2023年秋にそれまでのコレクション体系を見直し、新しく「Mコレクションズ」をスタートさせたオリエントスター。このMコレクションズは、フランスの天文学者シャルル・メシエが作成した星雲・星団・銀河のカタログを参考に、いくつかのカタログナンバーをそれぞれの時計に付与したもので、デザインの方向性や性能、機能を分かりやすく系統立てている。メシエカタログは現在までにトータル110の天体が記載されているが、その中で“M34”のナンバーを与えられているのが、ペルセウス座にある散開星団。2024年3月に発売された「M34 F8 デイト」の限定バージョンは、この星団をデザインテーマとするM34コレクションにラインナップされたモデルだ。
星座の由来となったギリシア神話の英雄ペルセウスをイメージした意匠を取り入れるだけでなく、文字盤には三大流星群のひとつとして知られるペルセウス座流星群に想を得たパターンを採用。M34のナンバーを冠するにふさわしい、実にコンセプチュアルなタイムピースに仕上げている。そして、先行発売された限定モデルでは文字盤をホワイトに染め上げ、夜明け直前の空に流星群が降り注ぐ静謐な情景を表現していたが、6月にリリースされるレギュラーモデルでは一転、深みと奥行きのあるブルーの文字盤を採用。真夜中の空をペルセウス座流星群が駆け抜けるかのような、ロマンティックな光景を描いた。そんな幻想的なブルーの表現を可能にしたのが、オリエントスターを展開するエプソンが持つ、光学多層膜技術である。
人間が色を感じるうえで必要なのが、錐体と呼ばれる視細胞だ。錐体にはブルーの感度が高いS錐体、グリーンの感度が高いM錐体、レッドの感度が高いL錐体という3種類があり、目が光を捉えると3つの錐体がそれぞれの波長に応じた信号を脳に伝達。その信号の強さの比率から脳が色を認識するようになっている。つまり光学多層膜とは、この色覚メカニズムを利用した技術。これまで、腕時計の文字盤のようなスペースの小さい面では、繊細な模様に暗い色や濃い色を組み合わせると模様が分かりにくくなってしまうデメリットがあったが、光学多層膜技術は一般的な塗装とは違い、文字盤に薄い膜を施すため、繊細な模様と色の両方を表現できるようになったのだ。
つまりが、ほぼ無色透明な、厚さの異なる膜を何層にも重ねることでブルーの波長だけを反射させ、その色を脳に認識させるという手法なのだが、「透明の水でも海では青く、火山湖ではエメラルドに見えるようなイメージ」というエプソンの開発チームによる解説を聞けば、そのメカニズムにピンとくるのではないだろうか。
この新表現を取り入れた文字盤の製作を担っているのが、「信州 時の匠工房」にある文字板工房だ。職人の手によって繊細な模様が施された金型に真鍮の板材をプレスして、ベースとなる文字盤の原料を作成。ここに下地となる湿式めっきを施し、その上にナノレベルの光学多層膜を何層にも重ねることで鮮やかなブルーを表現するわけだが、本作のテーマである「夜空に降り注ぐペルセウス座流星群」にふさわしい色調を実現させるためには、数年もの開発期間を要したという。
流星群が空を駆ける時間軸を変えたことで文字盤の表情は一変したものの、それ以外のエレメントについては限定モデルと共通のデザインを採用。ペルセウス座をモチーフとするタイムピースふさわしい、力強くも神秘的な雰囲気を宿している。ダイアルの12時側にはパワーリザーブ表示がレイアウトされているが、これはメインダイアルとは別の文字盤を用いて2枚構成としたもの。また、12時を除くバーインデックスは天面に挽き目、斜面にはポリッシュ仕上げを施してシャープな造形を作り上げているが、これは夜空に星が煌めく様子を表現したデザインであり、時計にモダンな雰囲気を与えることにも寄与している。
もちろん、ケースにも本作のデザインコンセプトは反映されている。ヘアラインとポリッシュによる仕上げ分けが施されたソリッドな表情のケースは、英雄ペルセウスが持つ力強さをイメージしてデザインされたもの。ケースにも丁寧なクリエイションを盛り込むことで、独創的なデザインの文字盤と組み合わせても存在感のある造形を作り上げている。もちろん、実用性にも配慮は行き届いており、直径40mmのケースは手首に収まりやすいだけではなく、オリエントスターではお馴染みとなったピッチの短いH駒をブレスレットに採用することで、快適な着用感も実現している。
搭載されるムーブメントは、自社製のキャリバーF8N64。オリエントスターの技術力を象徴するシリコン製のがんぎ車を備え、日差+15秒から-5秒の高精度や60時間以上のパワーリザーブを実現し、実用性は十分。しかも、これまでのムーブメントのさまざまな改良により長い針を回せるようになったことは、より均整の取れたデザインを生み出すことにもつながった。本作のシースルーバックからはそんなムーブメントの姿が眺められるようになっており、波目模様と丁寧な面取り加工が施された回転錐を堪能することができる。
光学多層膜技術によって繊細な模様と奥行きのあるブルーを両立させ、さらに英雄ペルセウスをイメージしたケースを組み合わせることによって、“M34”のコンセプトを見事に表現したM34 F8 デイト。そして、この新しい文字盤表現は、今後のオリエントスターのラインナップを、夜空に浮かぶ“輝ける星”のように、色鮮やかで魅力的なタイムピースで埋め尽くしていくことだろう。
取材・文:竹石祐三 / Report & Text:Yuzo Takeishi
写真:江藤義典 / Photos:Yoshinori Eto
全国のオリエントスター正規販売店でオリエントスターフェアを開催いたします。
「Mコレクションズ」をご購入いただいたお客様に、オリエントスターオリジナルノベルティをプレゼントいたします。
フェア期間は2024年6月10日(月)~2024年7月16日(火)となります。この機会に是非、お近くのお店へ足をお運びください
※フェア開催日程については店舗により異なる場合がありますので、詳細については各店舗にお問い合わせください。
オリエントスター(Orient Star) についてのお問い合わせは…
www.orient-watch.jp/contact/
>>>オリエントスター(Orient Star)取扱いGressive掲載店舗一覧
>>>オリエントスター(Orient Star)公式サイト
※価格は2024年6月7日現在のものです。
※掲載されている情報及び価格は、各ページが公開された時点のものとなり、変更されている可能性がございます。ご了承ください。