2008年ごろから時計メーカーの多くが「コストパフォーマンス」を強く押し出してきたが、ただ単に価格がリーズナブルなだけでは意味が無い。その価格以上の品質がなければ、ユーザーは値ごろだと感じることは無いだろう。
しかしこの"品質"というのが曲者。時計は嗜好品でファッションアイテムでもあるため、評価軸が曖昧だ。精度の高さは品質の指標にはなるが、だからといって"高精度だから欲しい!"という人はほとんどいないのではないだろうか。デザインにいたっては、好きか嫌いかという個人的事情になってしまうので、評価軸にはできない。
しかしボールウォッチの場合は、数値化されたタフさがある。5000Gsの落下衝撃テストにクリアし、4800A/mの耐磁性能を備え、しかもモデルによってはマイナス40℃の超寒冷地でも使用できる。このような客観的データがあれば、ユーザーも高品質だと判断できるだろう。
ボールウォッチが様々なタフ性能を時計に加えるのは、どんな状況下でも時刻を正確に刻みたいという信念を持っているから。これは、同社のルーツが鉄道時計にあることと無縁ではない。
分単位のダイヤで運行を管理する鉄道会社にとって、使用する時計が低精度の場合、大事故を引き起こす恐れがある。ボールウォッチにとっては時計自体が高精度であるということだけでなく、精度を低下させる要因をすべからく排除することを重視しているのだ。この姿勢も品質を語る上では欠かせないし、コストパフォーマンスのよさを実感できる逸話だろう。
2011年のバーゼルワールドでは、そのタフ性能とコストパフォーマンスにいっそうの磨きがかかったように見える。ケースにはDLCという硬化皮膜処理を施し、ベゼルには耐傷性能の高いセラミックを採用。そして創業120周年記念モデルは金無垢ケースにもかかわらず50万円台に収めている。
これほど値ごろ感のある時計はなかなか見つからない。ボールウォッチが好調なのは、当然なのである。