2010年で創立3年目という生まれたてホヤホヤの時計メーカーながら、世界中の時計愛好家から熱視線を集めているのが「MCT」。これは「MANUFACTURE CONTEMPORAINE du TEMPS」の略(現代的時計工房とでも訳しておこうか…)である。
2010年からスタートしたGTE(GEBEVA TIME EXHIBITION)に参加しており、創立者はDenis Giguet(デニ・ジゲ)。彼はハリー・ウィンストン(HARRY WINSTON)にてオーパス(Opus)・シリーズのプロダクション部門の責任者を務めた経歴を持ち、当時の盟友であるデザイナー、エリック・ジロー(Eric Giroud)、時計師ジェローム・マーク(Jerome Mracu)と共に、2009年に「セクエンシャル・ワン(Sequential 1)」を発表した。
この時計の特徴は、独特な表示システムにある。センターの分針が、270°に広がる扇型ミニッツディスクの60の位置に到達すると、その瞬間ミニッツディスクが90度分回転し、その切れ目から見える三角柱で作った表示ユニットで現在の時間を示すのだ。
ジャンピングアワーを回転する柱で表現するという「メカデジタル」は、他ブランドからも登場し、ここ数年のトレンド技術だ。しかし創業から3年目という若い会社が作ってしまったというのは、やはり大きな驚きである。
その点をデニ・ジゲ氏にぶつけると、「オーパス(Opus)・シリーズ」では毎年異なる時計師と組んでいましたから、それに比べれば簡単ですよ(笑)。オーパスの仕事を通して、優れたサプライヤーとの関係を築け、しかも製作スピード向上のためのノウハウも学べましたね」と語ってくれた。
景気の冷え込みでどのメーカーも"シンプルで手堅い"モデルへと回帰している。そんな時代だからこそ、このような突飛で楽しい時計に出会えると、時計文化の奥深さを実感できる。買える/買えないは別として…。
取材・文:篠田哲生 Report&Text:Tetsuo Shinoda
写真:堀内僚太郎(Storm) Photos:Ryotaro Horiuchi(Storm)
※表記は2010年3月現在のものになります。