CZAPEK新型コロナ禍3年間での大躍進を決めたチャペック最強のゲームチェンジャー 03

Antarctique Rattrapante Silver Gray
アンタークティック・ラトラパント シルバー・グレイ

2021年8月発表の「アンタークティック・ラトラパント シルバー・グレイ」は、チャペック“初のスプリットセコンド(ラトラパント)・クロノグラフ”で、かつ“初のモノプッシャークロノグラフ”、さらに“初のオープンワーク・ダイアル”という初尽くしのモデル。当初よりデ・ロックモーレル氏は“見せるクロノグラフ”を考えていたようで、そのためクロノード社との共同開発による自動巻きCal.SXH6は、コラムホイール等スプリットセコンド・モジュールをダイアル側に配置。当モデルの原案は、本文にもあるように2012年のヴァルジュー7733を用いて少数限定生産したクロノグラフだ。これはチャペック復興プロジェクトの資金調達方法の一環だった。

ケース径：42.5mm
ケース厚：10.5mm
ケース素材：ステンレススティール
防水性：120m
ストラップ：リンクがモダンな「C」を描くステンレススティール製ブレスレット、独自の「イージー・リリース」システム、カーフレザーまたはラバー・ストラップが付属
ムーブメント：自動巻き、Cal.SXH6、約60時間パワーリザーブ、毎時28,800振動、49石
仕様：時・分・秒表示、ダイアル側に配置されたオープンワークのスプリットセコンド・クロノグラフ(世界初)、オープンワーク・ダイアル、シースルーケースバック
限定：77本
※完売品

2012年、チャペック再興プロジェクト用資金調達のため、ごく少数を製造・販売したヴィンテージのヴァルジュー7733搭載クロノグラフ…、これが「ダイアル側にメカニズムが露出したクロノグラフ」というアイデアにつながる。当初デ・ロックモーレル氏は普通のクロノグラフを考えていたものの、より高度なモノプッシャー・スプリットセコンド・クロノグラフへとアイデアは発展。このような経緯でクロノード社との共同開発により完成したのが「アンタークティック・ラトラパント シルバー・グレイ」搭載の自動巻きCal.SXH6だ。資金調達プロジェクトから約9年、最初のアイデアから約6年を必要としたチャペック6番目のムーブメントである。写真とスケッチを見ると、ダイアル側に設置されたスプリットセコンド・クロノグラフモジュールを確認できる。6時位置から12時方向に順番に説明すると、まず「CZAPEK」と刻印されたパーツがスプリットセコンド・クランプ、そのすぐ上にはスプリットセコンドのコラムホイール、さらに上の小ぶりのギアがサテライト・ミニットトレイン(輪列)、時計中央部の3本足のパーツがスプリットセコンド・メカニズムを支えるトライポット・ブリッジになる。そして12時位置にはクロノグラフ用コラムホイールが設置。サテライト・ミニットトレインは特許取得済み、スプリットセコンドのメカニズムは特許出願中(2021年7月段階)。

2021年の第9回「オンリーウォッチ」に出品された「アンタークティック・ラトラパント“サンライズ”『新しい夜明けを願って』」。この時の公式テーマカラーであるオレンジを採り入れたモデル。製造はCVD“NanoDeCo”技術のエキスパートであるラ・ショー・ド・フォンのポジティブ・コーティング社(Positive Coating SA)が担当、ムーブメントはクロノード社である(※CVD＝Chemical Vapor Deposition：化学蒸着。化学反応により皮膜を成形)。

2020年の頃を思い浮かべながらデ・ロックモーレル氏は言う「2月にスイスはソフトなロックダウンに入りました。しかし我々は仕事を中止することはなく、リモートワークを使用しながら自宅のアトリエで事業を継続し、なんとか5月には『アンタークティック』を発表することができました」。40日間での完売を目指した世界限定99本の「アンタークティック テール・アデリー」は、結局それより23日も早い17日間で完売したという。

