【世界から見たグランドセイコー Vol.1】
世界最大の時計の祭典
Watches and Wonders Genevaで感じた、
グランドセイコーの現在地

さるスイス時計ブランドのCEOが、“時計界のチャンピオンズリーグ”と称した「Watches and Wonders Geneva」。
ここに参加することは、時計ブランドにとっても大きな名誉なのだ。
この大舞台に非欧州ブランドとして唯一参加するグランドセイコーは、時計文化の中心地で確実に存在感を強めている。


Watches and Wonders Geneva 2025でのグランドセイコーのブース入口

Watches and Wonders Geneva 2025でのグランドセイコーのブース入口


世界を追いかけたグランドセイコー

 2017年に独立ブランドとなったグランドセイコー。ロゴデザインの変更やデザイン領域の拡大といったリブランディングを進めたのは、グランドセイコーを真のグローバルブランドへと押し上げる目的もあった。

 そもそもグランドセイコーは、翌年に迫った時計輸入の自由化に対抗すべく、スイス時計に匹敵する品質と精度、そしてデザインをもつ時計として1960年にデビューした。その当時から世界と戦うことを目標としており、スイスの天文台で行われる精度コンクールにも積極的に参加。その技術を用いた機械式腕時計部門として最高精度のV.F.A.モデルを発表するなど、先進性の高い時計たちは、スイス時計業界からも一目置かれていた。

 その後クオーツ革命によって機械式時計そのもののニーズが減少し、グランドセイコー自体も休眠状態になるが、1988年にまずはクオーツモデルとして復活。そして1998年には待望の機械式モデルがラインアップに加わった。さらに2004年には独自機構9Rスプリングドライブを搭載するモデルも追加され、業界的にも稀な3つの駆動方法をラインアップする高級時計ブランドとなった。


Watches and Wonders Geneva 2025でのグランドセイコーのブース

Watches and Wonders Geneva 2025でのグランドセイコーのブース


 世界の愛好家がグランドセイコーの魅力に気付いたのは、“雪白”と愛称で呼ばれるモデルがきっかけだ。硬く締まった雪面と風紋を表現したダイヤルデザインは、海外でも“スノーフレーク”の愛称で親しまれた。まずはその表現力で評価されたグランドセイコーだったが、「SBGA211」がスプリングドライブモデルであったことで、この独特なメカニズムに対する評価も急上昇。グランドセイコー=スプリングドライブというイメージが定着し、スイス時計にはない個性として評価されていく。

 そして2022年からは、世界最大の時計見本市「Watches and Wonders Geneva」に参加。かつて参加していた「バーゼルワールド」では、メインホールの1階はスイスブランドのみがブース出展を許され、海外組は2階に追いやられていたが、「Watches and Wonders Geneva」では、パテック フィリップやショパールと肩を並べてメインホールにブースを出展。ついに保守的なスイス時計業界さえも認める存在となったのだった。


Watches and Wonders Geneva 2025でのグランドセイコーのブース

Watches and Wonders Geneva 2025でのグランドセイコーのブース


 まずは美しいダイヤル表現によって、世界の時計愛好家から注目されたグランドセイコーにとって、「Watches and Wonders Geneva」は時計技術を発表する絶好の場所となる。2023年には待望の機械式クロノグラフ「テンタグラフ」がデビュー。さらにコンスタントフォース・トゥールビヨンの「Kodo」も注目された。2024年には10振動手巻きムーブメント「キャリバー9SA4」がデビュー。ハイレベルな時計技術でもスイス時計業界を騒がせる存在となった。

 もちろん今年も「Watches and Wonders Geneva」に参加。相変わらず非欧州ブランドとしては唯一の参加となるが、“お客さん”ではなく、“メインキャスト”の一角として存在感を示していた。招待客のみが入場できる会期前半は、取材と商談で多くの人々がブースを訪れ、会期後半の一般開放日には行列ができるほどの混雑だった。それくらいグランドセイコーの存在は、世界の時計業界の中で大きくなっている。


 そんな日本が誇るグランドセイコーだが、その新作はどうだったのだろうか? 


