ジュネーブ市内にあるSIHH会場から、北進すること約6キロ。ジャントウという小さな町に本拠を構えるウォッチランドグループは、今や11ブランドを擁するまでに巨大化している。同グループを率いるフランク・ミュラーは95年のブランド創業以来、独自の機構を立て続けに発表して短期間で成功を納め、まさに"スイスドリーム"ともいうべき栄光を掴んで走り抜けてきたが、2009年は極めて実直にウォッチメイキングに取り組んだ、という印象が強い。まずは2005年に開発された、初の完全自社製クロノグラフムーブメントを搭載した「フリーダム」が、ついに本格的に始動したことが大きなトピックだろう。あらゆるブランドを傘下に入れることでパーツの内製率を高め、生産体制におけるパワーが強化されていることを如実にうかがわせる。また、フランク・ミュラーが一世を風靡するきっかけとなったトノウ(樽)型ケースのネクストステージとして、「インフィニティ」というニューラインが登場。毎年6月に発売される日本限定モデルとしては、昨年の「コンキスタドール・ジョーカー」に続き、「ヴェガス・ジョーカー」が用意された。
1月にジュネーブ市内にブティックをオープンし、日本でも3月に大阪にてブティック展開を控えるフランク・ミュラー。ブランドの価値を再編し、さらに深度を増していくような流れが、新作の顔ぶれから垣間見られた。