Gressive Premiumパテックとジュルヌ、オーデマ ピゲ……“時計芸術”を極めた作品が上位を占めた2021年第9回「オンリーウォッチ」in ジュネーブ 02
パテックの歴史的逸品のリブート版や
ジュルヌ初の腕時計型オートマタに感嘆の声が
時計愛好家必見の超レアモデル・トップ3
![[左]F.P.ジュルヌの「FFCブルー」、[右]オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク”ジャンボ” エクストラ シン Only Watch / 39ミリ」](/themes/custom/gressive_theme/special/premium/202112-onlywatch/image/stitle02_ONLYWATCH2021.jpg)
[左]今回のオークションでパテック フィリップに続き、第2位の落札価格450万スイスフラン(約5億5,800万円。1スイスフラン=約124円で計算。以下同)を記録したF.P.ジュルヌの「FFCブルー」。ジュルヌ初のオートマタであり、そのアイデアをもたらしたのは映画作家フラシス・フォード・コッポラである。実に独創的かつ遊び心のある「時」表示で、これもひとつの指針式時計といえよう。
[右]オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク”ジャンボ” エクストラ シン Only Watch / 39ミリ」は第3位の落札価格310万スイスフラン(約3億8,440万円)を記録。1972年誕生の「ロイヤル オーク」以来使用され続けたヒストリカル・ムーブメント、Cal.2121の最終搭載モデルである。
1923年製造のヒストリカルピースを
新型ムーブメントで再構築
落札価格第1位
PATEK PHLIPPE(パテック フィリップ)
コンプリケーテッド・デスククロック Ref.27001M-001
落札価格:9,500,000スイスフラン(約11億7,800万円)
※1スイスフラン=約124円で計算。以下同
1923年、高級自動車パッカードで有名な米国の名門起業家ジェームズ・ウォード・パッカードに納品され、現在はジュネーブのパテック フィリップ・ミュージアムに収蔵されるデスククロックに発想を得、新たに製造された「Ref.27001M-001」。ムーブメントは31日間のパワーリザーブ機能を有する新設計・製造のCal.86-135 PEND IRM Q SEで、パーペチュアルカレンダー、ムーンフェイズ、週表示計、パワーリザーブ計等を搭載。925シルバー製のケースにはヴェルメイユ技法(vermeil/925シルバーに溶かしたゴールドを貼る技術)を凝らした装飾が施され、アメリカン・ウォールナットの象嵌やオパーリンダイアルも備わるという、誠に贅を尽くしたコンプリケーテッド・デスククロックである(開蓋し巻き鍵をセットした状態の写真は本特集のトップページに掲載)。
Ref.27001M-001
ケースサイズ:縦164.6×横125.0×高さ76.3mm
ケース素材:925シルバー、ヴェルメイユ装飾、アメリカン・ウォールナット象嵌、イエローゴールドめっきのオパーリンダイアル
ムーブメント:手巻き、Cal.86-135 PEND IRM Q SE、パワーリザーブ31日、パーペチュアルカレンダー、ムーンフェイズ、週表示計、パワーリザーブ計
仕様:デスククロック
F.F.コッポラの発案で誕生した
F.P.ジュルヌ初のオートマタ・ウォッチ
落札価格第2位
F.P.JOURNE(F.P.ジュルヌ)
FFC ブルー
落札価格:4,500,000スイスフラン(約5億5,800万円)
初の自動巻きムーブメントCal.1300発表20周年を記念し、新たに開発されたフランソワ-ポール・ジュルヌ初のオートマタ・ウォッチ「FFC ブルー」。発想は2012年、映画作家のフランシス・フォード・コッポラとの会食時にコッポラの発言から生まれた。「手を使って時間を伝えることができるか?」との彼の問い掛けに対し、2年以上の熟考と7年間の開発期間を経て誕生。ポイントはダイアル上の青銅色の手から瞬時に出現と格納を繰り返す、5本の“モバイルフィンガー”による“時”の表示方法。“手”のモチーフは近代外科の発展に重要な功績を残した、仏王室公式外科医アンブロワーズ・パレ(1509~1590)製作の機械式の手から着想を得た。なお“分”はダイアル外周部の回転式ディスクで表示。ジャンピングアワーのひとつの表示方法だが、実際に東京のプレビュー時に作動させたところ、モバイルフィンガーの作動速度の速さに驚かされた。ジュルヌ氏は実に奇想天外な発想力をお持ちである。
