イタリアのミラノで毎年開催される「Milano Design Week(ミラノデザインウィーク)」は、家具や照明のメーカーだけでなく、自動車やファッションなどのメーカーも参加し、デザインをキーワードにさまざまな展示を行う。グランドセイコーはここで、デザイナー/アーティストの吉岡徳仁を迎えて、「TOKUJIN YOSHIOKA - Frozen」という展覧会を行った。
ウォッチズ アンド ワンダーズ ジュネーブは、大好評の中、閉幕した。会期の後半にはチケットを購入した時計愛好家たちが来場し、最終的な入場者は約5万5千人を超えた。グランドセイコーのブースにも多くの愛好家が足を運び、入場規制をしなければならない程だったという。
しかし時計の思い出にばかり浸ってはいられない。次なる目的地はイタリア。ミラノにて世界最大のデザインの祭典「Milano Design Week」が開催されており、ここにもグランドセイコーが参加しているのだ。
ジュネーブからミラノまでの移動は、迷わず電車を選択。美しい湖とアルプスの山々を眺める風光明媚な鉄路の旅は、ドイツ語圏最大の都市チューリッヒを経由してミラノへと向かう。
ブレラ地区にはラグジュアリーメゾンやファッションブランドの展示が多く集まる。その中で、グランドセイコーも多くの来場者を集めていた。
一般的には、ミラノのデザインイベントは「ミラノ・サローネ」が有名だが、これはミラノ郊外の巨大な見本市会場で行われるイベントのことで、巨大なホールの中に家具や照明ブランドがブースを構えて新作を発表している。一方でグランドセイコーが参加しているのは、ミラノの町全体で行われるデザインの祭典「フォーリ・サローネ」。ここには家具だけでなく、自動車や家電、ファッションなど様々な分野の企業も参加している。そして「ミラノ・サローネ」と「フォーリ・サローネ」を総称して「Milano Design Week」と呼ばれ、その来場者は30万人以上といわれる。
グランドセイコーは高感度なショップが多く集まるブレラ地区にある歴史的建造物「パラッツォ・ランドリアーニ」を会場に選んだ。
この場所でグランドセイコーは、スプリングドライブムーブメントを搭載した時計を展示するとともに、ブランドフィロソフィーである「THE NATURE OF TIME」と呼応する展覧会「TOKUJIN YOSHIOKA - Frozen」を開催した。手掛けたのは世界で活躍するデザイナーでありアーティストの吉岡徳仁だ。
今回は、長年構想していた”水“を素材として、椅子を作った。水は生命の源であり、身近なものだけど、とても不思議な物質。そんな水で椅子を作るという発想は、今までなかったこと。そこに挑戦したかった」と吉岡徳仁は語る。
「自然素材は時間とともに変化していく。そういうものを見て、体験してもらうのが、このインスタレーションです。実際にガラスやクリスタルのように透明な氷を作る工程はかなり難しかった。普通に凍らせると、どうしても白くなってしまう。何度も失敗を重ね、製法を研究し、透明の氷をつくりました。イメージとしては“水を結晶化させる”ということ。この巨大な氷を組み合わせて、普遍的な椅子の形であるアームチェアをつくりました」
「Aqua Chair」と命名された椅子は、会場の中庭とピロティに七つ配置された。配置された位置によって、太陽光のあたり方も風の流れも異なる。それがどのような影響を与えるのだろうか?