2022年6月に完成、メディアに発表されたラ・ショー・ド・フォンの新工房。それまでは年間180本ほどの生産量だったが、急増するオーダーに対応するため計画された。「アンタークティック」というゲームチャンジャーの誕生に加え、新型コロナ禍でも立ち止まらず前進することに決めたチャペックは、この新工房で第二の黄金時代を迎えることになる。今後の予定生産量は「あまり増やしたくはない」と言いつつも「年間3000～4000本ぐらいが妥当」とデ・ロックモーレル氏は述べる。

Antarctique Passage de Drake Salmon S
アンタークティック パサージュ・ドゥ・ドレーク サーモンS

チャペックを巡り緊密なコミュニティを形成するコレクター、シェアホルダー、パートナーたちのコアなファン層をチャペックでは「レアな人々」と呼ぶ。そんな彼らの要望により2022年3月に発表された“エレガント・スリム”のモデルが「アンタークティック S」コレクション。ケース径はオリジナルの40.5mmから2mmサイズダウンした38.5mm。こちらのモデルは、チャペックのシグネチャーである“永遠へと続く階段＝Stairway to Eternity”をイメージし、エングレーブされた立体的なトラペゾイド(台形)パターンが特徴のフランケ・サーモンダイアル。光の反射により柔らかなピーチトーンから濃厚なサーモンへと色合いが変化する。搭載ムーブメントは2020年発表の「アンタークティック」コレクションに採用された、初の自社製ムーブメントの自動巻きCal.SXH5。

ケース径：38.5mm
ケース素材：ステンレススティール
防水性：120m
ストラップ：リンクがモダンな「C」を描くステンレススティール製ブレスレット、独自の「イージー・リリース」システムマイクロ・アジャストメント機構、カーフレザーまたはラバー・ストラップが付属
ムーブメント：自動巻き、Cal.SXH5(完全自社製)、約56時間パワーリザーブ、毎時28,800振動(4Hz)、28石
仕様：時・分・秒(センターセコンド)・日付表示、公式に登録済み「Stairway to Eternity(永遠への階段)」の紋様が刻印されたフランケ・ダイアル、ガルバニック処理による「サーモン」カラー
価格：4,290,000円(税込)

「アンタークティック」の成功後、“よりエレガントで、スリムな手首でも快適なモデル”が要望されるのは当然の成り行きだった、とデ・ロックモーレル氏は言う。「単にケース径を小さくするということだけではありませんでした。オリジナルに負けないくらい素晴らしいことをしなければなりません」(2022年の広報資料より)

Antarctique Rattrapante Ice Blue
アンタークティック・ラトラパント アイスブルー

2022年3月発表モデル。前年3月発表の自社初のモノプッシャー・スプリットセコンド・クロノグラフ「アンタークティック・ラトラパント シルバー・グレイ」のアイスブルー・バージョン。元々“Antarctique＝南極”という意味から「ブルーというカラーは、南極、青い海、青い氷山などコレクション全体のテーマのようなものです」とデ・ロックモーレル氏は述べる(2022年の広報資料より)。そのブルーは外周リングと4-5時位置の30分積算計、7-8時位置のスモールセコンドの各外周リングに効果的に表現。これは蒸着プロセスによる金属酸化物で処理されたサファイアクリスタルリングによって生み出される。自社ムーブメントの自動巻きCal.SXH6搭載。

ケース径：42.5mm
ケース厚: 10.5mm(グラスボックスを含むと15.3mm)
ケース素材：ステンレススティール
防水性：120m
ストラップ：リンクがモダンな「C」を描くステンレススティール製ブレスレット独自の「イージー・リリース」システム、マイクロ・アジャストメント機構、カーフレザーまたはラバー・ストラップが付属
ムーブメント：自動巻き、Cal.SXH6、約60時間パワーリザーブ、毎時28,800振動(4Hz)、49石
仕様：時・分表示、30分積算カウンター、スモールセコンド(7時30分位置)、スプリット・セコンドモノプッシャー・クロノグラフ、ダイアル側に配置されたオープンワークのスプリット・セコンド機構(世界初)、PVD処理によるブルー・フュメ仕上げのサファイア・ダイアル、ミニットリングとサブダイアルリング
限定：99本
※完売品