HAMILTON米建国250周年記念特別モデル「カーキ フィールド メカ 36mm ジャパン エディション」 01
建国後、国の発展に貢献した
ハミルトン物語
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今回発表された新作の「カーキ フィールド メカ 36mm ジャパン エディション」。オリジナルの米軍制式採用モデルは、軍用品ゆえに時計会社名は無銘。しかし、新作では1970年代に使用されたハミルトンのロゴを採用する。時分秒針、12時・24時のダブルトラック・インデックス、5分置きのマーカー等、可能な限りオリジナルの再現を追求したコレクターズ・アイテム。米建国250周年記念として2026年のみの限定販売。なお、1000個限定で、当時の弾薬等を格納する軍用BOXを模した特製ケースが付属する。これも愛好家魂をくすぐるサービスである。
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今回の新作の原典となった、1970年9月のみに発行されたミルスペック「FAPD-5101」、通称「タイプ1 ナビゲーター」のオリジナルモデル。新作と比較すれば、そのマニアックな再現度が確認できる。オリジナルでは、ETA社のCal.2391を自社改良した手巻き式ムーブメントのCal.684搭載。17石、ハック機能付き。航空戦が重要な戦術策となった第二次世界大戦時では、ハック機能は必須のスペックとして軍の規格に加えられた。
1775年4月19日から1783年9月3日まで、足掛け9年間にも及んだ対英独立戦争。その開戦から1年3カ月が過ぎた1776年7月4日のこと。英国の統治下にあった北米東部沿岸の英国領13の植民地は、フィラデルフィアの大陸会議においてトーマス・ジェファーソン等により起草された独立宣言を採択、ここにアメリカ合衆国は誕生した。戦後、米国は具体的な建国作業に入るが、その重要な基本インフラのひとつが鉄道であった。同国では1830年頃より鉄道敷設が進み、1848年に始まるカルフォルニア・ゴールドラッシュは東部・西部の鉄道建設を加速させた。さらに1861年から1865年にかけての南北戦争では、軍事輸送面においても鉄道の貢献度は大きなものとなった。
1880年代以降、大陸縦横断鉄道網はさらに拡張されるが、複数の鉄道会社の群雄割拠や規格の不統一、運行連絡の不備など問題は山積し、列車事故が社会不安の大きな要因となった。そこで安全確実な列車運行のためには、駅員や運転手、信号手が持つべき精確な計時機能を有する時計(当時は懐中時計)が必要とされた。その契機とも言えるのが、1891年にオハイオ州キプトンで発生した列車同士による正面衝突事故だ(後に「キプトンの悲劇」と呼ばれる)。一方の列車機関士が持つ時計に4分の誤差があったことで生じた、米鉄道史に残る悲惨な大事故である。事態を重要視した当局は、地元の標準時を管理していた時計宝石商ウェブ・クレイ・ボール(後のボール ウォッチ創業者)を鉄道監督監査官に任命する。彼が1893年に策定した鉄道時計の認定基準「レイルロード・アプルーブド」は、鉄道懐中時計(通称「レイルロード・ウォッチ」)の基準となり、ウォルサム、エルジン、ボール ウォッチと共に鉄道時計四大会社に数えられたのが、1892年にペンシルバニア州ランカスターにて創業したハミルトンである。まさに米国の時計精度の基礎は、ハミルトン等鉄道時計に始まったと言える。
ふたつの大戦、ベトナム戦争
苦難な時代を支えたハミルトンの腕時計
ハミルトンが米軍の正式納品業者に指定されたのは1914年、まさに第一次世界大戦勃発の年であった。その後、当社は第二次世界大戦時の1942年から1945年にかけて100万個以上の時計と、1万個以上の海兵用クロノメーターを米軍へ供給する(大戦中ハミルトンは、米海軍の航法ニーズに合わせた精密な海洋クロノメーターを大量生産できる唯一の企業だった)。戦時下の1942年には軍への時計供給任務に専念するため、一般消費者用の生産を中止したほどハミルトンへの発注は多く、その信頼性は陸海軍E賞を受賞したことからも明らかである。
創業の1892年からわずか22年で米軍の正式納品業者となった理由のひとつに、19世紀から続く米国産業界に共通する強みがあったと思われる。厳格な徒弟制度(ギルド)を持つヨーロッパでは、技術の継承と広がりは限られていた。一方、この慣習を持たない米国では、高い技術力と生産力を広く敷衍させる土壌があった。時計史における1876年の“フィラデルフィア・ショック”が良い例である。同年同地で開催された万国博覧会で示された、米国の高い時計製造技術に圧倒されたスイス時計産業界が、自国の産業構造を一変させたほどの大事件である。産業構造においても米国は民主主義だった。
