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Swiss Watch Confidential Vol.24  自社ムーブメントを搭載する高級スティール・モデル

自社ムーブメントを搭載する高級スティール・モデル
  •  まず注目したのは、ステンレススティール・モデルの拡充である。もとよりステンレススティール製の腕時計はエントリーからミドルレンジに豊富に存在し、コストパフォーマンスに優れるモデルも少なくないが、今年はここに新しい傾向、いやもっと言えば異変が見られるのだ。


      まず、ステンレススティールのケースに独自の自社製ムーブメントを搭載する新作である。スティールで価格を抑えつつ、ムーブメントで高級機械式時計の品格を表現するというやりかただ。今までの発想ならゴールドのような貴金属ケースを採用し、素材自体も高級時計の「証し」とするのが正攻法だが、近づきやすい価格のスティール・モデルを作り、ユーザーとの距離を縮めようという試みだろう。


      こうした傾向の新作には、ショパールの「L.U.C XPS 1860」、カール F.ブヘラの「マネロ ペリフェラル」、グラスヒュッテ・オリジナルの「セネタ・エクセレンス」、モリッツ・グロスマン「テフヌート・ピュア」などがある。また、ジラール・ペルゴの「1966」コレクションでもスティール・モデルが充実した。


      いずれも、ブランドのアイコン的なシンプルウォッチだが、スティールであっても高級感が十分に備わり、言われなければホワイトゴールドかプラチナかと思われるほどだ。肝心の価格も、およそ100万円前後と思い切った設定である。「驚くほどのロープライス」とまではいかないにしても、以前よりハードルが低くなったのは事実。ハイレンジがアッパーミドルレンジあたりまで下がってきたかのような印象を受ける。


      繰り返すが、重要なポイントは、これらのモデルに搭載されているのが自社開発製造のマニュファクチュール・ムーブメントであることだ。プライスレンジを意識しながらも、ムーブメントのグレードをあくまでも保持し、機械式高級時計として実質が備わっている。新開発のハイスペック・ムーブメントを惜しげもなくスティール・モデルに導入したグラスヒュッテ・オリジナルやカール F. ブヘラの新作はとりわけ秀逸である。



  • 構成・文:菅原 茂 / Composition&Text:Shigeru Sugawara


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