Orient Star(オリエントスター)
M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング

静謐な意匠で気品を漂わせる
手巻き式ムーンフェイズの快作

 2025年秋冬のコレクションで、オリエントスターはムーンフェイズにフォーカスを当てた新作を発表した。ムーンフェイズはダイアルに月の満ち欠けを表示する複雑機構だが、一方で、オリエントスターにおいてはスケルトンと並ぶ、ブランドを象徴するデザインエレメントでもある。しかもオリエントスターでは、2023年より星雲、星団、銀河のカタログであるメシエカタログに想を得て、3つのコレクションそれぞれをストーリー性のあるデザインでまとめた「Mコレクションズ」を展開しているが、ムーンフェイズはそのコンセプトとも実に相性がいい。


 この新作のハイライトとなるのが「M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング」だ。M45のコレクションナンバーが示す通り、本作は古の時代より人々に親しまれてきた、プレアデス星団(すばる)をインスピレーションソースとしたモデル。繊細なローマ数字のインデックスやリーフ形状の針、緩やかに伸びるラグといった、M45コレクションらしい普遍的デザインを踏襲しつつ、これまでのMコレクションズの中で、最もシンプルな表情に仕上げられている。


 本作が搭載するのは、新規に開発された手巻き式のムーンフェイズ機構搭載ムーブメント、Cal.F8A62。自社製のシリコン製ガンギ車によって約70時間のパワーリザーブを実現するのみならず、受けには星の軌跡を表現した幅の異なるストライプパターンを施すなど、美観にも注力している。そして、このムーブメントにおけるもうひとつの見どころが、ムーンフェイズディスクだ。


 一般的なムーンフェイズディスクは、月車に夜空と星を描き、月を表現した金属メッキのシールを貼り付ける仕様だった。しかしCal.F8A62では、月に見立てたマザーオブパールのパーツを月車に載せ、その上に夜空と星が描かれた金属板を重ね合わせる3層構造のムーンフェイズディスクを新規に開発。しかも、金属板の表面には光沢感のある滑らかな仕上げを施す徹底ぶりで、ムーンフェイズをよりドラマティックな表情に昇華させ、シンプルなダイアルとの優美な調和を生み出している。


新規に開発されたムーンフェイズディスクは、月に見立てたマザーオブパールのパーツを、月車と金属板で挟み込む3層構造。金属板には夜空と星を描くだけではなく、表面に滑らかな仕上げを施すことで豊かな表情になった。 新規に開発されたムーンフェイズディスクは、月に見立てたマザーオブパールのパーツを、月車と金属板で挟み込む3層構造。金属板には夜空と星を描くだけではなく、表面に滑らかな仕上げを施すことで豊かな表情になった。

新規に開発されたムーンフェイズディスクは、月に見立てたマザーオブパールのパーツを月車と金属板で挟み込む3層構造。金属板には夜空と星を描くだけではなく、表面に滑らかな仕上げを施すことで豊かな表情になった。

 オリエントスターの技術力とセンスを感じられるエレメントは、ムーンフェイズディスクのみならず、ダイアルの随所に確認できる。ダイアルは、きめの細かい放射筋目仕上げにラッピング塗装を重ねて奥行きを与えるとともに、鮮やかなブルーのリーフ針とローマンインデックスの上品なフォントを引き立てている。そしてこのローマンインデックスは、文字のデザインバランスを見直し、従来よりも繊細さが際立つものに。しかも、インデックスは複数回のタコ印刷によって印字されているため、肉盛り感も備えるなど、高級時計然としたダイアルに仕上げられている。


 ホワイトダイアルを備えた、このレギュラーモデルがデザインテーマに設定したのは、“夜の静寂に月がひとつ”浮かぶ情景。これを具現化するべく、ダイアルからは要素を極力削ぎ落とし、また各ディテールのデザインを再考することで、まさに静謐さを感じさせるデザインを完成させた。プレアデス星団に着想を得たM45コレクションにふさわしい、普遍的タイムピースの新たなる到達点と言えるだろう。


ローマンインデックスのみならず、レイルウェイミニッツトラックもタコ印刷を複数回行うことで立体的に仕上げている。また、見返しの高さは、従来のモデルよりも40%抑えた1.2mmとし、ケースの薄型化も実現させた。分針は高級時計らしく先端が曲げられ、判読性も高められている。

ローマンインデックスのみならず、レイルウェイミニッツトラックもタコ印刷を複数回行うことで立体的に仕上げている。また、見返しの高さは、従来のモデルよりも40%抑えた1.2mmとし、ケースの薄型化も実現させた。分針は高級時計らしく先端が曲げられ、判読性も高められている。

レギュラーモデルのダイアルにはきめの細かな放射筋目仕上げを施すとともに、透明で厚みのあるラッピング塗装を加えることにより、上品な表情と奥行きを与えている。質感が高められたムーンフェイズディスクとの調和も見事だ。

