライキング・ウォッチでは、ハンマー等は時計の裏側に置くが、このモデルでは動きのダイナミックさを堪能できるように、文字盤側にハンマーとゴングを設置している点がおもしろい。
また、シンプル・モデルの「サクソニア(SAXONIA)」のコレクションがリニューアルされ、自動巻き1モデル、手巻き1モデル、手巻きの極薄型が1モデル、自動巻きのデュアルタイムが1モデル、合計4つの新モデルが登場した。これでA.ランゲ&ゾーネは、これまでに40機種のムーブメントを発表したが、現行品には28機種を搭載。そのうちの16機種には自社製のヒゲゼンマイが搭載されているといい、これはランゲのたゆみない研究開発の成果である。
誰もが知る定番機構だからこそ、元祖という言葉が格別の魅力になる。こればかりは、いくら勢いがある新興ブランドでであってもなし得ない、老舗ならではの特権である。