オリエントスター誕生75周年記念のフラッグシップモデルであり、近年のコレクションの中でも抜きん出た快作に位置付けられるのが「オリエントスタースケルトン」である。
本作の技術的ハイライトであり、ムーブメントの複雑な部品構成をデザインエレメントとして活かすスケルトンは、オリエントスターを代表するクリエイションとして、長年、時計愛好家からの高い支持を得てきた。その嚆矢となったのが、1991年に発表されたオリエント「モンビジュ」だ。精緻な内部構造を可視化させつつ、エレガントな佇まいに仕立て上げたこのモデルは、機械式時計の“輝ける星”を目指して誕生したオリエントスターの新たな魅力を示し、その後のスケルトンウォッチの系譜につながる重要な転機となった。
やがて1998年には、オリエントスターから初のスケルトンモデルが登場。以後、オリエントスターではスケルトンウォッチをコンスタントに展開してきた。特に近年は、現代的なデザインを取り入れたモデルも目立つようになっているが、最新作のオリエントスタースケルトンでは新規開発のムーブメントを搭載したことで、モダンスケルトンのニュアンスを色濃くした、全く新しいデザインを打ち出している。
そのデザインテーマは「時空間」。オリエントスターを展開するエプソンでは、機械式時計が表現する“時間”の本質をより大きな視点で捉えたいと考え、このテーマを設定したという。時空間を「過去から未来へと続く時間の流れと、その中に広がる空間が織りなす見えない構造」と解釈し、本作では、時の軌跡を波紋のように広がる円環として表現。さらに、枯山水で描かれる波紋と天体の軌道とを重ね合わせて表現することで、日本的な美意識が宿る、従来のオリエントスターにはないスケルトンデザインを具現化させた。

本作の“顔”となる裏物押さえは、枯山水の波紋や天体の軌道を想起させる円環の組み合わせでデザイン。そこには、手作業で墨入れされたラインや、控えめながらも立体感を強調する面取りなど、丁寧な仕上げがうかがえる。また、時分針は青焼きが施されているが、肉抜きされたことによって熱伝導に差が生まれてしまうため、発色を均一化させることが難しかったという。
当然のことながら、ムーブメントを新規開発するにあたっては、デザインの試行錯誤が重ねられた。限られたサイズの中で時空間の広がりを表現するべく、エプソンでは複数の円環パーツの重なり方や空間の取り方を繰り返しシミュレーション。パーツのわずかな高低差や余白のバランスを何度も検討することで、時空間が無限に広がるようなレイアウトを追求したという。
加えてこの新ムーブメントでは、部品の配置に合わせて地板や受けを肉抜きするだけではなく、随所に手の込んだ意匠も施された。とりわけ目を引くのが、3層の多重サークルで構成された裏物押さえで、手作業による墨入れで星の軌道を想起させるラインを描いたり、ダイヤモンドカットによる面取りを施したりすることで、時空間をモダンかつ印象的なデザインで表現している。また、表面にはヘアラインが施されているが、部品の強度(厚み)によってはヘアラインがつきにくい箇所が発生してしまう。そのため本作では、自社で製作した特殊な治具を用いつつ、作業時の“手に伝わる感覚”を研ぎ澄ますことでヘアラインを均一に施せるようにするなど、表面処理の工程にはこれまで以上の繊細さが求められた。
さらに、ムーブメントは通常、外周パーツ(文字盤)に固定されている2本の足に差し込み、ムーブメント側の偏心ピンで固定しているが、本作ではビス留めの位置を変更。ムーブメント最外周の側止め板といった、機能に影響のない位置に外周パーツの固定部を設定する独自の設計を取り入れたことで、ムーブメントのデザインを目一杯見せる──すなわち、時空間の広がりをしっかりと表現することにつながった。