レギュラーモデルのダイアルにはきめの細かな放射筋目仕上げを施すとともに、透明で厚みのあるラッピング塗装を加えることにより、上品な表情と奥行きを与えている。質感が高められたムーンフェイズディスクとの調和も見事だ。

「掩蔽」の第2弾モデルが奏でる
暗闇と星明かりのハーモニー

 M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディングではもうひとつ、国内120本のみの限定モデルも用意された。こちらはレギュラーモデルとは異なり、ダイアルにグレーとブラックのみを用いてダークな雰囲気にまとめられたモデルだ。デザインのインスピレーションソースに選ばれたのは、異なる天体が重なり合う“掩蔽(えんぺい)”と呼ばれる現象。2024年に発売された「M45 F7 メカニカルムーンフェイズ」に続く、掩蔽をテーマとした作品の第2弾に当たり、本作でもM45コレクションのテーマに合わせ、月とプレアデス星団の重なりによって星明かりが夜空を照らす情景が見事に描かれている。


 掩蔽を表現するため、ダイアルには細かな模様を型打ちし、宇宙に浮かぶ無数の星を表現。この型打ち模様は光の当たる角度によって表情を変化させるのだが、さらにダイアルの表面には、透明で厚みのあるラッピング塗装を施しているため、深淵な宇宙空間のような奥行きを感じさせる表情を生み出している。もちろん本作も、マザーオブパールで月を表現した新構造のムーンフェイズディスクや、複数回のタコ印刷によって立体的に仕上げたローマンインデックスを採用するなど、高級時計にふさわしいクリエイションが随所に確認できる。


細かな型打ち模様が施された限定モデルのダイアル。これは宇宙に浮かぶ星々を表現した意匠で、光が入る角度によってダイアルの表情を変えるため、まるで掩蔽の夜空のような、幻想的な雰囲気が楽しめる。

細かな型打ち模様が施された限定モデルのダイアル。これは宇宙に浮かぶ星々を表現した意匠で、光が入る角度によってダイアルの表情を変えるため、まるで掩蔽の夜空のような、幻想的な雰囲気が楽しめる。

限定モデルでは、インデックスの上部に銀色のもみつけをレイアウト。これは広い夜空の中でひと際輝く星々を表現した意匠であるとともに、時刻の判読性を高めるための役割も。時分針は稜線を境にポリッシュとヘアラインで仕上げ分けされ、グレーとブラックを基調としたダイアルながらも視認性をしっかりと確保している。

限定モデルでは、インデックスの上部に銀色のもみつけをレイアウト。これは広い夜空の中でひと際輝く星々を表現した意匠であるとともに、時刻の判読性を高めるための役割も。時分針は稜線を境にポリッシュとヘアラインで仕上げ分けされ、グレーとブラックを基調としたダイアルながらも視認性をしっかりと確保している。

 M45コレクションらしい普遍的なデザインを見せるM45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング。レギュラーモデルと限定モデルはルックスこそ対照的ではあるものの、ダイアルには徹底したブラッシュアップが行われ、これまでのオリエントスターにはないエレガンスが実感できる。そのクリエイションを担うのが「信州 時の匠工房」の文字板工房。これまでも、革新的技術によって独創的な表現を生み出してきたが、本作によって、オリエントスターのダイアルはさらに次のフェーズに突入したと言えるだろう。


オリエントスター
M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング

M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング

Ref:RK-BW0001S
ケース径:39.5mm
ケース厚:11.9mm
ケース素材:ステンレススティール(SUS316L)
ストラップ:本ワニ皮革
防水性:3気圧
ムーブメント:手巻き、Cal.F8A62、パワーリザーブ70時間以上
仕様:時・分表示、パワーリザーブ表示、ムーンフェイズ表示、シースルーバック
価格:418,000円(税込)

>「RK-BW0001S」詳細はこちら
M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング

Ref:RK-BW0002N
ケース径:39.5mm
ケース厚:11.9mm
ケース素材:ステンレススティール(SUS316L)
ブレスレット:本ワニ皮革、交換用コードバンストラップ付属
防水性:3気圧
ムーブメント:手巻き、Cal.F8A62、パワーリザーブ70時間以上
仕様:時・分表示、パワーリザーブ表示、ムーンフェイズ表示、シースルーバック
限定:国内100本(プレステージショップ限定)
価格:473,000円(税込)

>「RK-BW0002N」詳細はこちら

取材・文:竹石 祐三 / Report & Text:Yuzo Takeishi
写真:江藤義典 / Photos:Yoshinori Eto



>「M45 F7 メカニカルムーンフェイズ」
初代モデルへのオマージュと進化を融合させた「メカニカルムーンフェイズ」の新たなる飛翔


※価格は2025年10月16日現在のものです。
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