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Watch Person Interview 2017 SIHH  A. ランゲ&ゾーネ 商品開発ディレクター アントニー・デ・ハス インタビュー

すべては人へと回帰する。

トゥールボグラフ・パーペチュアル “プール・ル・メリット”

展示される「トゥールボグラフ・パーペチュアル “プール・ル・メリット”」。その背景には、この時計に使用されるすべてのパーツを展示。636個のパーツで構成されるチェーンも含めると、その総数は1319個になる

「この時計には5つのコンプリケーションが搭載されています。他社なら“グランドコンプリケーション”と命名するでしょうが、私たちはそうしない。機能自体をモデル名称にすることは、密やかなこだわりなのです」


  と語るアントニー・デ・ハス氏。彼こそが、A. ランゲ&ゾーネの商品開発の責任者である。


  新作「トゥールボグラフ・パーペチュアル“プール・ル・メリット”」は、トゥールビヨン、クロノグラフ、スプリットセコンド、パーペチュアルカレンダー、チェーンフュジーを備えている。


「2005年に完成した『トゥールボグラフ“プール・ル・メリット”』では、既に4つの複雑機構を搭載していました。ですからここから進化させるのなら、パーペチュアルカレンダーを搭載するしかないだろうと考えていました。しかし、それは簡単なことではない。スプリットセコンド式クロノグラフもパーペチュアルカレンダーも大きなエネルギーを使用します。そのため万が一にもカレンダーが切り替わる瞬間にクロノグラフを作動していた場合、テンプの振り角が落ちて、精度が悪化する可能性があるのです」


  ではその解決方法は? そう水を向けてみると、一点して笑顔。


「それは秘密ですよ(笑)。しかし、特別なメカニズムを考案したわけではありません。設計を見直したこと。そして時計師の調整技術が大きいですね」 これは驚きだった。


  ここ数年の時計業界では、新素材や新構造を考案して時計を進化させるのがセオリーである。しかしランゲが最後に頼るのは、昔ながらに“職人の手業”であったのだ。


  続いては、もうひとつの目玉である「ツァイトヴェルク・デシマルストライク」について語っていただこう。


「私が小学生のころ、15分ごとにピッとアラームが鳴るカシオのデジタルウォッチを持っていました。新しい時計のコンセプトを考えている時に、この記憶が甦り、そして2012年に発表した『ツァイトヴェルク・ストライキングタイム』へと結びつきました。このモデルは、最終的にプラチナ、ホワイトゴールド、ピンクゴールドでケースを作ったのですが、それぞれに音が違う。それが面白かったですね」


  その経験が新作に結び付いた。


「我が社にはハニーゴールドという独自素材があります。この素材でも鳴り物モデルを作ることになったのですが、そのままやっても面白くない。そこで2015年に完成させた『ツァイトヴェルク・ミニッツリピーター』で実現させた、デシマル(10進法)を使ってみようと考えたのです」


  10進法の鳴り物とは、時刻を10分間隔で知らせる方法。“新素材×10進法”という挑戦はかなりニッチではあるが、このこだわりがランゲ流だ。


「プラチナは繊細でクリアな音が鳴りますが、素材が硬いせいか、ちょっと冷たい印象。ホワイトゴールドはプラチナよりも柔らかい分、音が大きく響く。ピンクゴールドも同様ですが、割り金に銅を使うからなのか、少し温かみがある。そしてハニーゴールドは、通常のゴールドよりも硬いため、プラチナとピンクゴールドの中間の音が鳴りましたね」


  ここ数年、“うちの時計は音がいい”というブランドが増えている。しかしランゲの場合はあくまでも素材による音の違いを楽しむことに終始している。


「我々が重視するのは、音の余韻。それを耳と手というアナログな手法で作り上げたいのです」


  スイスブランドとは異なる視点を理解するほど、このブランドが好きになる。

取材・文:篠田哲夫 / Report&Text:Tetsuo Shinoda
写真:江藤義典 / Photos:Yoshinori Eto


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