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Swiss Watch Confidential Vol.24  複雑時計やハイテク素材にもコストパフォーマンスの波が

複雑時計やハイテク素材にもコストパフォーマンスの波が

 ロレックスがスイス時計産業の現状をどれほど意識したかは定かでないにしても、新しい「デイトナ」のリリースは、まさに絶好のタイミングだったと思えてならない。スティールケースとセラクロムベゼルを組み合わせた外装、完全自社製ムーブメント、そして118万円(税別)という価格を併せ持つこのモデルは、高品質と高性能を極める理想的なクロノグラフである。従来からの愛好者を魅了するだけでなく、新しい時計ファンの獲得にも役立ちそうだ。


  100万円台前半のプライスレンジで驚異的なコストパフォーマンスを実現した新作にフレデリック・コンスタントの「スリムライン パーペチュアルカレンダー マニュファクチュール」がある。これもまたスティール・ケースを使い、自社製ムーブメントをベースにして新開発された永久カレンダーである。「本格的な機械式時計を手頃な価格で提供する」という方針は、ワールドタイムに続くこの永久カレンダーにもよく表れている。


  100万円台後半に目を向けると、ここに最強の複雑時計が控えている。タグ・ホイヤーの「タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー02T」だ。フライングトゥールビヨンとクロノグラフを組み込んだ最新の自社製スケルトン・ムーブメントを搭載し、外装はチタン、価格は167万5000(税別)という超破格値だ。複雑時計の分野におけるコストパフォーマンスでは、まずこのモデルにかなうものは他に皆無である。一けた違う価格によって、これまで神格化されてきたトゥールビヨンが、まさに普段使いの時計へと変わる日がやってきたという感じである。


  さらに、ハイテク素材を駆使したモデルの中でやはりコストパフォーマンスが際立つ新作は、ブルガリの「ディアゴノ マグネシウム クロノグラフ」だ。マグネシウム、ピーク( PEEK=PolyEther Ether Ketone、ポリエーテルエーテルケトン。耐熱性や耐疲労性などに優れた高機能性樹脂)、セラミック、モーターラック(Motorlac。極端な温度変化や素材の膨張に耐える独自開発の特殊塗料)などを使い、斬新なスタイリングを施したこのモデルの価格は58万円(税別)と手が届きやすく、これもまた、ハイテク素材=高価というイメージを覆す。


  今回取り上げたのは、バーゼルワールドの新作のごく一部にすぎないが、ユーザー目線に立った価格戦略がスイス時計産業の今後に一石を投じることになるのは間違いなさそうだ。そう考えると、危機こそ最大のチャンスと言われるように、ポジティブ思考でより良い方向への転換を図る好機が到来したとも言えそうだ。



構成・文:菅原 茂 / Composition&Text:Shigeru Sugawara


Swiss Watch Confidential backnumber | スイス時計事情バックナンバー


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