2012年末に経営面での大改革が行われたH.モーザー(H.Moser & Cie.)。新たなCEOに長年、高級時計作りに携わってきた名門一族に生まれたエドゥアルド・メイラン氏が就任し、モデル・ラインナップの改革や仕様の修正を皮切りに、今後の展開についても大きな見直しが断行された。
その結果、41モデルあったモデルの半数以上が生産終了となり、新たに11モデルを加え、合計28モデルのラインナップとなった。
また、H.モーザーが開発した自社製ひげゼンマイを採用した「ダブルヘアスプリング」は、最上級モデルだけに採用するなど、新しいモデル開発のルールが定められたのである。
とはいえ、新しい方向性やルールの下で、完全な新規のモデルを開発するには相応の時間が必要。そこで今回は既存モデルの名称変更や仕様変更が中心となったが、それらのリファインは、H.モーザーというブランドの価値を、よりいっそう高めるに違いない、実に理にかなったものだ。
たとえば、ベーシックモデル「マユ(MAYU)」にはこれまでアップライト(植字)とプリントによるバー・インデックスが、ひとつの文字盤に混在していたが、新作はすべてアップライトに変更。これにより立体感が増し、ラグジュアリー感が強まった。
さらにトップモデルの「パーペチュアル 1(PERPETUAL 1)」では、内部構造を見直して改良を実施。より信頼性を高めることに成功した。
経営体制の変化で従来の持ち味が損なわれるブランドも少なくないが、モーザーの場合、その心配は無用。時計愛好家は、彼らの今後の展開に、大いに期待していいはずだ。