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ウォッチズ&ワンダーズが独自財団「WWGF」創設!W&WGF創設に伴い2023年はラスト2日間を一般開放! 01

リアル展示会の重要性を再認識したWWGFの結論

毎年ジュネーブで開催されていたSIHH(Salon International de la Haute Horlogerie)、通称“ジュネーブ・サロン”は2020年に「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ」(Watches and Wonders Genava)へと名称変更。

毎年ジュネーブで開催されていたSIHH(Salon International de la Haute Horlogerie)、通称“ジュネーブ・サロン”は2020年に「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ」(Watches and Wonders Genava)へと名称変更。当年と翌2021年はデジタル(オンライン)のみでの開催だったが、本年(2022年)のリアル展示会の成功を受け、2022年を第1回ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブと規定。前2回は準備段階という位置付けだ。この決定を下したのは10月に創設された新・運営組織=WWGF「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ財団」(Watches and Wonders Genava Foundation)である。


 思えばこの3年間、2020年から2022年までのスイス時計展示会は変革期・大混乱の時期であった(この原稿を書いている本年=2022年11月9日現在でも決して解決した訳ではないが)。スウォッチ グループやロレックス、チューダー、ブライトリング、パテック フィリップといったバーゼルワールドのメイン会場であるホール1.0を占める主要ブランドがバーゼルからの離脱を表明。またジュネーブのSIHHもオーデマ ピゲやリシャール・ミルが参加取りやめを決定した。この間、私(グレッシブ編集顧問・田中克幸)はスイス時計協会FHや時計関係者、スイスやフランスの知人に折を見て今後の展望を尋ねてみたが皆一様に「分からない」とのこと。

 一体どうなるのだろうと思っていた本年10月27日、スイス・ジュネーブより「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ」(以下、W&WGとも表記)の新体制発表のプレスリリースが届いた。前ページの文章と重複するが、その内容はロレックス、リシュモン グループ、パテック フィリップの3社が「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ財団」(WWGF =Watches and Wonders Genava Foundation)の創設を決定したというもの。リリースには「『ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2022』の第1回目のリアルショーの成功を受け」とある。なぜ“第1回目”なのか? 2020年と2021年の展示会はどういう位置付けなのか? という疑問をWWGFのジャパン・プレス窓口に質問したところ、「2020年と2021年は完全デジタル(オンライン)発表会という形式だったため、リアルな展示会を開催した2022年を第1回目と捉えています」とのこと。もちろん今回の2022年もデジタル発表会との併用であった。

 という訳で「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ」の正式な第1回目の開催年は2022年、そして第2回目となる2023年は3月27日(月)~4月2日(日)の7日間の開催となる(くどいようで申し訳ありませんが、この手の情報は後年に必ず混乱するのが常なので改めて書きました)。2020年と2021年はそのための助走・準備期間という捉え方が妥当であろう。

 第1回目のリアルショーの成功を受け、この9月に創設された「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ財団」。彼らの使命は優れた時計製造技術の世界への普及、そのためにジュネーブ及び海外で時計とジュエリーの見本市をリアルとデジタルの両バージョンで開催することを目的とする。

 運営を担う財団理事会の会長を務めるのは、かつてゼニスのCEOであり現ロレックスCEOのジャン・フレデリック・デュフール(Jean-Frédéric Dufour)氏、副会長はエマニュエル・ペラン(Emmanuel Perrin)氏だ。また、ウォッチズ&ワンダーズのCEOはFHH「Foundation de la Haute Horlogerie」(高級時計財団)のCEOであるマチュー・ユメール(Matthieu Humair)氏が務めることとなった。本部はスイス・ジュネーブである。

2023年の第2回W&WGでは初の一般開放日も設置

不運にも新型コロナウイルス禍により、2020年と2021年はデジタルによるオンライン展示会となったW&WG。

不運にも新型コロナウイルス禍により、2020年と2021年はデジタルによるオンライン展示会となったW&WG。これがまた不運にも以前より燻っていたスイス時計展示会の再編成期と重なり、日本のメディアならびに時計関係者、愛好家、コレクターは状況が分からず大混乱であった。


 さて2023年の第2回「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ」の開催日程は、前述のとおり2023年3月27日(月)~4月2日(日)の7日間。さらに今回のトピックは最後の2日間(4月1日と2日)を初めて一般に開放されることだ。入場券は2023年2月上旬よりウォッチズ&ワンダーズ公式サイト(http://watchesandwonders.com)よりオンライン限定で販売開始、その価格は70スイスフラン(2022年11月10日現在では約1万300円)である。初日から5日間はメディア、時計販売等の関係者、出展企業49社の招待客のみの限定入場となる。これは以前のSIHHと変わらないが、SIHHでも土曜日を時計会社やサプライヤーの従業員及びその家族等に向けた開放日としていた。しかし一般向けの有料開放日の設定は初めてのことだ。

