昨今の時計業界ではコラボレーションが大人気だ。クルマメーカーとのコラボレーションが主流だが、結局は"イメージのみ"で終わってしまい、肝心な時計自体の魅力の向上には役立たないケースも多い。
一方、特殊時計工房とがっちりタッグを組むことで、時計自体の質の向上を目指す時計メーカーもいる。メーカー側は特別なコンセプトを提供し、特殊時計工房が超複雑機構を生産するという相互補完の関係を作ることで、価値の向上を目指すのだ。
ここに紹介するジャン・デュナン(JEAN DUNAND)は、そこからさらに一歩踏み出した時計メーカー。ピアジェ(Piaget)を経てボヴェの再興に寄与したティエリー・ウルヴェイ(Thierry Oulevay)と、最高峰の特殊時計工房「クリストフ・クラーレ(Christophe Claret)」が手を組んでおり、相互補充の関係がより緊密に出来ている。
最新作「シャバカ(SHABAKA)」は、ミニッツリピーター&永久カレンダーのコンプリケーション・モデル。しかもカレンダーを回転シリンダーで表示する特殊システムを採用している。
クリストフ・クラーレのような時計工房の場合、ある程度クライアントに意向に合わせてムーブメントを開発するのが仕事になってしまう。だからこそ自分たちの意見が通る自由な環境を作ることは、クリエイティビティを発揮する上で欠かせない。
そして突出した技術とクリエイティビティが時計に投影されているからこそ、ジャン・デュナンの時計には存在価値があるのだ。
取材・文:篠田哲生 Report&Text:Tetsuo Shinoda
写真:堀内僚太郎(Storm) Photos:Ryotaro Horiuchi(Storm)
※表記は2010年3月現在のものになります。