2009年のSIHH、バーゼルワールドは、昨年末から急激に冷え込んだ世界経済の影響で、堅実なウォッチメイキングに徹する動きが多くのブランドに見られた。しかし元来、生真面目なモノづくりを特色とするドイツ勢は、独特のアプローチによる飛躍を見せてくれた。その好例が、ドイツ・ザクセン地方の時計文化を継承するブランド、グラスヒュッテ・オリジナル(GLASHÜTTE ORIGINAL)の「セネタ・クロノメーター」だろう。
クロノメーターといっても、スイスの検査機関C.O.S.Cではなく、より厳格な規格を設けるドイツのクロノメーター検定協会から認定されたもの。精度の高さはお墨付きだが、さらに驚くべき精緻な特許機構に注目したい。時分調整時にリュウズを引くと、秒針がゼロリセットされると同時に、分針が連動。再びリュウズを戻したときには、分針がインデックスの真上からスタートするという、機械式時計特有の「遊び」を極限まで少なくした画期的なメカニズムが搭載されているのである。
こうした技術的なイノベーションもさることながら、同社はビジュアル面の追求にも手を抜かない。1960年代のオールドスタイルを踏襲する人気シリーズ「セネタ・シックスティーズ」には、さらにクラシカルな雰囲気のクッション型ケースがエントリー。マニュファクチュール入門モデルとして発表した「セネタ・ハンドデイト」も、新たなターゲットを開拓するシリーズとして期待がかかる。
コンセプトやプライスレンジはそれぞれ異なるが、いずれもグラスヒュッテ・オリジナルのデザインに通底する“ドイツ流”シンプリシティが堪能できる、真面目な新作であることに変わりはない。