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Grand Seiko日本屈指の本格腕時計組立工房『グランドセイコースタジオ 雫石』現地レポート 03

匠の技が支える本格腕時計組立工房
『雫石高級時計工房』の発足

時計師ひとりひとりに個別の机とスペースが与えられた組み立て工房。この時から岩手県の伝統的家具「岩谷堂箪笥」による特別製の机が使われていた。

時計師ひとりひとりに個別の机とスペースが与えられた組み立て工房。この時から岩手県の伝統的家具「岩谷堂箪笥」による特別製の机が使われていた。


 岩手県において時計のマニュファクチュールとして一貫生産体制を整備した盛岡セイコーは2004年9月、雫石の工場内に高級機械式時計だけを製造する特別な工房を設置した。それがつまり『雫石高級時計工房』である。

 その背景には、ご存知のようにグランドセイコー(GS)に象徴される、セイコーにおける機械式時計の復活と再生の物語があった。

 1980年代前半、すでに機械式GSは生産を終了していたが、1988年にクオーツ・ムーブメントの搭載でGSが復活すると「機械式でもGS復活を!」との声が社の内外で高まり、同時期にセイコーインスツルにおいて機械式GSの復活プロジェクトが始動した。

 これを受けて1991年、千葉県の大野事業所でセイコー110周年モデルとして手巻き極薄ムーブメント「Cal.6810」を搭載するモデルが生産され、1998年にはついに機械式自動巻きを搭載する新たなGSの心臓部として「Cal. 9S55」が誕生した。

 この部門は段階的な技術の伝搬を経て2002年に盛岡セイコーに移転。さらにこれをベースとして、盛岡セイコー内に『雫石高級時計工房』が発足したのだ。

 この時、『雫石高級時計工房』の開設と発展に貢献したのが、セイコーが創業以来、連綿と継承し続けてきた“匠の技”であった。

 工房の発足当時から、東京および千葉から盛岡に赴任したベテラン技術者の指導のもと、若い技術者への技術継承が行われていたが、2004年からは独自の人材育成制度である「マイスター認定制度」が運用されるようになった。そして2006年には岩手県による「技能評価認定制度」に基づいて機械式時計修理の技能を評価する「いわて機械時計士技能評価」も始まり、次世代の匠の育成に取り組んでいる。


機械式GSの製造を担う
『グランドセイコースタジオ 雫石』開設

木をふんだんに用い、自然との共生を具現化した『グランドセイコースタジオ 雫石』の外観。

木をふんだんに用い、自然との共生を具現化した『グランドセイコースタジオ 雫石』の外観。昼の青空の下の姿も美しいが、夕暮れ時の濃いブルーの空を背景にライトアップされたスタジオは、また格別の美しさである。

 2020年、盛岡セイコーは親会社であるセイコーインスツルのウオッチ事業の移管・統合により、セイコーウオッチの子会社となった。それと同時に、日本だけでなく世界的に高まる高級機械式時計の要求に答えるべく、GSの機械式モデルを製造する新たな施設として『グランドセイコースタジオ 雫石』が設立された。

 奇しくもこの年はGSの誕生60年であり、盛岡セイコーの創立50年。その節目の年に『グランドセイコースタジオ 雫石』が設立された。

 スタジオの設計は、2019年に完成した新しい国立競技場の設計にも携わった建築家、隈研吾氏。岩手県のシンボルともいえる岩手山に向かって屋根を大きく跳ね上げ、周囲の自然環境を取り込むよう設計された、この大型の木造建築は、グランドセイコーの哲学である「THE NATURE OF TIME」を具現化したものだという。

 この工房の建築面積は1,858.45平方メートル、延床面積は2,095.01平方メートル。機械式GSの組み立てや調整を行う工房スペースに加え、グランドセイコーの歴史や社会的な背景、また機械式GSの部品製造について知ることができる広い展示スペース、そして岩手山を望む2階にはラウンジとスタジオのオリジナルモデルを販売するショップコーナーが併設され、自然との共生から生み出されるGSのもの作りを体感できる施設となっている。

 なお、『グランドセイコースタジオ 雫石』は完全予約制にて一般公開される予定だが、2022年3月現在、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によりすべての見学が中止されている。今後、見学・予約の再開が決まり次第、GS公式ウェブサイトおよび、下記の見学予約サイトにおいて案内が掲載されるので、ご興味ある方はアクセスしていただきたい。


『グランドセイコースタジオ 雫石』見学予約サイト
gs-studio-shizukuishi.resv.jp







  • 取材・文/Report&text

    名畑 政治 / Masaharu Nabata
    Gressive編集長。1959年、東京都生まれ。時計、カメラ、ギター、ファッションなど膨大な収集品をベースに、その世界を探求。1994年から毎年、スイス時計フェア取材を継続中。

  • 写真/Photos

    堀内 僚太郎 / Ryotaro Horiuchi
    フォトグラファー。1969年、東京都生まれ。1997年に独立。広告、ファッション、CDジャケットやポートレイト等で活動。2006年からスイス時計フェアの撮影を続け、2009年からGressiveに参加。2018年にH2Fotoを立ち上げ写真講師としても活動。

INFORMATION

グランドセイコー(Grand Seiko)についてのお問合せは・・・

セイコーウオッチ株式会社
〒104-8118 東京都中央区銀座1-26-1
TEL: 0120-061-012


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