ポリッシュ仕上げによって判読性が高められたインデックスは、外周パーツにアプライドされている。ムーブメントと外周パーツとの固定方法を見直したことで、外周パーツが内周に入り込まず、ムーブメントの外観を損ねないレイアウトバランスを実現したのも特筆すべきクリエイションだ。
見せることを前提に設計された手巻きムーブメントCal.F9B82だが、パフォーマンスが向上している点も見逃せない。そもそもCal.F9B82は、F8系キャリバーの延長線上で設計されたムーブメント。シリコン製ガンギ車を搭載したF8系はトルクが安定しているため、精度を一定に保ちやすくなっているのだが、Cal.F9B82ではさらに、微細な精度調整を可能とした微調整緩急針を新規に設計することで、日差±10秒~4秒の高精度を実現した。
また、Cal.F9B82は大胆なスケルトンデザインを取り入れてはいるものの、テンプ受けを両持ち化したり、衝撃を低減させるために受けの裏側を削って軽量化したりすることで耐衝撃性をしっかりと確保するなど、実用性への配慮も抜かりない。

ケースバック側にもスケルトンデザインが徹底される。裏物押さえと同様、一番受けにはヘアラインが施されており、地板に施されたサテン仕上げとのコントラストによって立体感が生まれている。また、ケースバックには「75th ANNIVERSARY」の表記とシリアルナンバーが刻印され、特別な1本であることを実感させてくれる。
スケルトンムーブメントの存在感を際立たせるため、ケースはシンプルな造形に。しかし、仔細を確認していくと、表面はザラツ研磨によって歪みのないポリッシュ面に仕上げられており、エッジもシャープに仕上げることによって、モダナイズされたムーブメントとの調和が感じられる。
そしてストラップは、アニバーサリーピースにふさわしく、レギュラーモデルでは使われないゴート(山羊)レザー製のストラップが選ばれた。その特徴は、繊維が緻密なため、しなやかでありながら高い強度を持ち、しかも軽量であること。しかも本作に組み合わされるストラップは、タンニンで鞣した革を丁寧に手揉みし、質感豊かに仕上げられた特別仕様。表面の細かなシボがスケルトンデザインとのコントラストを生み、エレガンスを強調している。

ザラツ研磨によって、歪みのない鏡面に仕上げられたケース。中央に窪みを持たせたラグがアクセントになっており、スケルトンムーブメントとも調和したモダンデザインに仕上げられている。

組み合わせられるのは、タンニン鞣しの革を丁寧に手揉みした特別仕様のゴートレザーストラップ。独特のシボが高級感を生み出しているのみならず、柔らかくも十分な強度を備えているため、実用性も高い。
2026年はオリエントスター誕生75周年であると同時に、「モンビジュ」の発売──すなわち、オリエントのスケルトンウォッチ誕生から35年の節目にも重なった。その記念モデルとなるオリエントスタースケルトンは、ダブルアニバーサリーを顕彰するにふさわしい力強い作風で、「モンビジュ」以来培われてきた技術や思想を結集させた、スケルトンウォッチの集大成的モデルとなった。今後、本作のクリエイションが踏襲されたモデルが製作されるかは定かではないが、オリエントスターが手掛けるスケルトンウォッチの次のフェーズには、今から期待せずにはいられない。

Ref:RK-BR0001N
ケース径:40.0mm
ケース厚:9.5mm
ケース素材:ステンレススティール(SUS316L)
ストラップ:ゴート
防水性:日常生活用防水(3気圧)
ムーブメント:手巻き、Cal.F9B82、パワーリザーブ72時間以上
仕様:時・分・秒表示、パワーリザーブ表示、シースルーバック
限定:130本
価格:1,100,000円(税込)
取材・文:竹石 祐三 / Report & Text:Yuzo Takeishi
写真:江藤義典 / Photos:Yoshinori Eto
全国のオリエントスター正規販売店でオリエントスターフェアを開催いたします。
期間中に、2026年秋冬発売の新商品・Mコレクションズをご試着いただいたお客様に、オリエントスターオリジナルノベルティをプレゼントいたします。
フェア期間は2026年10月29日(木)~11月30日(月)となります。
この機会に是非、お近くのお店へ足をお運びください。
※フェア開催日程については店舗により異なる場合がありますので、詳細については各店舗にお問い合わせください。
オリエントスター(Orient Star) についてのお問い合わせは…
www.orient-watch.jp/contact/
>>>オリエントスター(Orient Star)取扱いGressive掲載店舗一覧
>>>オリエントスター(Orient Star)公式サイト
※価格は2026年10月23日現在のものです。
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