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Gressive Premium グレッシブ キネマ倶楽部 第1回 英国MI6秘密諜報部員007 Part.3

ネイビー・ブレザーの起源と
ギーブス&ホークスの英国海軍ブレザー

ネイビー・ブレザーの起源とギーブス&ホークスの英国海軍ブレザー

  英国の王立海軍中佐であるボンドの着用は当然として、今やネイビー・ブレザーは紳士用上着の代名詞である。その原点は甲板員が着る「リーファージャケット」(reefer jacket)であった。


「リーファー」とは“帆を巻き取る人”という意味で、海軍においては甲板で働く水兵を指す。この水兵が着用した上着が、前身頃の合わせがダブルのリーファー・ジャケット。やがてこのリーファー・ジャケットが変化し、士官のための制服(つまりダブルのブレザー・コート)や水兵用のピーコートとなった。


  ではなぜダブルかと言えば、風の向きに合わせて右前でも左前でも自在に打ち合わせを変えることができるから。リーファー・ジャケットのはじまりは、乗馬の際に着用したダブルのフロックコートと言われているが、ダブル前は当初、乗馬のために生まれた仕様だったようだ。事実、古い時代の海軍用ブレザーやピーコートでは、両方の前身頃にボタンとボタンホールを備え、随時、打ち合わせを変えられた。ただし、現在では省略される場合がほとんだが。


  このブレザーにはもうひとつのルーツがある。それが学生が着用した「スクール・ジャケット」、あるいはボートやクリケットなどのスポーツクラブで着用された「レガッタ・ジャケット(クラブ・ジャケット)」などと呼ばれるシングル合わせの上着である。


  これらの多くはスクールカラー(クラブ・カラー)に従ったストライプ生地が使われ、無地の場合でも、その色のトリミング(縁取り)が襟に施されていた。当然、このようなジャケットを着るのは、学生やクラブのメンバーに限られた。


  やがて、海軍士官用のダブルのブレザーと学生用のシングルのブレザーが融合し、ネイビー・ブルーの生地に金のメタルボタンというスタイルが完成。これが現在のネイビー・ブレザーとして定着したのである。


  このようなブレザーの二大潮流は、ダブル=英国、シングル=米国と大別することができるだろう。あるいはダブルは大人向け、シングルは学生やスポーツマン向けと分類することもできる。これらブレザーのコーディネイトは、著名人や映画スターによる着こなしからも検証できる。


  たとえば、かのウィンザー公(エドワード8世)がダブルのブレザーを着たスナップがある。無論、英国王時代は海軍制服であるネイビー・ブレザーを着用したショットがあるが、退位後のウィンザー公はブレザーにホワイトのパンツを合わせ、所属連隊を表すレジメンタル・タイではなく、黒×白のシェパード・チェックのタイを締めている。ここに彼の卓越したファッション・センスを見ることができる。


  さらに典型的な英国流ネイビー・ブレザーの着こなしは『007 黄金銃を持つ男(The Man with the Golden Gun)』(1974年)でのロジャー・ムーアがある。


  先に紹介したようにムーアが海軍士官としてのブレザー姿を見せたのは『007 私を愛したスパイ(The Spy Who Loved Me)』(1977年)だけだったが、『007 黄金銃を持つ男』でも一般的なブレザー・スタイルを披露した。さらに彼は晩年のプライベート・ショットでもダブルのブレザーを着用していることが多く、このスタイルをかなり気に入っていたことがわかる。


  また、一作のみのボンド役ゆえ知名度は低いものの、派手なアクション(当時としては)でコアなファンを持つ007シリーズ第6作『女王陛下の007(On Her Majesty's Secret Service)』(1969年)でのジョージ・レーゼンビーも、輝きを抑えたブラスの6つボタン・ブレザーにミディアムグレーのトラウザーズを合わせたシンプルでクリーンな着こなしを見せている。


  その他、英国流ダブル・ブレザーの着こなしと言えば、映画では『ナイル殺人事件』(1978年)におけるデヴィッド・ニーブン、英国王室では、英国女王エリザベス2世の従兄弟であるマイケル・オブ・ケント王子や、息子のチャールズ皇太子(ウェールズ公)たちの着こなしも実にスタイリッシュ。


  海軍の制服としてのダブル・ブレザーを着こなすのは我々、一般人には難しいが、ケント王子やウェールズ公の着こなしは大いに参考にしたいところだ。

構成・文:田中克幸、名畑政治 / Composition & Text:Katsuyuki Tanaka、Masaharu Nabata
写真:江藤義典 / Photos:Yoshinori Eto


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