Ref.FFC
ケース径:42.0mm
ケース厚:10.7mm
ケース素材:タンタル(「オンリーウォッチ」のために特別製作)
ムーブメント:自動巻き、Cal.FFC1300.3(ローズゴールド製)、396部品、デジタルジャンピングアワー、回転式分表示、オートマタ
仕様:時・分表示、22K5Nゴールド製ローターにアンブロワーズ・パレとフランシス・フォード・コッポラの名前を刻印
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22K5Nゴールド製ローターには仏王室公式外科医であり近代外科の発展に貢献したアンブロワーズ・パレと、発案者フランシス・フォード・コッポラの名前を刻印。なお“時”を表示する “指”の位置はF.F.コッポラがスケッチ。モデル名“FFC ブルー”の“FFC”とはフランシス・フォード・コッポラのことである。
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モバイルフィンガーによる“時”表示を解説したイラスト。欧米人が片手で数表示を行う仕草に倣っているが、5本の指は10時の段階ですべて手の内に格納され、時刻に応じて必要な本数をイラストのとおりに直線上に出現させ、同時に不要な指は格納される。例えば5時から6時へ変わる際は親指以外のすべての指は瞬時に格納、これら一連の動きの速さには驚かされた。
1972年誕生のヒストリカル・ムーブメント
キャリバー2121最終搭載モデル
落札価格第3位
AUDEMARS PIGUET(オーデマ ピゲ)
ロイヤル オーク”ジャンボ” エクストラ シン Only Watch
落札価格:3,100,000スイスフラン(約3億8,440万円)
2022年に誕生50周年を迎えるロイヤル オーク。その1972年登場時に初導入されたのが、センターローターと日付表示を採用した当時最薄の自動巻きムーブメント、Cal.2121。今回「オンリーウォッチ」のために用意されたRef.15202「ロイヤル オーク”ジャンボ” エクストラ シン Only Watch」は、当ムーブメント搭載の最終モデルとなる。Ref.15202とCal.2121は共に2021年末で正式に終了し、翌2022年からは次世代ムーブメントへと世代交代、よって極めて希少価値の高い当モデルに世界が注目したのも当然。外装部ではプチタペストリーダイアルに新色のグレーを採用したものの、ロイヤル オークの5402A初期モデルで導入されたオリジナルの書体やAPモノグラムは継承されている。
Ref.15202XT.GG.1240XT.99
ケース径:39.0mm
ケース厚:8.1mm
ケース素材:チタン
防水性:5気圧防水
ムーブメント:自動巻き、Cal.2121、19,800振動/時、247部品、36石、パワーリザーブ約40時間
仕様:時・分、日付表示
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今回初の試みとして、パラジウム合金の金属ガラスをベゼルやサファイアケースバックのフレーム、ブレスレットのスタッズ等に使用。この金属ガラスは高速急冷により高硬度ガラスと類似した性質を持ち強靭性や耐腐食性に優れる。ケースバックのフレームには“UNIQUE PIECE”と“Titane”、“Pd500”(パラジウム含有率50%以上の証明)が刻印。
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今回のオークションピースが搭載最終モデルとなるCal.2121は、直径28.40×厚さ3.05mmという1970年代当初では最薄の自動巻きムーブメント。1875年の創業以来、懐中及び腕時計の薄型小型化の先駆者であったオーデマ ピゲの歴史を証明するキャリバーのひとつだ。
取材協力:クリスティーズ ジャパン / Special thanks to:Christie's Japan