Watches and Wonders Geneva 2025でのグランドセイコーのブース

Watches and Wonders Geneva 2025でのグランドセイコーのブース


グランドセイコー2025年新作「SLGB001」詳細はこちら グランドセイコー2025年新作「SLGB003」詳細はこちら

性能、表現、トレンド感。すべてを満たす新作

 最大のトピックスは、かなりマニアックな時計技術を結集した超高精度ムーブメント「キャリバー9RB2」のデビューだ。スプリングドライブ式ムーブメントで、その精度はなんと年差±20秒。これはぜんまい駆動のムーブメントとしては空前絶後の高精度となる。この高精度の実現のために、まずは精度を司る水晶振動子に特別なカットを施し、さらに3か月間エイジングして水晶振動子を安定させてから使用する。さらにIC回路も新設計し、水晶振動子と共に真空パッケージして温度や湿度の影響を最小限に抑えている。もちろん機械部分もブラッシュアップし、効率的に輪列を回すために歯車から再設計している。そういった技術の積み重ねによって、年差±20秒に加えて、パワーリザーブも約72時間を確保。圧倒的な高性能ムーブメントとなった。その自信を示すように、ローターには「SPRING DRIVE ULTRA FINE ACCURACY」(※ACCURACY=正確)の文字が入っている。


超高精度ムーブメント「キャリバー9RB2」

超高精度ムーブメント「キャリバー9RB2」


 しかもこのムーブメントを搭載する時計も魅力的だ。プラチナケースの「SLGB001」とブライトチタンのケース&ブレスレットの「SLGB003」は、いずれもケース径が37mmという小径モデル。これは機械式やクオーツ式と同様に、スプリングドライブ式でも小径モデルが欲しいという声を反映したもの。今年の「Watches and Wonders Geneva」では、他ブランドでも小径モデルが増えていたが、グランドセイコーでもこういった世の中の流れを的確に読み解いている。それも頼もしい。

 もちろんグランドセイコーらしい表現であるダイヤルデザインも美しい。今回は澄み切った雪原に林立する樹氷の美しさをイメージしたデザインを取り入れた。ちなみにケース素材の色合いに合わせてブルーの発色を微妙に変えているのは、さりげないこだわりだ。


Watches and Wonders Geneva 2025で発表された新作、「キャリバー9RB2」を採用したプラチナケースの「SLGB001」 Watches and Wonders Geneva 2025で発表された新作、「キャリバー9RB2」を採用したプラチナケースの「SLGB001」

Watches and Wonders Geneva 2025で発表された新作、「キャリバー9RB2」を採用したプラチナケースの限定モデル「SLGB001」

グランドセイコー2025年新作「SLGB001」詳細はこちら
Watches and Wonders Geneva 2025で発表された新作、「キャリバー9RB2」を採用したブライトチタンのケース&ブレスレットの「SLGB003」 Watches and Wonders Geneva 2025で発表された新作、「キャリバー9RB2」を採用したブライトチタンのケース&ブレスレットの「SLGB003」

Watches and Wonders Geneva 2025で発表された新作、「キャリバー9RB2」を採用したブライトチタンのケース&ブレスレットの「SLGB003」


グランドセイコー2025年新作「SLGB003」詳細はこちら

 海外で自国のブランドが活躍している姿を見ると、安心するし誇らしくもある。家電や自動車、漫画キャラクターやゲームなど、多くのジャンルで日本発の世界ブランドが生まれているが、高級時計の世界で先陣を切るのは、間違いなくグランドセイコーだ。 「Watches and Wonders Geneva」における存在感や、発表された魅力的な時計たちを見れば、世界が惚れこむのは納得できる。我々が思っている以上に、グランドセイコーは世界から愛されているのだ。



取材・文 / Report & text:篠田 哲生 / Tetsuo Shinoda

Watches and Wonders Geneva 2025 新作紹介



グランドセイコー  2025年新作モデル&展示会情報

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セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー)
TEL: 0120-302-617(通話料無料)

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※価格は2025年5月1日現在のものです。
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