PARMIGIANI FLEURIER×KAMINE 「均整の取れた時計のデザインは、 すべて黄金律から生まれるのです」
MICHEL PARMIGIANI / ミシェル・パルミジャーニ
1950年、スイス・ニューシャテル州クヴェ（Couvet）生まれ。1976年、古典名作時計の修復工房を設立。1996年、サンド・ファミリー財団の資本参加により『パルミジャーニ・フルリエ』を設立し、初のコレクションを発表。以後、多くの傑作時計を発表し、高級複雑時計ブランドとしての地位を確立した。
“神の手”を持つと言われる時計師にして『パルミジャーニ・フルリエ（PARMIGIANI FLEURIER）』創業者のミシェル・パルミジャーニ氏が2016年6月に来日。旧知の仲である神戸の名店カミネ社主の上根亨氏を久々に訪ね、ひとときの時計談義を楽しんだ。
パルミジャーニ：私が最後にカミネさんを訪ねたのは2009年。その印象は今も同じです。この店は上根さんが時計の美と品質を的確にプロモートしてくださる場所であり、雰囲気がすべてを物語っていますね。
上根：私はミシェルさんに最初に会ったとき、無口で堅物（かたぶつ）、そして偏屈にも思えたのですが、話してみると人柄の純粋さに驚きました。 それは今も変わりません。
パルミジャーニ：私は上根さんと会うと、心底、この仕事がお好きなことがわかりますし、それはお店にとって素晴らしいことです。同時に私たちの製品を、しっかり理解して販売してくださる人が必要だということを思い知らされます。 実は、ブランドの全体を把握して、どこが素晴らしいのかを説明できる人は、なかなかいないのです。だから上根さんのような方は時計界にとって貴重な財産ですよ。
上根：私がミシェルさんの時計に持つ印象は、非常に上質で気品があるもの。時計とは製造会社だけでなく、製作を指揮する人の個性が芸術作品と同じように、にじみ出るものです。ですから『パルミジャーニ・フルリエ』の時計には、ミシェルさんのこれまでの活動、つまり古典時計の修復や新しいムーブメントの開発にかける情熱が反映され、しっかりとした個性が宿っていると思います。
パルミジャーニ：ありがとうございます。私も一貫性をもって時計師の仕事をやってきました。それは決してあらゆる方向に向けたものではなく、ブランドの方向性を確立するため、ひとつの線に導かれて常に最高を求めてきたのです。その結果、均整のとれた美しい時計ができたのなら幸いです。
上根：どうすれば、あのような均整の取れた時計ができるのですか？
パルミジャーニ：そのひとつの理由は黄金律です。上根さんが保管するゲストブックのスケッチも時計のフォルムの均衡を表しています。
上根：以前、ある高級時計について勉強をした際、その基盤が『フィボナッチの定理』だと知りました。つまり黄金律で、ミシェルさんと7年前、ここで交わした話とまったく同じと気づいたのです。この理論は、人に安心感を感じさせるフォルムの基礎的な理論ですから、すべてのモノ作りに必要かつ大事なもの。それが最近、よくわかります。
パルミジャーニ：その通りです。私自身、1969年にそれを知りました。人間の美意識は、数学的に説明できると理解したのです。
自然界の事象も、この定理で説明できます。たとえば雪の結晶にはさまざまな形があって神秘的ですが、これも説明できます。すべての光が生まれるとき、そこに黄金律が宿っています。
もし、他の星の知的生命体とコミュニケーションできるなら、おそらく黄金律しかないでしょう。それほど、この論理は普遍的です。
上根：時計はたくさんありますが、黄金律からはずれたものも少なくありません。これに従ったものと従っていないものを比べると、違いがよくわかりますね。
パルミジャーニ：ただ、この定理は人間の感性に根付いているものなので、たとえそれを知らなくても、どういうものが美しいかを考えると自然にわき出てくるものです。しかし、黄金律を使えば、多くの人が気に入る形に、すぐ近づけることになります。
上根：一方で日本の文化には“美は乱調にあり”という言葉があって、定理に属さないものが好まれることもあります。均整のとれたものと、とれてないものの両極端があるんですね。ところが時計の中には、そのどちらにも属さない中途半端なものがたくさんあり、それが問題なんですね。
パルミジャーニ：確かに、おっしゃるとおりです。
「私は上根さんが、この仕事を愛していることがよくわかります。同時に私たちの製品を、しっかりと理解して販売してくださる人が必要ということを思い知らされます」（パルミジャーニさん）「ミシェルさんの時計の印象は非常に上質で気品があること。時計とは芸術作品と同じで製作を指揮する個人の色彩が、にじみ出てくるものだと思います」（上根さん）
今回の訪問でもゲストブックにスケッチするミシェルさん。黄金律で縦横比率が決められているというクレジットカードを定規代わりに、黄金律を説明するスケッチを描き込んだ。
名店カミネが認めた『パルミジャーニ・フルリエ』の真価
取材・文：名畑政治 / Report&Text：Masaharu Nabata
写真：奥田高文 / Photo：Takafumi Okuda
協力：パルミジャーニ・フルリエ・ジャパン、(株)カミネ / Special thanks to：PARMIGIANI FLEURIER JAPAN、Kamine Co.
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営業時間 10:30～19:30
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