 今回の発表があったのは2022年10月27日。これより16日前の同月11日に、日本国政府はこれまでの入国者数の上限を撤廃し個人の外国人旅行客の入国も解禁した。以降、東京では銀座、青山、渋谷、浅草等での海外からの旅行者が一気に増加。時計界も同様でスイス、フランス、ドイツ等からCEO、マーケティング・ディレクター、時計師といった面々が、新型コロナ禍による“失われた2年と9カ月”の空白を埋めるように毎週のように来日し、各所で記者会見や発表会、時計店に向けたセミナーが盛んに開かれている。あらためて感じたのは、実際に面と向かって話し合うことの大切さだ。確かにリモートによるオンライン発表会で内容は把握できるし、実機もスイスでの展示会からあまり日を置かずして触ることができる。しかし、リアルに向き合わなければ通じないニュアンスがある。これはリモートでは掴めない。

 日本にとっては寝耳に水、といった印象の今回の新体制。しかしスイス時計展示会のひとつの主軸が定まったことは、スイスや世界の時計関係者、愛好家、コレクターにとって喜ばしい展開である。おそらくジュネーブの軸が定まったことで、これまでSIHHの同時期に様々な展示会が開催されたと同じ状況に落ち着くのではないか。まだ不安の種はバーゼルに残っているが、少しでも未来の展望が見えたことは喜ばしい。

 2022年11月現在、世界の状況は特に日本経済にとってかなり厳しい状況にあるので、気楽に現地への訪問はお勧めできない。それでもご興味のある日本の時計愛好家、コレクターの方はご一考されてはいかがだろうか。また興味はあるもののジュネーブへの道のりは遠いとお考えの方は、2023年のメディア速報をお待ちください。さらに速いだけで内容はプレスリリースのほぼ引き写しという、横並びの速報記事に飽きた方はぜひ時計専門メディアの精度の高い分析記事をご参考に。



2020年から2022年まで3年間のオンライン取材の経験から感じたことは、現地でのリアル体験の重要性。

2020年から2022年まで3年間のオンライン取材の経験から感じたことは、現地でのリアル体験の重要性。PR担当部署から提供された広報資料と写真だけでは不十分、実際に現地での雰囲気や人々の熱気、また旧知の時計関係者からの雑談からでも広報資料には無い情報を入手することがある。新作時計の資料と写真だけで十分と考えるメディアは、5年後には答えが出るであろう。


 なお、最後に2023年の出展全49ブランド名を以下に記す(アルファベット順)。
A.ランゲ&ゾーネ(A. LANGE & SÖHNE)、アルピナ(ALPINA)、アンジェラス(ANGELUS)、アーノルド&サン(ARNOLD & SON)、ボーム&メルシエ(BAUME & MERCIER)、ボールガール(BEAUREGARD)、ベル&ロス(BELL & ROSS)、カルティエ(CARTIER)、シャネル(CHANEL)、シャルル・ズベル(CHARLES ZUBER)、シャリオール(CHARRIOL)、ショパール(CHOPARD)、クロノスイス(CHRONOSWISS)、サイラス(CYRUS GENÈVE)、チャペック(CZAPEK & CIE)、フェルディナント・ベルトゥー (FERDINAND BERTHOUD)、フレデリック・コンスタント(FREDERIQUE CONSTANT)、グランドセイコー(GRAND SEIKO)、グローネフェルト(GRÖNEFELD)、オートランス (HAUTLENCE)、エルメス(HERMÈS)、ウブロ(HUBLOT)、ハイゼック(HYSEK)、IWCシャフハウゼン(IWC SCHAFFHAUSEN)、ジャガー・ルクルト(JAEGER-LECOULTRE)、ケルベダンズ(KERBEDANZ)、ローラン・フェリエ(LAURENT FERRIER)、ルイ・モネ (LOUIS MOINET)、モンブラン(MONTBLANC)、オリス(ORIS)、パネライ(PANERAI)、パルミジャーニ・フルリエ(PARMIGIANI FLEURIER)、パテック フィリップ (PATEK PHILIPPE)、ペキニエ(PEQUIGNET)、ピアジェ(PIAGET)、レベリオン タイムピース(REBELLION TIMEPIECES)、レッセンス(RESSENCE)、ロジェ・デュブイ(ROGER DUBUIS)、ロレックス(ROLEX)、ルディ・シルヴァ(RUDIS SYLVA)、スピーク・マリン(SPEAKE-MARIN)、タグ・ホイヤー(TAG HEUER)、トリローブ(TRILOBE)、チューダー(TUDOR)、ユーボート(U-BOAT)、ユリス・ナルダン(ULYSSE NARDIN)、ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)、ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)、ゼニス(ZENITH)。


文:田中克幸 / Text:Katsuyuki Tanaka


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