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KAMINE × GREUBEL FORSEYグルーベル フォルセイ独占販売契約の裏に隠されたスイス時計文化への憧憬

カミネ×グルーベル フォルセイ。必然の出会い。

  神戸の老舗時計宝飾専門店「カミネ」が、グルーベル フォルセイの独占販売契約を結んだ。そのきっかけとなったのは、古き良き時計技術の継承を目的とした「ガルド・タン プロジェクト」だった。このプロジェクトはフィリップ・デュフォーやグルーベル フォルセイが財団を作り、時計師に時計製造の技術を伝承していくというもので、カミネもそのプロジェクトに参画していたのだ。


「ガルド・タン プロジェクト」から生まれた時計は、2017年に納品されました。私はこれまでに数々の銘品と呼ばれる時計を扱ってきましたが、これほど心を揺さぶられた時計は多くはありませんでした」と語るのは上根亨。神戸の地で110年以上に渡って時計を販売し、時計文化を育てて来た名門「カミネ」の代表取締役社長である。


  そしてその時の感動がきっかけとなり、グルーベル・フォルセイと販売契約を結ぶことになる。

「今グルーベル フォルセイという時計を“時代が求めている”のです。数年前までは1億円近い時計はほとんど存在しなかったし、そういった時計を手にすることに対して愛好家の中にも心理的抵抗がありました。しかしリシャール・ミルに代表される超高価格帯モデルの登場によって、その壁は取り壊された。それだけの価値があれば、どれだけ高額であっても時計は購入対象となる。すなわち“超越の時代”に入ったのです」。長年に渡って高級時計を販売してきた上根亨だからこそ、時代の変化に気が付いたのかもしれない。

  この話を聞き、グルーベル フォルセイの創業者であり、時計師でもあるステファン・フォルセイも口を開く。「カミネの時計に対する情熱や時計文化を伝えたいというパッションは、世界的にも有名です。カミネというディーラーと組むことで、日本のユーザーに近づくことができるのは、とても嬉しいことです」。本物の時計愛好家に、本物の超絶時計を知ってもらう。そのきっかけを時計専門店カミネが作るのだ。

「私は先日、スイスでフィリップ・デュフォーさんの誕生日パーティーに招かれまして、そこで出会った世界的時計コレクターもグルーベル フォルセイに注目していました。3D構造のムーブメントに代表される、最高の時計設計能力を持っていますが、ムーブメントの仕上げ、パーツのハンドフィニッシュもずば抜けている。まさに驚異的なテクノロジーの結晶のような時計なのです(上根)」。いつの時代も最高峰の時計は、人々を感動させる力があるのだ。

「時計コレクターから評価されることは名誉ですね。彼らは目が肥えており、要求レベルも高いですから。他にはないものを作りたいという私の信念が評価されることは嬉しいことです。我々の強みは“イノベーション”であり、精度や信頼性、美しい仕上げにこだわっているので、生産本数を増やすことはできませんが…(ステファン・フォルセイ)」


  ちなみに生産本数は年間約100本というから、購入するどころか、店頭で目にすることさえも難しい。しかしそれも含めてグルーベル フォルセイの稀少な個性なのだ。

取材・文:篠田哲生 / Text:Tetsuo Shinoda
写真:江藤義典 / Photos:Yoshinori Eto