ピロティに並べられた「Aqua Chair」。普遍的なデザインは、透明で形を持たない「水」を結晶化させた氷で作られている。
「天候や気温によって、氷の椅子は表情を変化させていく。それこそ偶然から生まれる表情が、美しいのか醜いのかは、今の時点ではわかりません。しかしその不確定性が面白い。スケッチでアイデアを練るだけでは、新しさは生まれてこない。しかし考えるプロセスや実験を重ねる中から発見したことをクリエーションに結びつけることで、新しいものが生まれるのです」
中庭空間にも椅子を配置。異なる環境下に置かれるため、椅子ごとに表情の違いが生じる。
取材は初日に行われたため、どの椅子も綺麗な状態を保ったまま、光を受けてプリズムのように輝き、不思議な景色を作っている。しかし今年のミラノはとても暖かく、日当たりの良い場所に置かれた椅子は、すでに溶け始めている。会期の後半に撮影された写真を見ると、クラックが入った椅子もあるし、溶けてやや小さくなった椅子もある。
展示して数日たった椅子。氷に入った無数のクラックが、太陽光を乱反射させ輝きを放つ。初日とは全く異なる表情を自然が生み出していた。
自然の中で時間を重ね、どう変化するのか。それも含めてアートなのだ。そしてそれは、自然の移ろいの中に存在する時の移ろいを表現するグランドセイコーと不思議な調和を見せていた。
グランドセイコーの時計たちは、「パラッツィオ・ランドリアーニ」の屋内空間に展示された。その空間構成も吉岡徳仁が監修した。歴史ある建物の内側に白い空間をつくり、その中にガラスとアクリルを使ってショーケースをつくった。配置された時計たちがそこに映り込み、重なり合う。まるで時計が浮かんでいるような透明感のある空間の中で、美しい時計たちが静かに時を刻んでいる。
歴史ある建物の中に壁をつくり、そこで時計を展示する。この透明感のある展示空間も吉岡徳仁が担当した。
時計ブランドの展示でありながら、技術を詳細に解説するボードは無く、その世界観や哲学を伝えるにとどめる。しかしグランドセイコーの哲学は十分に伝わるはずだ。なぜならここには、日本らしい時間の流れが表現されているからだ。
ウォッチズ アンド ワンダーズ ジュネーブで発表された最新作「Evolution 9 Collection Spring Drive U.F.A. Limited Edition SLGB001」も展示。
会期中に何度かお邪魔したが、いつも建物を取り囲むように来場者の長蛇の列ができていた。その様子を見るに「Milano Design Week」を訪れた世界中のインテリア・デザイン愛好家たちにもグランドセイコーの魅力を感じてもらえたに違いない。
想像した以上に、世界はグランドセイコーを深く理解している。ジュネーブとミラノを巡る旅で、さらにその考えが強くなった。
吉岡徳仁。デザイナー/アーティスト。1967年生まれ。倉俣史朗、三宅一生のもとでデザインを学び、2000年吉岡徳仁デザイン事務所を設立。デザイン、建築、現代美術の領域において活動し、その作品は世界の主要美術館に永久所蔵されている。代表作に、東京2020オリンピックの聖火リレートーチやガラスの茶室「光庵」などがある。
取材・文 / Report & text:篠田 哲生 / Tetsuo Shinoda
Evolution 9 Collection スプリングドライブ U.F.A. 限定モデル
Ref.SLGB001
ケース径:37.0mm(りゅうず含まず)
ケース厚:11.4mm
ケース素材:プラチナ950
ストラップ:クロコダイル、プラチナ950製中留(一部は18Kホワイトゴールド)
防水性:日常生活用強化防水(10気圧)
ムーブメント:スプリングドライブ、自動巻(手巻つき)、Cal.9RB2、年差±20秒(平均月差±3秒相当/気温5℃~35℃において腕に着けた場合)、約72時間パワーリザーブ、34石
仕様:時・分・秒・日付表示、製造地の樹氷から着想を得たダイヤル、パワーリザーブ表示機能
限定:世界限定80本(うち国内40本)、裏ぶたに「LIMITED EDITION」表記およびシリアルナンバー入り、グランドセイコーブティック専用モデル
価格:5,500,000円(税込)
発売予定:2025年6月6日(金)
Evolution 9 Collection スプリングドライブ U.F.A.
Ref.SLGB003
ケース径:37.0mm(りゅうず含まず)
ケース厚:11.4mm
ケース素材:ブライトチタン
ストラップ:ブライトチタン、微調整機構つき中留
防水性:日常生活用強化防水(10気圧)
ムーブメント:スプリングドライブ、自動巻(手巻つき)、Cal.9RB2、年差±20秒(平均月差±3秒相当/気温5℃~35℃において腕に着けた場合)、約72時間パワーリザーブ、34石
仕様:時・分・秒・日付表示、耐メタルアレルギー、パワーリザーブ表示機能
限定:グランドセイコーブティックおよびグランドセイコーサロン専用モデル
価格:1,518,000円(税込)
発売予定:2025年6月6日(金)
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セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー)
TEL: 0120-302-617(通話料無料)
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※価格は2025年5月16日現在のものです。
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