さて、ここでハミルトンも製造を担った米軍用時計に目を向けると、1940年に陸軍はミルスペック「55-1B」、通称「B-1」を発表する。その内容はステンレススティールケース、手巻きムーブメント、最低7石の石数、夜光針と夜光マーカーのダイアル等であり、ブローバやウォルサムと共にハミルトンも生産を担当する。次に第二次世界大戦中の1943年、軍事作戦の精密性を実現するため、より高い完成度を求めハック機能を装備したミルスペック「MIL-W-3818A」、通称「Type A-11」が発表される。一方でこの年、翌年のノルマンディ上陸作戦時の機雷除去を目的とした、海軍戦闘破壊部隊(NCDU=Navy Combat Destruction Unit)用のクラウンキャップ付きダイバーズウォッチ(通称「キャンティーン・ダイバーズウォッチ」)を、エルジンと共に生産したのもハミルトンだ。
1945年の第二次世界大戦終結後、時を置かずして米国は朝鮮戦争(1950年~1953年)へ参戦する。当戦争ではジェット戦闘機やヘリコプター等、空における軍事作戦も新時代に入り、より精密な軍事行動のため新規格「MIL-W-6433」(通称「Type A-17」)が発表。主にパイロット用ナビゲーションウォッチとして、ラジウム塗料付きアラビア数字インデックスと時分針、24時間トラックが設定されるが、さらに当スペックは「MIL-W-6433A」(通称「Type A-17A」)へと発展した。
次に米国は1964年8月のトンキン湾事件を契機に、ベトナムへ全面的な軍事介入を行う。1975年まで続くベトナム戦争では、戦時下の1967年、主にパイロット向けの新たなミルスペック「GG-W-113」が発表される。「±30秒/日の機械式ムーブメント、17石、ハック機能付き、耐磁性、最低36時間のパワーリザーブ、防水性、トリチウム使用の蓄光針」という仕様の「GG-W-113」は、1980年代後半にかけてベンラス等と共にハミルトンが製造し、現代に続くミリタリーウォッチの基準を形成する。
1970年登場の傑作パイロット用時計「FAPD-5101」
米建国250周年記念モデルとしてハミルトンが復刻
前述した数々の代表的なミリタリーウォッチを製造したハミルトンの歴史の中でも、特に愛好家が認めるモデルが、1970年に発表した米空軍パイロット用ナビゲーターウォッチ「FAPD-5101」である(通称「タイプ1 ナビゲーター」。なお“FAPD”とは“Federal Aviation Procurement Division”=“連邦航空調達部門”の略)。特徴的なスペックは「ETA社のCal.2391を自社改良した手巻き式ムーブメントのCal.684搭載。17石、ハック機能付き、耐磁シールドを施した耐蝕性仕上げのステンレススティール製ケース、ケース径36mm、12時間と24時間のダブルトラック・インデックス表示、ブラックダイアル、5分毎に設定される三角形のポインター」である。この「タイプ1 ナビゲーター」は、1970年9月のわずか1カ月に生産された時計のみに発行されたスペックで、ミリタリーウォッチ愛好家が認める入手が極めて困難なレアモデルとなっている。
今回ハミルトンが発表した「カーキ フィールド メカ 36mm ジャパン エディション」は、まさにこの1970年9月のみに発行されたミルスペック「ハミルトン FAPD 5101」の忠実な復刻モデルだ。先端の尖ったペンシル型時分針や矢尻型の秒針、アクリル製ボックス型風防、さらに戦闘中のストラップの破損を防ぐ固定式バーまでも再現している。外見上の唯一の違いと言えば、1970年代に使用された斜体のかかった「HAMILTON」ロゴの追加だ(しかし、軍用時計では製造時計会社名は無記載が基本だから、これは当然の判断)。ちなみにハミルトン史において「カーキ」が登場するのは1980年代である。
方や、素材等のスペックは現代にアップデートされ、アクリル製ボックス型風防には耐傷性を高めるハードコーティングと、視認性向上の指紋防止処理が施されている。また、ハミルトンとしては初めて、時分秒針とダイアルの三角マーカーに、スーパールミノバ®︎のオールドラジウムカラーでは最高性能グレードの、“Grade X2”を採用。このほか10気圧(100m)の防水性能と、標準パワーリザーブ80時間を有する手巻き式ムーブメント、Cal.H-50等も用意されている。このような歴史の徹底検証とアップデートで米建国250周年を祝う「カーキ フィールド メカ 36mm ジャパン エディション」は、2026年のみの限定生産。時計愛好家の勘所を押さえた設計ながら、最後に驚くべきは価格だ。時計価格の高騰が普通の状態となった上に円安が拍車を掛ける昨今、これは価格までも含めてすべてが、“逸品”と言って過言ではない。(参考メディア:『Chronopedia』)
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カーキ フィールド メカ 36mm ジャパン エディション
Khaki Field Meca 36mm Japan Edition
Ref:H69399932
ケース径:36.00mm
ケース厚:10.20mm
ケース素材:ステンレススティール
防水性:10気圧(100m)、日常生活防水
ストラップ:ラグ幅=18.00mm
ムーブメント:手巻き、Cal.H-50、17石、約80時間パワーリザーブ、毎時21,600振動(3Hz)、Nivachron™製ヒゲゼンマイ
仕様:時・分・秒表示
価格:114,400円(税込)
限定:2026年のみの限定販売、1000個限定の特製BOX付き
発売予定:2026年5月20日